「本のことども」by聖月

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2007年 05月 14日

◎◎ 再読再評価「海峡」 伊集院静 新潮社文庫 700円 2002/6

b0037682_11235542.jpg なんだか最近、小説っていう狭義の意味の小説が読みたくなった評者。ミステリーでもなく、サスペンスでもなく、なんとかものでもなく、ただただ小説。読者に対して“どうよ、この物語”みたいな下心もなく、ただただプロとしての作品。

 GW鹿児島の書斎で、急にそんな気持ちになって書棚を眺める。そうだ!『海峡』三部作を読もう!『海峡』『春雷』『岬へ』三冊とも所蔵本。そのうち『海峡』は5年前に既読、書評はこちら。評価は○。本書を再読してわかったことは、当時の評者の評価はなんざんしょ?というほど、いい加減だったということか。ていうか、多分当時と今と、本に対する姿勢が変わってきたのかもしれない。一時期は、このミスにランクインされそうな本を読む傾向にあったり、まだネット書評を始めたばかりで、もしかしたら人のために本を読んでいたり、そんな感じの読書だったのかもしれない。

 小説が読みたいという気持ちから、『海峡』三部作を読破したい。そういう連想に至ったのは、元々『海峡』という小説に、素敵な印象を残していたからに他ならない。実際、あらためて読んでみると・・・いい。実にいい。そして・・・ほとんど内容を忘れていて新鮮(^^ゞいやあ、未読の方々、読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!現在は、評者が所持している単行本たちは入手困難だが、三部作の文庫本たちは廉価になって、当時と違ってセット扱いされていたりして、お買い得で入手しやすいぞ。

 ほとんど内容を忘れていたと書いたが、本当に憶えていたのはシーンのみである。主人公少年の家の男衆とのキャッチボールのシーン、渡し板から女の子が海に落ちるシーン、友人との切ない別れのシーン、そして父親が開いたキャバレーみたいなとこでのシーン。

 今回の再読では、そのシーンを埋めるシーンが繋がって・・・とにかく素晴らしい。高木の家に生まれた少年。その高木の家には、多くの男衆、女衆が住まう。姉たちがいるが、跡取りは主人公少年。男としての少年の、少年期の物語が本書である。三部作と銘打たれてからは、本書は幼年篇、『春雷』が少年篇、『岬へ』が青春篇と文庫上は色分けされているが、幼年期というよりは、やはり小学校高学年の少年の物語である。悲しさも喜びも切なさも、大人になるちょっと手前の甘酸っぱく純粋な、どこか懐かしい心裡なのである。

 舞台は、戦後復興期の瀬戸内。少年と友人たち、大人たちの日々・・・とにかく、登場人物たちが素晴らしい。半分やくざ風情の父親の男気、厳しく優しい理想的な母親、男衆の“親父さんの息子”に対する向き合い方、どれをとっても素敵なのである。

 素敵な小説を読み終えて・・・まだまだ、『春雷』『岬へ』と素敵が続くのが嬉しい評者。確か『春雷』は発売当時、雑誌ダカーポの年間大賞も獲得した逸品。やはり、狭義の小説というジャンルは素晴らしい。今後の読書傾向に、一石を投じた感のある今回の読書体験のことども。(20070512)

※すぐには『春雷』は読まない。なんだか勿体ない。多分、2週間以内かな(^_^)その後、6月に鹿児島帰省予定。そのときに置いてきた『岬へ』予定。なんだか、嬉しい読書予定。(書評No719)

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by kotodomo | 2007-05-14 12:38 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 05月 13日

作りおきの料理のことども


大根とホウレンソウ、油揚げで冷やしうどんを作成・・・

翌日、余った大根とホウレンソウ、油揚げ、ロースハム、和洋取り混ぜて、
いかにも変わり味噌汁の具のようだが・・・

コンソメスープを作る。お味は・・・まあまあ、こんなもんか。

これをお三度の都度に茶碗一杯食す。

夕べは、またまたカレーを作りおき。
出来たてカレーと一緒に、この奇妙コンソメスープも食す。

メイン料理がなきゃ、ご飯とこのスープだけでもOK(^^)v

そう、だんだんとわかってきた。
今食べる料理以外に、余った食材で副食作りおきが肝心なのだなあ。

今は、昨日買ってきた久々98円丸ごとキャベツをどう使おうか、『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹を読みながら思案中。
『シャングリ・ラ』と同じくらい軽薄なテンポの冒頭50ページ。果たして、最後まで読めるやら。
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by kotodomo | 2007-05-13 11:11 | メモる | Trackback | Comments(0)
2007年 05月 12日

◎◎「童貞物語」 佐藤正午 集英社文庫 400円 1990/5

b0037682_11245741.jpg GW、鹿児島の家族のもとへ帰省して、とりあえず携えてきた図書館本をすべて読み終わり、書斎の本を読もうかと本棚を漁りはじめ、途中から“そうだ、佐藤正午の本をもう一度読み返そう”なんて思って、もう内容も憶えていない『スペインの雨』だら『バニシング・ポイント』だら引っ張り出していたら、本書『童貞物語』が出てきて???

