2012年 05月 19日
可もなく不可もなく、少し村上春樹がかった部分もなくはなく、粗筋は記憶喪失と、喪失と、邂逅の話と言えばいいのだろうか。ひとつのモチーフとしては、嶽本野ばらが、田仲容子という画家の絵6枚をモチーフに章立ての物語を紡ぎ出したこと。だから、全体を通して、通常でいうところの辻褄のあわない、形而上的な設定も、話の繋ぎの無理と言えないこともないが、まあこれも手法かな。ファッションのお話は少し。乙女の香りはゼロ。連載時の題名は「カルピス・アルプス」。飲料会社から結局のところ許可がおりなかったとのことである。これも野ばら。
2012年 05月 19日
嶽本野ばらの美文エッセイ集。美文だども、ノバライズムを知らない人には、何じゃこりゃ、の内容なのでご注意を。その昔、乙女はたくさんいたわけで、乙女が好きな物は白馬の王子様のわけで、だからGSたるタイガースやテンプターズが「花咲くエメラルドのお城の星の歌」みたいなのを、王子様の格好で歌わされて、大人気だったのです。モーニング娘。の道重さゆみ嬢。多くの人に嫌われているようですが、彼女はもう乙女です。「ちやほやされて、泣けば全てが赦されたい」そんな言葉が似合いすぎるのは、これもう乙女の証左なのです。ビバ乙女!
2012年 05月 18日
マリオのお話と、ぷよぷよと格ゲーとシューティングゲーム一般論と、ドラクエⅠⅡⅢを題材にした、あるライターが主人公の連作短編集。そして、ちょっとミステリー。特にぷよぷよを題材にした「残響ばよえ~ん」は、中々にミステリー。中学時代の女友達とのゲームを通しての交流。ちょっと変わった行動をする女の子の話。その話を聞いた先輩ライターが、その女の子の行動の底に沈むものを言い当てる。いわゆる安楽椅子探偵ミステリー。面白いぞ。あとドラクエにハマった自分としては、あのⅢの容量節約の話も見逃せない。自分はⅡが一番好き!
2012年 05月 13日
図書館から借りてきて、先に読みたい本があったので、最近野ばらファンになった中三の娘(私の影響。著者のことを嶽本野ばらさんと呼ぶ。野ばらっちでいいじゃないか、というと怒る)に貸していたら、なんだか最近コルセットをしだし、ネグリジェを着用するようになり、なんど?と思っていたら、やっと本書を読んで納得。本書の内容は、いつもの乙女のための野ばらエッセー、小品集。ルビが多くふってあるのをみると、ティーン成り立て(要するに13歳、サーティーン)ぐらいからが、ターゲット。でも、相当に趣味的深みもあり、全部は吸収不可能。
2012年 05月 13日
やはりこの作家は今後も追いかけていかねばと思った佳作でした。基本、純文学路線、いや単に文学路線か、それにいつもどこか心温まる日常の切り取り、いいですね。どういうお話かといえば、長期バイトに出向く弟のせいで、弟の仮り住まいに自分が仮り住まいして嫌いな蛇を飼うはめになった男の話。どこか可笑しい取り巻くキャラたち。なかでも、職場の変わり者上司、田村のおっさんは最高である。オタクなのか自己チュウなのかつかみどころがないのだが、中々芯があって面白い。巻末に「夜の住人たち」という小品も収められているが、まあ付録だな。
2012年 05月 11日
「いつだって僕たちは小説」の総本山、今更ながらに読んでみました。意外とあっさり、ライトなノベルなのにびっくりしました。素直に泣く気にもなっていたんだけど、ツボはなし。よく、あんなに売れたなあ!貶すつもりもないけれど、不思議。下手な伊坂幸太郎が恋愛小説書いてみました、大体そんな感じの全体像です。この手の売れ筋本で、想像以上に面白かったのは『東京タワー』リリー・フランキーだったけど、やはりあれは文章や構成が巧いのだよね。本書の場合、少し下手な部分が散見され過ぎかなあ。古書店で100円なら時間潰しで損はないが。
2012年 05月 08日
お昼休みに少しずつ消化。一日40頁ほど。昼休みに頭の中が村上春樹。ところで、全体として完成された面白さに溢れているのだが、青豆さんが逡巡する部分が、多少冗長なような気もしたが、まあ村上春樹がそうしたいんなら仕方がないか。あと、ふかえりを部屋に置きたくなったぞ。濃密な関係にならなくていいから、そこにいるだけでいい。そして、時々予言めいた確定的な言い方をしてくれれば、生きていく方向がわかるっていうもんだ。含みを残した終わり方で、book3に続くわけで、果たして奇妙な世界の冒険はどちらへ?
2012年 05月 05日
冒頭の「トンネル鏡」と表題の「月の上の観覧車」は巧いが、その他は余技で書いた売文である。前者は、列車に乗っている間の、後者は観覧車で一周している間の主人公の回想を描いており、「誰にも書ける一冊の本」のときと同様、この作家は死者への追悼を描かせたら巧いのである。ただ、どうしてもワンアイディアで文章を綴る癖が抜けず、ユーモアミステリーを書かせると、最近はどうも冴えない。あの「なかよし小鳩組」を書いた荻原浩はもういないのかな。いや、最近では「サニーサイドエッグ」も面白かったし。ということで、短編2編のみ読め。
2012年 05月 05日
![]() ◎◎骨太のミステリーっていのうは、こういうやつを言うんだな。ボッシュシリーズ3作目だけど、初めての読者もこれから入ってもちっとも構わないだろう。法廷物と事件物のタペストリーミステリー。かつての事件の犯人射殺で、その正当性を争う法廷の丁々発止が楽しいし、その事件に絡む未だ止まぬ怪物による殺人事件の捜査。これから下巻に入るが、犯人について、少し意見を持っている評者。あいつだとは言わないが、こういう人物じゃないかなみたいな。原題はコンクリ金髪死体。まあ、これじゃあ売れないわなあ・・で、ブラック・ハート。悪しき心。上巻の終盤に感じた犯人像は結局はずれてしまったけど、そんなことはどうでもいい、ハリウッド映画的な面白さでした。あえて、苦言を呈すなら、彼女との恋愛部分はいらないんだけど、でもまああれがあったお陰で、最後でホロリするようなスピーチバルーンがプカプカ浮かぶわけで、まあ、そういうことで傑作は傑作なんだな。もう17年前の作品だけど、今こういうのを描けるのって、コナリーとディーヴァーくらいしか知らないなあ。そうそう、17年前なので携帯はなくポケベル。注釈に「日本でいうところのダイヤルQ2」ってあったが、なんだっけ? 2012年 04月 29日
日本史に興味がなく、時代物は読んでも、歴史物は読まず、特に著名な人物の物語なんて避けて通ってきた評者なのだが、花村萬月新作本と図書館の新刊コーナーから借りてきたのだが、これが実に良い。信長ハードボイルドワールドである。信長自身が、したためた手記という形式で、己を語り世を語り哲学を語る。無駄を省いた文体に、短いながらも端的に交わされる会話の部分が、何よりもハードボイルド。やっぱりあれですね。芥川賞作家が大衆文学を書くと、底辺に重奏なものが流れていて、物語自体も引き締まりますね。花村萬月に脱帽の一冊。
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