2008年 09月 19日
ふう・・・久々の舞城節、約1000ページ、疲れちまったぜぇ。特に後半、話が飛躍してついていけなかったぜぇ。しかし、大爆笑カレーやら、九十九十九やら、懐かしい面々の登場に加え、主人公ディスコを中心にした軽妙な会話や展開に、舞城節を堪能できたぜぇ。 さて、口調(文体)は変わるが、本書『ディスコ探偵水曜日』という長い長い物語を読みながら思い出したのが、『二重螺旋の悪魔』梅原克彦と、漫画『ドラゴンボール』鳥山明。 前者は、四部構成の長大なSF物だが、元々は第一章にあたる第一部が一つの作品。まあ、よくありそうなエイリアン的SFなのだが、第二部、三部、四部と進むにつれ、作者の頭からどんどんと物語が紡ぎだされ、終盤にはこんなにも壮大な物語だったのか!と結果論ながらタメ息をついてしまうような梅原ワールドなのである。要するに、第一部だけからすると、終盤には考えられないほど物語がデッカクなってしまうのである。 後者『ドラゴンボール』は、多くの読者がご存知の通り。山の中で育った悟空が天下一武道会に出て、マジュニア(ピッコロ)と出会い、その対決を持って終了する構想が、作者が最初から抱いていた物語である。収まりのある、楽しくもハラハラする物語だったのである。ところが、ドラゴンボール自体が一つの大きな市場となってしまい、連載終了となれば、発行元の集英社だけの問題に留まらず、バンダイ、フジテレビ他、多くの企業の株価にまで影響を与えかねない話となるため、その後、作家の鳥山明は、サイヤ人、フリーザとの対決、未来からきた少年トランクス、セル、孫悟飯の活躍、最終的には宇宙の存亡をかけた魔人ブウとの戦いまで、話を紡ぎださざるを得なくなるのである。要するに、山の中で育った孫悟空の話が、終ってみれば、宇宙の存亡をかけた物語へと昇華してしまったわけである。でも、結果的に、そこに鳥山ワールドが生まれたわけである。 本書『ディスコ探偵水曜日』も、その長大さの中に、上記のような一面をはらんでいるわけで、前半は子供探し専門の探偵ディスコと、そのディスコが預かる幼い少女梢を中心に物語が展開していくのだが、中盤には名探偵の推理合戦の様相を呈し、下巻に入るとSFタイムスリップ物、パラドックス物になっていき、ディスコという主人公自体が世界を変えてしまう存在になってしまうのである。まあ、途中で評者は、話についていけなくなったけどさ(笑)。 元々の連載は、上巻の600ページ。それに書き下ろしで下巻の400ページを追加したら、調布を舞台にしたお話が、全世界、全時空、ついでに数次元までの壮大なお話になっちまったって感じかな。 やはり、ここにあるのも舞城ワールド。『九十九十九』も、評者がついていけない舞城ワールドであったが、今回の舞城ワールドはそれ以上の世界である。ついていけなくても、舞城節がそこにあれば、やはり評価は高いのである。(20080912) ※畏るべし、舞城王太郎。頭が良すぎるぜ。(書評No832) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2008-09-19 11:31
| 書評
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Comments(2)
Tracked
from 本読みの記録
at 2008-09-25 23:15
タイトル : 中二病全開:ディスコ探偵水曜日
ディスコ探偵水曜日 上 (1)作者: 舞城 王太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/07メディア: 単行本 ディスコ探偵水曜日 下 (2)作者: 舞城 王太郎出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/07メディア: 単行本 舞城王太郎の最新作。本の見返しに書かれていた言葉は「本書は著者最大の長編である」 でも、舞城王太郎のこんな長い本を読んだら疲れてしょうがない ... more
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おんじょー
at 2008-09-19 14:15
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ドラゴンボール ヽ(゜▽゜*)乂(*゜▽゜)ノ バンザーイ♪
しんづれいしました。。 ヘ(-.-ヘ;)... コソコソ...
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