 この???は、読んだんだっけ、読んでないんだっけ、途中までだっけ、そういう三つの疑問を表している。読んでみてわかったが、最初の10ページくらいで、そのままにしていたようである。そして、読んでみると、これがすこぶる面白い。題名から連想される通り青春小説なのだが、恩田陸の『夜のピクニック』だとか、伊坂幸太郎の『砂漠』なんかより、ずっとずっと上位レベルの小説である。佐藤正午の芸当が押し込まれた文芸である。

 多分、題名で損をしている小説だと思う。童貞という言葉は出てくるが、青春小説の多くがそのまま童貞小説なわけで、わざわざ電車の中で題名を隠して読みたいようなそんなものにする必要はなかったんじゃないかと思う。

 男4人、女1人、その5人の高校三年生の一年間の物語である。それだけである。青春小説の名作といっていいだろう。読むべし!なのである。

作家の佐藤正午は江川が好きで、評者も江川が好きで、だから本書を読み終えたとき、これも書斎の未読本『たかが江川、されど江川』江川卓著を読み始めた評者なのである。(20070506)

※『リボルバー』も未読だったような気がしてきたぞ。(書評No718)

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by kotodomo | 2007-05-12 08:35 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
2007年 05月 11日

◎◎「雷の季節の終わりに」 恒川光太郎 角川書店 1575円 2006/10

b0037682_11255034.jpg 前作『夜市』では、その表題作でも、一緒に収録されていた「風の古道」でも、現実の世界のすぐ隣にある異世界を物語に取り込み、少し淋しげで、また静謐な世界観を作り上げていた作家恒川光太郎。今回も同様の世界を描く。しかししかし、その世界の奥は深く、こんな比較はなんだが、昔その物語世界の奥深さに沁みいったRPGゲーム「ファイナル・ファンタジーⅤ」を想起した評者である。

 この世界と隣り合わせの世界、そういった設定の物語はこれまでも多数生み出されてきたわけで、たとえばピーターパンだってそうなんだけど、本書で肝心なのは、気がついたら現実世界に戻っていたなんて設定ではなく、あくまで異世界側から物語を語り続けることなのである。そういう意味で、「夜市」「風の古道」とは、設定が根本的に違うのである。「夜市」でも「風の古道」でも、物語は現実世界から始まり、異世界へと足を踏み入れ、そして現実世界へなんてピーターパンと同じパターンであったが、本書『雷の季節の終わりに』は、異世界から物語は始まり、異世界からの視点でずっと物語られ、現実世界は、異世界の異世界でしかないのである。そして、物語はどこか淋しく静謐な恒川ワールドなのである。

 とにかく良い。こんなにいい小説を読むと、粗筋は書きたくない。評者を信じて、何の予備知識も持たずに読んでほしい。評者だって、ただ『夜市』の作家の最新作というだけで、中身も知らず読み始めたのである。終盤の話の流れに、イマイチ感を抱く人もいるだろうが、とにかくこの世界観は素晴らしい。あの村上春樹の名作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の世界観に、FFⅤの世界観に、勝るとも劣らない。久々の、会心の読書。読むべし!なのである。(20070506)

※FFⅤを引き合いに出したが、このテイストはRPGに間違いない。(書評No717)

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by kotodomo | 2007-05-11 09:06 | 書評 | Trackback(3) | Comments(2)
2007年 05月 10日

▲「プラスチック・ラブ」 樋口有介 実業之日本社 1600円 1997/2

b0037682_1127910.jpg 結局、この作家の書くほとんどの作品はハードボイルドなわけで、一口にハードボイルドと言っても色々なハードボイルドがあるわけで、それでも一口で言わせてもらうなら、タフな会話を特徴とするハードボイルドなのである。

 こういうハードボイルドを読み重ねると、段々と評者自身もタフなハードボイルド会話を生活に織り込みたくなるもので、ああハードボイルドでいたいなあ、タフな会話を・・・なんて思っていたら、実際自分自身、既にタフな会話を家族と交わしていることに気付いた帰省中の評者なのである。


 たとえば・・・

娘“パパあ、お出かけ?どこに行くの?”

