カテゴリ:書評( 1029 )


2015年 01月 31日

◎◎「もう年はとれない」 ダニエル・フリードマン 創元推理文庫 1123円 2014/8

b0037682_11595690.jpg最高に愉快な、老いぼれハードボイルド。元刑事といっても87歳なわけで、そんな齢になれば、元、なんて意味がないようで意味がある。それは、彼が伝説だったから。愉快とは書いたが、ユダヤの金塊に絡み、人は死ぬし、謎は深まる。でも、この老いぼれの思考回路、吐き出す言葉がなんともいかすのである。あと、彼のことをじいちゃんと呼ぶ、孫との二人三脚も読ませる。最新機器を使いこなす若者と、GPSも理解できない老人とのコンビ。最後は頁数が少なくなって、そうするとあいつが意外な犯人かともわかるのだが、秀逸なミステリーなのだ。
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by kotodomo | 2015-01-31 12:00 | 書評
2012年 10月 26日

◎◎「パンドラの函」 太宰治 新潮文庫 546円 1973/10

b0037682_19212445.jpg18歳で傑作だと感じた本を、50歳で再読。太宰には珍しい青春小説である。「正義と微笑」「パンドラの函」の中編2編収録。まずは美文である。そして18歳のときにには気付かなかったが「正義と微笑」の主人公青年は相当のヘタレである。あまりのヘタレ具合に、思わず笑った箇所もあり、太宰で笑うとはである。「ライ麦畑・」の主人公も敵わない大ヘタレ。読むべし。そして、こちらの方が明るい青春傑作と印象に残っていたパンドラ。あとがきを読むと、そうかこの主人公青年のモデルとなった人物は結核を克服できずに死んだわけか。寂しい。
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by kotodomo | 2012-10-26 19:21 | 書評
2012年 10月 20日

◎◎「夏のバスプール」 畑野智美 集英社 1575円 2012/7

b0037682_16582633.jpg高校一年男子の、夏休み前1週間の青春生活のお話。結局、最後の頁まで、何のお話を読んでいるのかわからず、人によっては何の話?オチは?と思うかもしれないが、個人的にこのまとめ方は好みである。最終盤での西澤との会話、青野との戯れ、色んなものが会話の中で恢復していくような筆の運びが。こりゃあ「国道沿いのファミレス」も読まないと。無駄なキャラたち、つまり不登校の男子、久野ちゃんの弟のつまるところ、本屋のバイト君などが、無駄なまま全体の溝をうまく埋めていて、この今までにない計算された構成を読まされると唸るしかない。
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by kotodomo | 2012-10-20 16:58 | 書評
2012年 10月 18日

◎「ビブリア古書堂の事件手帖2~ 栞子さんと謎めく日常」 三上延 メディアワークス 556円 2011/10

b0037682_20482723.jpg1作目より、本にまつわる薀蓄と物語が滑らかでよろしい。これで、「巨乳」と「体質」への言及と、栞子さんのどもり過ぎの描写が少なければ、もっと素直に評価できるんだけどね。前作に引き続き図書館に予約したのだけれども、自分の中では優先順位が低く、ラノベだし読まずに返しても、と思っていたが、いやいや読んで正解。優先順位は相変わらず低いが、続巻も読みますよ(^.^)多くの人が知らない本にまつわる章立てで、果たしてそれでも面白いのは作者のお勉強の賜物と構成力のおかげでしょう。あれだね、男性読者として栞子さん会いたい!
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by kotodomo | 2012-10-18 20:48 | 書評
2012年 10月 14日

〇「フリント船長がまだいい人だったころ」 ニック・ダイベック 早川ポケミス 1785円 2012/8

b0037682_10393337.jpg題名から冒険物かと思っていたら、ノワールな雰囲気の小説であったのことよ。町の漁船団を牛耳るドンが死んで、その息子が資産や権利を売っぱらうと宣言したことから起こる顛末、ただそれだけのお話を文学性を孕んだ描写で読まされるのは、そこまで苦にならないが、冒険物だと思っていたので、その落差は大きい(笑)結局、この作者は物語の中で音楽をプレイヤーに載せたかったのかな。レコードアルバムを奏でたかったのかな。登場人物たちに、好人物が不在なので、物語を楽しみたい読み手なら、本書は避けておいたほうがいいだろう。曇天の小説。
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by kotodomo | 2012-10-14 10:40 | 書評
2012年 10月 08日

