「本のことども」by聖月

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2007年 11月 28日

◎◎「スワンソング」 大崎善生 角川書店 1575円 2007/8

b0037682_135652.jpg 最近の大崎作品では、精緻で透明度が高い文章は書き続けられていたものの、作品の完成度、高み、的な部分から見ると、イマイチ感が拭いきれなかった評者の読後感。本書『スワンソング』では、カチリと嵌りきらないエピソードのピースも、ひとつの文芸手法と捉えれば、全体に完成度というか、作者の表現したかったものが充分におさめられた恋愛小説と言えるだろう。ただし、展開に期待するなかれ。文体、ひとつひとつの文章の美しさ、行間を読むべし。感じるべし。『パイロットフィッシュ』のように自然に沁みてくる恋愛小説ではなく、読者が積極的に汲み取る恋愛小説である。

 しかし・・・こういう設定は嫌いだ(笑)。好きくない。白石一文の傑作デビュー作『一瞬の光』も同様に堪能しながら、その設定にいらいらした評者だが、本書の設定も『一瞬の光』と同様、素敵な女性と付き合いながら、病的で弱い女性に傾斜する主人公の心の在り方が理解しづらい。

 溌剌として洗練された女性と、ジャージ姿にコタツが似合うような決して清潔感を感じない女性とどちらが好み?って訊かれて、自分の容姿のレベルに合わせる必要もなくどちらかを選択できるのなら、誰だって間違いなく溌剌洗練だろう、大崎君!ついでに白石君!それを、文芸だからといって、主人公にジャージ女性を選択させるキミたちは偉いっちゃあ偉いが、読んでるほうはイライラするぞ(笑)。

 本書は、主人公が溌剌洗練女性を捨て、ジャージ女性を選択する極めて不健康な恋愛小説である。しかし、ベクトルは不健康なほうに向かいながらも、大崎の筆の洗練さがそれを補い、本筋とは関係ないエピソードたちが本編の深味を増していく。そして最後には・・・なんと言えばいいのかなあ。救い?光?パンドラの函の希望?そんなものがあいまって、物語の魅力を作り上げていく。

 もう一度言おう。展開に期待するなかれ。文章を読むべし、感じるべし。そして、この不健康な恋愛をそれぞれに感じたまえ。(20071123)

※評価◎◎は、今回のこの小説に対する作者の姿勢が素晴らしい!と勝手に評者が感じたからである。(書評No758)

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by kotodomo | 2007-11-28 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(2)
2007年 11月 27日

◎◎再読再評価「暗闇の中で子供」 舞城王太郎 講談社ノベルス 1200円 2001/9

b0037682_1041262.jpg どうも最近読書意欲がわかないというか、逆に言うと面白い本を厳選して読みたいっていうか、そんなこんなで4年半振りに本書『暗闇の中で子供』を再読してしまった評者なのである。う~ん、この頃の舞城って、こんなにパワーがあったのね。炸裂しまくり。そいでもって、ほとんど内容を忘れていたので、最初から最後まで楽しめてしまった評者である(^^)v

 忘れてしまったと言っても、何か違和感のある話だったのは記憶に残っていた。どこか読み間違いがあったっけ?という読後感があったのも覚えている。その違和感が何だったか、そこらへんも楽しみに読み始めて・・・そうそう、これこれ!!!Aに窒息死させられた人物が、途中からBに惨殺されたことになっている。間違いない!これだ!決して、当時の読み間違いではなく、作者の形而上的手法だと今回の読書で理解されたのことよ。スッキリ!

でも、これ以上、今更書くこともないので、以下は4年半前の書評の転載、再利用↓。

デビュー作『煙か土か食い物』を面白く読んだ時期に出向いた古書店で、本書に200円の値札がついているのを見て、なんの躊躇もなく買ったのはいいが、またしても200円で買った行為に満足したまま1年以上積読の状態であり、今回たまたま『阿修羅ガール』を図書館で借りることができたので、まあほんじゃ前後の関連などがあるといけないから、こっちを先に読みますか、などと軽い気持ちで読み始めたら…ブットンダ!炸裂してるね舞城。壊れているね主人公。踊っているね日本語。

