2008年 09月 30日
多分、本書『宿屋めぐり』の内容はミステリーとかではないので、年末に再度話題にのぼることもないと思うのだが、今年の押さえ本の一冊といっていいだろう。 で、どういう内容かというと、一方では、いつもの時代物町田節、『パンク侍、切られて候』や『告白』の系譜に連なる、ああでもないこうでもないどうでもない、一体なんなのこりゃ?みたいな奇想冒険物語である。 また、別の紹介の仕方をすれば、本書の中にお芝居の新作構想みたいなのが出てくるわけで、この芝居のコンセプトというのがはたまた目茶苦茶で、時間と時空がちょっとばかし仲違いして、そこに嘘と真実がクロスするみたいな内容で、よく意味はわからないながら本書自身がそのコンセプトの具現化ということもできる。 主人公は権現様に刀の奉納に行く途中、白いウニョウニョに飲み込まれ、異世界へ吐き出される(と主人公は思い込む)。いわば、虚構の世界である。時間と空間が仲違いした結果である。本来の目的である権現様奉納を叶えるため、主人公はその世界でアホな冒険を繰り広げるのだが、嘘や虚構や偽善や不信ばかりで、真実が見出せないのである。 って、書いても、一体何の話かわからんだろうなあ・・・じゃあってんで、主人公が旅の途中、異世界へ投げ出され、その世界でも旅を続け、偽善者のお世話になり、裏切られ、刀を盗まれ、奇跡を起こせるようになり、超悪人のレッテルを貼られ、逃げて・・・う~む、町田康の作品は粗筋書いても、ようわからんやないけ。 とにかく読んでくれとしか言いようがない。『告白』に並ぶ町田康の集大成であり、同時代に生まれた読者が、本書を読まないでいることは、とってもとっても勿体無いことなのである(と、俺は、私は、僕は勝手に思うわけです)。(20080928) ※舞城王太郎の『ディスコ探偵水曜日』1000頁の直後、本書600頁にとりかかり、お蔭で随分と読書が捗らなかったが、でも今年の押さえ本2作を一気に読んで嬉ピイのことども。(書評No833) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2008-09-30 10:16
| 書評
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