▲「金星を追いかけて」 アンドレア・ウルフ 角川書店 1785円 2012/6

b0037682_1214563.jpgハレーが、50年後に金星の日面通過が8年セットで2回起きるよ、自分はもう生きていないから、みんな全世界で観測して宇宙の距離を測りなさいねと言って、それが行われるのも凄いが、当時の先進国も大航海を経ないと観測地に行けないのも苛酷だし、全世界のデータを集めるのも大変だし、科学って凄いね。1760年代なんて、仏革命より前の話。飛行機でFAXで電話でネットで、そんなのないんで、船に乗っていても本国とのやりとりは手紙だし、そんな時代に凄い。ちなみに我々は、2004年、2012年の2セットを経験済み。この前あったね。
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by kotodomo | 2012-10-08 12:15 | 書評
2012年 10月 07日

◎◎「僕らのご飯は明日で待ってる」 瀬尾まいこ 幻冬舎 1365円 2012/4

b0037682_1252951.jpg最高に爽やかな傑作恋愛小説。内に籠った青年の日常からの描きだしに、再生の物語?と思いきや、それ以上の物語。連作短編集のような章立てをとりながら、二人の男女の高校生活描写から、少しずつ物語は未来へと進んでいく。とにかく、読むべし!理屈などいらないお薦め小説。実に中身が健康的なのである。ただなあ、途中で縁があったえみりという名の女の子が可哀そう。可愛くて育ちもよくて素直な彼女が、なぜにフラれてしまうのか。なぜにフラれなければならないのか。ああ、可哀そうで仕方ないというのが中年男性読者からの唯一の欠点かな。
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by kotodomo | 2012-10-07 12:51 | 書評
2012年 09月 30日

〇「小野寺の弟・小野寺の姉」 西田征史 リンダブックス 1260円 2012/3

b0037682_15315229.jpg小説はもうすっげー沢山読んできたが、身近なものながら、今回小説内で初めて出逢ったものがあり・・ボンタン飴。鹿児島生まれの自分は、地元企業のセイカ食品のボンタン飴は、鹿児島だけのローカルな商品だと思っていたわけで、2年前、その会社の社長様とお話したときに、滅茶苦茶全国区な商品だということを初めて教わったのである。本書129頁で、小野寺姉が婆ちゃんにボンタン飴をわけてあげるだけのシーンなのだが、長いこと小説を読んできた歴史の中で、この単語に出くわしたのは初めてである。鹿児島県人としてなぜか嬉しいのであった。
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by kotodomo | 2012-09-30 15:32 | 書評
2012年 09月 30日

◎「はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある」 宮田珠己 本の雑誌社 1680円 2012/5

b0037682_1182415.jpg人文書や写真付き本、絵画付き本、地図付き本なんて、普段読まないような本の、どこか珍妙なセレクションというかコレクションというか、そんなのにまつわる本紹介本。人文なんて読まないと思いながら、そういえばその昔藤田紘一郎の寄生虫本を好んで読んでいた自分を思い出し、それなら石本や植物本なんかも読んだら面白いだろうなあと共感。しかし、この著者の脱力感溢れる興味のあり方、文章のつづり方には独特のものがあるなあ。自分は好きなんだけど、何これ?どこがいいの?と思う読者も少なくないはず。でも自分さえ愉快であればいいのだ。
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by kotodomo | 2012-09-30 11:08 | 書評
2012年 09月 23日

〇「鍵のない夢を見る」 辻村深月 文藝春秋 1470円 2012/5

b0037682_13562188.jpg直木賞受賞作品というのは、人に薦めたくなる物語であってほしいのだが、本書の場合、他人には特に薦めない。「ゼロハチ・・」を読んだときも感じたのだが、この作家、紡げる作家である。己から物語が出てくる作家である。ただ、お話の紡ぎ方はいいのに、文章の紡ぎ方に平凡さがある。オジサン読者には、少し温いのである。加えて本書のキャラクターたちが抱えているのは悪意だったり、自意識過剰であったりで、キャラ自体がお薦めでないのである。5つの短編が収められた作品集。表題と同じ題名の短編はない。共通するものは、「自分の責任?」。
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by kotodomo | 2012-09-23 13:56 | 書評 | Trackback | Comments(0)