実は評者、本書『暗闇の中で子供』を読んで後悔していることがあるのだ。全然知らなかったというか勉強不足だったのだが、本書はデビュー作『煙か土か食い物』の続編にあたるのである。評者も前作は面白く読んだので大体のところは記憶にあるのだが、細部について前作を踏まえたような記述に、前作ではどうだったんだっけ?と少し困ってしまったのである。じゃあ、前作めくってみればいいじゃん!と思うかもしれないが、図書館で借りて読んだ訳で、、、ということで、評者にとって本書はデビュー作より面白く感じたのだが、デビュー作を読んでいない方は、そちらを先に。そして、評者のように記憶が忘却の河に流れていかぬよう、早めに本書を読んでほしいのである。

前作に引き続き、奈津川家4兄弟(一郎、二郎、三郎、四郎)とその両親を取り巻く物語である。名前は陳腐(でも読者にとっては非常にわかりやすい記号でもある)だが、この4兄弟、身長は全員180cmを軽く超え、容姿も腕力も相当なもので、そして一番特徴的なことは知能が相当高いことにある。前作でも、主人公の四郎は連続殺人事件の位置関係の特徴を“すぐに”見破り、事件解決へと導いた。ここで大事なことは、“すぐに”理解する能力である。パズルを見て1時間も唸っているヤツの横を通りながら、一瞥して「それ~じゃん」と簡単に答えてしまう能力が大切なのである。

今回の主人公は三郎。四郎ほどその能力が高くないため、四郎に「まだ、わかんねえの。いや、教えない。自分で解けよ」と馬鹿にされながら、事件の解決に挑む。今回は、その事件やエピソードが多種多様、いわゆるモジュラー型の小説に仕上がっている。でも、最終的に解決をみない謎も残るので、続編もあるのかな?という気もするが。

事件、エピソード、謎自体も、今回はハチャメチャである。何度も腕に子宮ができてそこに身篭ってしまう少女の話、マネキン人形を自転車に乗せて頭に黒いゴミ袋を被せて埋めてまわる美少女の話、何かに見立てられているような連続猟奇殺人が多発するのだがなんの見立てか皆目見当がつかない話、寝ていたらお腹が切られていてまた縫われていて痛い話(そりゃ痛いわなあ)、昏睡患者が一瞬にして病室から消える話などが、オゲレツにエゲツナク、ゲログロな表現を伴なって描写される。え?そんな本なの、これって?そう、下品に破廉恥にリビドー的に描写される。え?下品なの?そう、その上ぶっ飛んでいる。まあ試しにお読みください。戸梶圭太や町田康の言葉の腕力に耐え、むしろ喜んだ覚えのある読者なら、琴線に触れること請けあい。評者は前半の部分で、そのしつこい面白さに随分吹き出してしまったぞ。

メフィスト賞受賞作とその続編。『煙か土か食い物』『暗闇の中で子供』この2冊は強烈なエネルギーと新しい文章作法を内包しており、爆発的な効き目がある反面、人によっては副作用が出るかもしれない。(20030525)
(20071122)

※こりゃあ、デビュー作『煙か土か食い物』も再読しなきゃ。パワーあるわ、昔の舞城。(書評No757)

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by kotodomo | 2007-11-27 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 11月 26日

◎「正義のミカタ-I’m a loser」 本多孝好 双葉社 1575円 2007/5

b0037682_1042237.jpg あのデビュー作『MISSING』の透明な文体、透明な物語はここにはない。本書『正義のミカタ』は、まったく別の抽斗、文体で書かれたコメディタッチの物語である。

 悪くない。笑うというより、オカシミを感じる箇所は随所に。物語の展開も、ひとつところに留まらず、思わぬ方向に発展していく。高校時代、いじめにあっていた青年主人公が大学にて転機を求める物語。大学で、高校時代のいじめっ子に遭遇するも、新たな救世主と出会い、仲間、同級生たちと、それなりの日々を送っていくが・・・。

 しかしなあ、悪くないが、いいよ、面白いよ、お薦めとも言い難い。色んなエピソードが置き去りにされ、終盤、最大のイベントも、なんでそういう方向に行くのか理解しがたい。蓋然性に乏しいのである。

 お気軽な小説として、楽しんだ評者だったが、終盤は、やや斜め読み。(20071114)

※このミスランクインはあるかな?(書評No756)

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by kotodomo | 2007-11-26 23:58 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
2007年 11月 22日

◎◎「虹の谷の五月」 船戸与一 集英社 1995円 2000/5

b0037682_055064.jpg 第123回直木賞受賞作にして、このミスランクイン作品に恥じない内容である。評者の積読本の中からの一冊。5年間積んでましたがな。何かオモロイ本はないかなと図書館で物色する日々。青い鳥は家の中にいたぜチルチルミチル。