評者“チンコにパン粉を付けるようなところ”

娘“ああ、パチンコね。頑張ってねえ♪”

 嫁さんだって・・・

評者“最近、上の娘とママと、家の中で姿陰をみたとき区別がつかないときがあるよ”

嫁さん“間違って、後ろから抱きつかないでね♪”

・・・というように、我が家の中では、普通にタフな会話が交わされているのである。

 本書『プラスチック・ラブ』は、タフな会話が信条?の、高校二年生男子が主人公の連作短編集である。面白いのは、主人公は同一人物なのだが、主人公を取り巻く環境が同一ではないことである。それぞれの話の、主人公の友達恋愛環境は別々のもので、主人公を同一にしたパラレルワールド連作短編集ともいえるだろう。

 ただし、評価がイマイチとなったのは、主人公の会話や行動哲学は中々共感できるのだが、描かれる高校生たちの世界に評者が馴染めなかったためである。多分、作者は、幅広い読者ターゲットを想定して文章を綴っていると思うのだが、実際には今現在青春生活を送っている人たちに面白いであろうと思われる文章で、評者から見ると、そういう意味で文章レベルが低いのである。蛍雪時代なんて雑誌が今あるかないかわからんが、セブンティーンなんて雑誌が今あるかないかわからんが、そんな狭い読者年齢層に好まれるような世界なのである。

 これまでに読んできた、同じ作者の青春ハードボイルド小説では感じなかったテイスト。このテイストの違いがどこにあるのか不明のまま、この文章を書き終える評者なのである。(20070502)

※高校生の子供がおられる家庭で、どうも子供が本を読まんで困るとお悩みの方は、この本をお試しあれ。(書評No716)

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by kotodomo | 2007-05-10 14:34 | 書評 | Trackback(1) | Comments(2)
2007年 05月 06日

帰省中


なんか、嫁さんとどういう話をしてるかっていうと・・・

結構、料理の話をしている今回の帰省。

嫁さんの本棚から、NHKきょうの料理5年分発見!

冷凍庫を見て、何が保存してあるか覗く聖月様(^^ゞ

・・・明日で45歳じゃ。
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by kotodomo | 2007-05-06 05:35 | メモる | Trackback(1) | Comments(5)
2007年 05月 04日

◎◎「円朝芝居噺 夫婦幽霊」 辻原登 講談社 1785円 2007/3

b0037682_1128329.jpg 今年の収穫本と言えるだろう。全然期待しないで読み始め、うむむ、と唸った評者である。辻原登、芥川賞作家。評者の既読は『ジャスミン』のみ。その作家が、なんだか直木賞的な題名の本を出してきたものだから、気になって読んでみただけの読書動機だったのである。

 まず、読み始めから、これはなんぞ?と思った評者。視点は作者。作者が明治時代高座で活躍した円朝の噺をしたためた速記に出会うところから物語は始まる。こはなんぞ?ノンフィクションかや?小説を読むつもりが、ノンフィクションだったとは・・・そう早合点した評者なのである・・・そして、作者の速記に対する考察が述べられる。録音や録画というものがなかった、そう遠くない昔、速記の輸入(速記術は外国から入ってきている)によって、台本のない噺も記録を残せることになったこと。速記自体は言文一致ではないため(いわゆる記号である)、それを日本語の文章におこすとしたら、そこには翻訳作業が介在すること。その日本語の文章に演者自身が目を通して校正し、そこで初めて落語というものの活字媒体が完成するということ。見つかった円朝噺の速記を日本語におこそうにも、速記自体が変遷を遂げ当時のものと変わっているし、田鎖式やら早稲田式やら○○式やら方式が違うと速記は速記でも全然別なものであること。それゆえ、円朝噺の速記を今更日本語におこそうにも容易ではないこと。結局、作者がなんとか日本語をおこせる速記事務所を探し出し、自分が翻訳者となって円朝の「夫婦幽霊」を・・・で、物語は『円朝芝居噺 夫婦幽霊』へと繋がっていく。本書全体の3/4は、この夫婦幽霊の噺を話にしたもので、つまり評者は期待通りに辻原登の書いた「夫婦幽霊」という物語を読むことができたのである(^_^)著者自身は、自分が翻訳した作品と述べているが。

