「本のことども」by聖月

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2007年 10月 31日

▲「画狂人ラプソディ」 森雅裕 角川書店 1000円 1985/8

b0037682_1045046.jpg 森雅裕が、乱歩賞をデビュー2作目の『モーツァルトは子守唄を歌わない』で受賞した際、ある書評家が、その評価に留保をつけていた。デビュー作も2作目も、過去の歴史を題材にとり(北斎とその周辺、モーツァルトもしくはベートーベンとその周辺みたいに)、どちらも暗号解読を謎解きの中心に据えており、2作を比較したとき目新しさがないというような理由による。

 仰るとおりです、北上次郎氏。特に、2作目『モーツァルト・・・』から先に読むと、デビュー作である本書は、かったるく感じるです、はい。ましてや、薀蓄物が好きくない評者の場合、北斎は複数人物からなるとか、北斎は誰それの末裔とか主張されても、ああそうだったんですかとしか、感想を持てないのでございます。『人麻呂の暗号』を読んだときの、あの退屈感がここにはありましたです、はい。

 まあ、そいうことはさておいて、本書は芸大に身を置く主人公の視点で進むミステリー。後の『椿姫を見ませんか』では、私立芸大が舞台になるが、本書では国立芸大が舞台。でも、その違いは何もない。芸大=音大+美大の設定の中で、美大の主人公が音大の生徒と一緒になって謎を解かんとする内容は、まったく一緒といってよい。

 問題は、2作目『モーツァルト・・・』で見せたハードボイルドな表現が、本書ではうまく表現されていないということである。作者が、ハードボイルドたらんと描いているのは感じるのだが、結果ほとんどその味は出ておらず、設定の退屈さを無視したとしても、文章にそれを補う魅力がないのである。

 横溝正史賞の佳作としてのデビュー作。なるほど、横溝っぽいといえば横溝いような気もするが、評者は横溝を観たことはあっても読んだことはないので、どれほど横溝かは返答に窮する今日この頃は少し秋の気配なのである。(20071026)

※絶版。AMAZONのユーズドで189円にて購入。配送料のほうが高かった、ははは。(書評No751)

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by kotodomo | 2007-10-31 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 10月 30日

◎「モーツァルトは子守唄を歌わない」 森雅裕 講談社 1000円 1985/9

b0037682_12313757.jpg “確かに”1985年、大学4年生のときに、時の彼女と映画「アマデウス」を観に行ったっけ。オモロカッタ。当時、日本人のほとんどが、この映画でモーツァルトのサリエリによる殺害説を初めて知ったわけで・・・。で、何が“確かに”かっていうと、本書の扉で作者が危惧しているのである。江戸川乱歩賞受賞の本書が刊行されたのが、映画と同じ1985年。内容も、モーツァルトのサリエリによる殺害説が下敷きになっているわけで、読者が二番煎じと捉えないだろうか、そんなところを記しているのである。

 確かに楽譜の一部は一緒ながら、流れてくる曲は、映画と本書とではまったく違った曲想である。本書『モーツァルトは子守唄を歌わない』では、モーツァルトの死は過去のこと。主人公も、モーツァルトではなくベートーベン。このベートーベンがハードボイルド(?)。今に起こる謎を、過去の亡霊をものともせず、ハードボイルドに解決するという、実にコミカルで爽快な物語なのである。

 しかし・・・楽譜の謎が登場する。実際に楽譜も本書内に書かれているのだが・・・素人にはわかりにくい楽譜の暗号解きは、ああそうですか、そうなんですか、そうだったんですかとしか言いようがないのが玉に瑕。だから、評価は◎◎にはならないのである。
もしもピアノが弾けたなら・・・少しは評価が変わったろうか。(20071026)

※随分と古い本ながら、図書館にあったど。(書評No750)

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by kotodomo | 2007-10-30 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 10月 16日

◎◎「サニーサイドエッグ」 荻原浩 東京創元社 1890円 2007/7

b0037682_10445235.jpg 最初で大予言。本書『サニーサイドエッグ』荻原浩は、第138回直木賞を受賞するとともに、映画化されます。そのときには、さすが、聖月様と賞賛されるであろうことも予言しておこう。