 問題がいくつかある。偽書かもしれない。この偽書である可能性については、速記の発展との齟齬が原文に見られるところから、作者自身も言及している。

 その他色々と本文を読めば問題が散見されるのだが・・・一番の問題は、本書全体が小説かどうかという問題である。普通に読めば、作者が速記に出会った部分は事実で、それをもとに「夫婦幽霊」の話を紹介したのが本書と読めるが、速記とであった部分から創作であったとしたら、全体がそういう小説になってしまうわけで・・・作者や出版社がなんらかの説明をつけても、それ自体の真偽が読者にはわからないわけで・・・これがその発見した速記です!なんていう写真がない以上は、やはり本書は問題の本であり、今年の収穫本なのである。(20070430)

※久々に、知的好奇心までくすぐられた作品であったのことども。(書評No715)

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by kotodomo | 2007-05-04 18:42 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 05月 02日

〇「11月そして12月」 樋口有介 新潮社 1300円 1995/4

b0037682_1129399.jpg 樋口有介作品にしては、少し芸のない作品である。

 まず、主人公がどこか社交的でない、どっちかというと内向性の青年。ぶっきらぼうな会話の中に樋口流のハードボイルドが見え隠れはするのだが、それが粋な会話なのか、根暗な会話なのか、読んでいて迷ってしまう。

 また、本書に書かれている内容も、11月から12月までの、主人公の周囲の描写に過ぎず、その周囲っていうのが、母親の悩み、父親の悩み、姉貴の悩み、そして自分の悩みを、全部自分に押し付けられた日々の描写と、言葉にすれば単純な構造になっているので、物語の深味や広がりにどうしても限界が生じてしまう。

 結局あれだねえ。主人公の生き方に、一本筋が通っていないのがいけないのだろうなあ。そういう主人公は他の作品でも登場するが、そういった主人公たちは一本筋が通っていないことを生き方にしているわけで、結果的に一本筋が通っていない主人公っていうのは共感するには、ちと、難しいのである。(20070429)

※それでも、まだまだ樋口作品、読み続けまっせ(^O^)/(書評No714)

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by kotodomo | 2007-05-02 09:34 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 05月 01日

〇「イヴの夜」 小川勝己 光文社 1680円 2006/10

b0037682_1130671.jpg 新幹線に乗って片道3時間くらいの距離を、本書『イヴの夜』で暇潰しするくらいには、そこそこに展開のある内容である。悪くはない。

 悪くはないが、『葬列』や『撓田村事件―iの遠近法的倒錯』に小川勝己という作家の力量を感じてきた評者としては、所詮本書は連載物であり売文物であり、結局はライトノベルなのである。

 どうも最近この作家には、連載物ばかり読まされており、そのたびに評者の評価はイマイチで、早く書き下ろしを上梓しなさいと書評を挙げるたんびに主張しているのだが、どうも小川勝己は“本のことども”の読者ではないらしく、もしくは読者であっても天邪鬼な読者であるらしく、全然言うことを聞いてくれない(笑)。

 根暗な男性主人公。その彼女が殺される。マスコミが騒ぎ出し、本人は連日ワイドショーで犯人扱い。“A氏も潔白なら、自らその証拠を提示しなきゃいかんですなあ”などとコメンテイターに言われても、なす術のない、憤りの持っていきようのない日々の描写。それと平行して書かれる根暗な女性の日々。まあ、読み物としては、粗筋物としては、まあまあ。予定調和的に物語は進んでいくが、冤罪作りな報道のあり方に、読み進めながら考えるところも少なくない。

 最近でもワイドショーを色んな事件が賑わしているが(外国人女性殺害や通り魔事件et cetera)、あれがもし冤罪かなんかで、自分がその当事者だったらたまらない。指名手配されて顔がはっきりしている事件以外にも、渦中のA氏なんて感じでぼかしつきでインタビューされて、ああいう事件の顛末は知らないが、でも多くの場合、その人物が犯人であることも多いのだけど、あんな感じで報道されて実は犯人じゃなかったなんて例は結構あるんじゃなかろうか。おおコワ。

 まあ、そういうことで、小川勝己殿、早く書き下ろしを書いてくんなまし。壮烈で倒錯なやつをね。(20070427)

※独身時代、そんなにイヴの夜にこだわりのなかった聖月様であるので、登場人物たちのこだわりがイマイチようわからん。(書評No713)

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by kotodomo | 2007-05-01 11:47 | 書評 | Trackback | Comments(2)