 実は評者、『僕たちの戦争』までは、この作家を高く評価していたのだが、それ以降の長編『明日の記憶』『さよならバースデイ』『あの日にドライブ』『四度目の氷河期』は“なんだかなあ”と思っていたのである。認知症とか、知能の高い猿とか、タクシードライバー物語とか、類人猿復活?とか、ワンアイディに対して考えられるエピソードを綴っただけのような気がして、この作家の作品を楽しみにしなくなったのである。だから、最近図書館で何度も『千年樹』を見かけるのだが、まただろうなあ、古い樹の前で繰り広げられる、考えうるエピソードを注ぎ込んだ物語なんだろうなあ、なんて思って、もう老い先短く感じる45歳男は、もっとオモロイ本を読むべし、と借りようとしないのである。

 そこにやっと、昔の荻原浩が帰ってきたのである。『ハードボイルド・エッグ』は既読の評者。評価は◎。そこそこに、間抜けた主人公にオカシミを覚えたのだが、後半、間抜けハードボイルドが影を潜めたことが要因。

 そして、続編の本書が登場。これまで『あの日にドライブ』『四度目の氷河期』が直木賞候補作にあがっていたが、あんな凡作で獲っちゃいけなかったのである。本書『サニーサイドエッグ』で一般読者層にブレイクしなきゃいけなかったのである。確かに『明日の記憶』でもブレイクした感があるは、あれは映画ブレイクも絡めての話。本書は直木賞受賞とともに、まずは読書界にブレイク、そしてその後映像でブレイクってやつである。

 何をこんなに評価しているかというと、奥田英朗『空中ブランコ』がシリーズ前作『イン・ザ・プール』を遥かに凌いで、その上、単独作品としてみても遜色がない、という、傾向的な単純な理由もあるが、今回の作品に対する作者の姿勢が個人的に好きなのである。

 マーロウを敬愛する半熟探偵。マーロウのように事件をハードボイルドに解決したくても、持ち込まれるのは、犬捜しや猫捜し、あとは動物退治。どこから見ても、ペット探偵もしくは便利屋。そんな設定で、一作目を書いた後、同じ設定で二作目を出そうという挑戦的な意欲がいいのである。多分、一作目を書いた時点で、設定に対するアイディアはある程度涸れていただろう。そこに、新たに物語を紡ぐ姿勢がいいのである。そして、結果、前作を凌ぐ出来映えなので、尚更嬉しい評者なのである。

 ハードボイルドという小説は、それが固ゆでだろうが半熟(コミカル)だろうが、ジャンルはハードボイルドである(と思う)。ただ、多くの場合、序盤にそのハードボイルドタッチが注ぎ込まれ、中盤からは物語の展開に重点が置かれるあまり、序盤に感じた格好良さ、コミカルさが後半置き去りにされてしまう場合が多いのである。ところが、本書では、そこらへんの読者サービスも手を抜くことなく注がれていて、中盤、後半でもニンマリ度は変わらないのである。実にいいぞ。

 さあ、みんな今から図書館へ走れ!そして本書を読むべし!直木賞を獲ってからは、予約が殺到して100番待ちくらいになっちまうぞ!(20071014)

※あの荻原浩が帰ってきた。未読の方は『なかよし小鳩組』も要チェック。(書評No749)

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by kotodomo | 2007-10-16 23:58 | 書評 | Trackback(1) | Comments(4)
2007年 10月 15日

▲「敵影」 古処誠二 新潮社 1575円 2007/7

b0037682_10455669.jpg 傑作『ルール』から続く、大戦末期物の6作目。しかし、これまでの作品とは趣が違う。
 
 まずは、大戦末期というより、玉音放送後の物語であること。あと、読んでいて苦しくない(笑)。これまでの作品だと、主人公とともに飢餓行軍に苦しみ、砲弾の雨をかいくぐりなんていう読書中だったが、本書『敵影』に書かれているのは、沖縄の捕虜収容所の風景。安心しながら、風景を読む読書になったのである。

 なるほどなあと思ったのは、虜囚の身になった際に、多くの兵が○○(伏字です)を使ったこと。確かに読み始めに違和感を覚えた。義宗というこの主人公、この義宗って苗字?名前?ああ、そういう伏線になっていたのかみたいな。

 これ以上、多くは語らない。これまで、特に伝えられることのなかった、終戦直後の沖縄の虜囚の考え方、暮らし方、その様子を物語る、古処流のメッセージ物語である。(20071013)

※古処未読の読者は、とにかく『ルール』を読むべし。『遮断』からでもいいぞ。(書評No748)

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by kotodomo | 2007-10-15 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 10月 11日

◎◎「さよならは2Bの鉛筆」 森雅裕 中央公論社 1100円 1987/3

b0037682_17185474.jpg 図書館から借りてきた随分と古い小説である。消費税導入前の価格1100円の本である。そして今現在、本書は新刊で取り扱われていないので、価格も当時のまま、出版社も当時のままで記載させていただいた・・・と書いたとき、評者が思うのは、最近の素人ネット書評(評者も含まれるが)では、出版年、出版社の記載を特に付記しない場合が、非常に多く見受けられる。不案内さに不思議でならない。多分、そういう方と評者自身との、書評に対する姿勢が違うのだと思う。本を読んで、どう感じた、何を考えたかを伝えると同時に、是非拙文を読まれた方の今後の読書の参考にしていただきたい、面白そうだから読んでみたい、面白くないような書き方だけど本当に面白くないの?そんな風に本を手に取っていただければ、というのが評者のスタンスである。だから、出版社、出版年及び価格は必ず付記するようにしている評者なのである。以上、聖月様の主張、ご清聴ありがとうございましたm(__)m

 さて、久しぶりにダラダラとしたマクラは、まだ続く。本書を読み終え、メモに出版年を書き込みながら、評者はふと思ったのである。果たして消費税って、いつからだったっけ?あなたは、思い出せるかな。記憶を辿る・・・確か、大学を卒業し、3~4年くらい経ってから所属していた企業の中で、自社の消費税の取り扱いをどうするか会議が行われていなかったっけ・・・と、一応自分の頭の中で内観してからネットで調べてみると、1989年。自身の記憶が大体あっていたことを知る。何が言いたいかというと、評者は読書しながらそんなことを考えたり調べたりしているのである。

 ダラダラマクラは、まだまだ続く。じゃあ、現在は中央公論新社となっている、当時の中央公論社はどういう経緯でいつ社名が変わったんだっけ?これは記憶ではわからないので、すぐにネットでお勉強。なるほど、1999年に経営危機に陥って、読売新聞社が全額出資で今の新社を設立したのか。何が言いたいかというと、評者は読書しながらそんなことを考えたり調べたりしているということを二度も言いたいからである。

 ダラマクは、まだまだまだ続く。ところで、今更そんな古い本を何ゆえに読んだのかって?随分と以前のオフ会で、「たこ部屋」のすみたこさんが、この作家、この作品を非常に誉めていたからである。だから、それを何ゆえに今更読んだのかって?いや、当時、すみたこさんが、そうは言ってはいたものの、勝手にライトノベルかなんかだろう、すみたこさんと自分の好みは結構違うんで、きっと合わないかもななんて、心の深層で何気に敬遠していたのである。だから、何で今なのってか?忘れた。忘れたけど憶えている。なんでそうしたのか忘れたけど、森雅裕なる作家をネットで調べる機会があったことは憶えている。45歳、まだそのくらいのことだったら憶えられる、エヘン。「森雅裕 – Wikipedia」を読んでみると、どうも得体の知れない部分がある。コンスタントに作品を発表しながら、今現在、出版業界からは行方不明。一時は、出版業界に波紋を広げる?作品も発表・・・う~む、気になる。一体どういう作品を書く作家だったのか?だからあ、気になったのはいいけど、なんで今更?どんだけえ?・・・図書館に行ったけど、特に借りたい新刊がなかったので、気紛れで借りた。悪いか?勝手だろ!

 しかし、読んでみると、こんな素敵なハードボイルド、なんで今まで読まなかったのか悔いる評者。そうか、大学を卒業したばかりの若かりしあの頃、こんな素敵な小説が書店に並んでいたのかと、勝手に感慨する評者がそこにいる。どこにいる?

 同様の小説を書く作家に樋口有介がいるが、あちらは一人称視点のどこか頼りない男性主人公の物語、展開もどちらかというとジックリ型。ところが、本書の主人公は、ちゃんとストイックなところも持ち合わせた女子高生が主人公。可愛さと、ストイックと、女子高生らしさと、女子高生らしからぬさと、そんな雑多が融合し、決して一人称視点には拘らぬスピーディーな筆運び、会話運びで、読者の快感を刺激し続けてくれる。う~む、これはいい。

 音楽学院女子高生たちは、妊娠してカンパは募るは、それぞれに車なんぞ乗り回すは、それでいて音楽や楽器に対しては打ち込むは、なんでもありの現代のテレビドラマと一緒。“花より男子”というテレビドラマを人につられて見たことあるが(人んちに飲みにきて、勝手に毎週観ているという番組にチャンネル替えるな、コラ!)、あの男たちのほうの境遇と似ているかな。

 そんな設定の中、ハードボイルド女子高生が主人公のミステリー。作家自体が江戸川乱歩賞出身で、そういう意味では広義のミステリーマインドが内在されてはいるが、肝要なのはやはりハードボイルドマインドだろう。会話の妙は絶妙、行間の思わせぶりも絶妙。絶妙過ぎて、ここはニヤリとする場面だろうというのはわかるのだが、何をしてニヤリ?が理解できない部分も(^^ゞまあ、書かれた時期が随分と古いわけで、そういう意味で、当時ならリアルにわかるかもしれない文章を、今更にわからないというのが原因にあるのかもしれない。そうそう、今は死語となりつつある「じゃり」という言葉も出てきたぞ。いわゆる「ガキ」「こども」の意味だけど。

 久しぶりにこのフレーズを使おう。森雅裕を読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!新刊書店では、ほとんどの作品が手に入らないが、amazonではユーズドで手に入るし、大抵の図書館には何冊か置いてあるはずだぞ。(20071008)

※コンプリしたい作家が増えた(^_^)(書評No747)

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by kotodomo | 2007-10-11 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(4)
2007年 10月 09日

◎「孤独なき地-K・S・P」 香納諒一 徳間書店 1890円 2007/3

b0037682_10472933.jpg 題名の意味はなんだろう?そんなことを思いながら読み進めた本書である。副題の「K・S・P」のほうは読み始めですぐわかるのだが(カブキチョウ・スペシャル・警察分署)、果たして「孤独なき地」とは?

 主人公は、歌舞伎町の無法を治める警察分署のチーフ。その主人公が、狙撃事件の犯人を追い、その裏に隠された陰謀を暴くという、極めてわかりやすい物語。では、なぜ、孤独なき地?

 休む間もなく職責を果たそうとする主人公。中国マフィアに、チーム内のコンタクト、新署長との確執、女キャリア刑事との二人三脚・・・まあ、最初から最後まで孤独になる暇なんてなかったので、そんなところからなのかな?

 全体としては悪くない、どちらかというと展開が早く面白い物語なのだが、積み残された設定に少し無責任さを感じてしまう読後感。

 果たして、新署長は悪者なのか善者なのか、切れ者なのか愚か者官僚なのか?署長が引っ張ってきた女刑事は、果たしてどういう立場の人物なのか?

 別の見方をすれば、きっと本書はシリーズ化を見越して出版されたのかも知れない。本書の続編が出たら・・・評者はきっと読むなあ。(20071002)

※もう少し、女刑事との間に色恋があれば、中年読者の評者は一層楽しく読んだだろうなあ。(書評No746)

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by kotodomo | 2007-10-09 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 10月 05日

富士山写真集第2弾

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by kotodomo | 2007-10-05 23:58 | メモる | Trackback | Comments(0)