 フィリピンが舞台の、少年の眼から語られる物語。3章からなる物語。少年しか、その行き方を知らない“虹の谷”の五月を、3年間、3章にして語られる物語なのである。

 虹の谷にはホセというゲリラ戦士が住む。少年を友人扱いしてくれるランボー的なゲリラ戦士。本書は、少年の視点から、そのホセとの交流や、村の描写、色んな事件が語られるのだが・・・。

 ホセの視点から見れば、迷惑な少年とも言える。この少年が虹の谷へ訪れる度に、災厄を引き込んでくらのだから(笑)。

 まあ、少年の視点で読みながら、たまにはホセの視点にも立ってお読みくださいな。重厚な物語ながら、設定的になんか笑えるみたいな(^_^)

 ひとつ、気になる点が・・・少年の視点で少年が語るという文体なのだが、呼びかけ言葉が気になるのである。普通に描写しているのに、“~だったんだよ”って、誰に呼びかけてるの?みたいな。

 直木賞?オモロイの?と思ってるそこのあなた!本書は直木賞の中でも、オモロイ本であるよ。読むべし。(20071112)

※当然、文庫本にはなっているが、上下巻あわせて1580円もするので、単行本を古書店で手に入れたほうがよろしいだろう。もしくは、図書館で。(書評No755)

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by kotodomo | 2007-11-22 23:58 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
2007年 11月 05日

◎◎「アルアル島の大事件」 クリストファー・ムーア 創元推理文庫 1260円 2006/3

b0037682_9273264.jpg 文庫で1260円ながら、コストパフォーマンス充分な物語である。書き出しがありきたりなので、読者は読み始めて、“ん?失敗したかな?”と思うかもしれないが。

 書き出し・・・主人公と、同行中のナビゲーターがどこかの島(?)の木に吊り下げられている場面。原住民と思しき男が現れ、“ヤム(旨そう)”と嬉しそうにしている。そんなどこかで観たような、読んだような場面から物語は語られるので、“買うほどの価値のある本か?”と思ってしまうわけである。

 そして、物語は、主人公がそこに至るまでの話に戻っていき、あとは時系列で、最初の場面もひとつの通過点として、その後の物語が紡がれていくのである。

 とにかく、コミカルな映画を観るようである。娼婦と空の上でチョメチョメの主人公、その職業はパイロット。パイロットとはいっても、旅客機とかのそれではなく、どちらかといえばプライベート飛行のパイロット。酔った勢いで娼婦とチョメチョメ飛行→ガス欠→着陸事故→入院→軟禁→逃亡→そんな感じと勢いで、なぜかアルアル島という人知れぬ島を目指すことに。実は、軟禁中に、その島より破格の扱いのオファーが届いたからである。島を目指すも四苦八苦。島の中でも四苦八苦。得体の知れないナビと行動をともにすることになったり、シャーマン族と交流せねばならんかったり、雇い主に対する不信感が募る反面、その雇い主の夫婦の夫とはゴルフを、妻とはチョメチョメをせんかればならんかったり・・・。

 いやあ、面白かった。文庫500ページ、一気読みの娯楽小説である。このミスのランク外にも一応顔見せの本書・・・エンタメ度は相当高いが、ミステリー性はゼロなので、まあ順当なところだろう。裏を返せば、このミスランク外にも、エンタメ度の高い作品が存在するということなのである。

 冒険小説は好きくない評者だが、こういう珍道中物語は好きよ(^_^)(20071027)

※(書評No754)

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by kotodomo | 2007-11-05 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 11月 02日

◎◎「おがたQ、という女」 藤谷治 小学館 1365円 2004/8

b0037682_10431519.jpg 最近、森雅裕をコンプリしようと見せかけている評者だが、実はこっそり、この作家のコンプリもたくらんでいるのである。

 しかし、この作家、近隣の田舎図書館には一冊も置いてないので、仕方なくAMAZONのユーズドにて取寄せ・・・う~ん、目をつけ取寄せただけあったぜ、ベイビー!

 でも、内容は全然書きたくないぜ、ベイビー。とにかく文章が凄い。濃密でいて透明感があり、奇想でいて自然さが溢れている。こういう文章を読みたかった。森見登美彦の文章が好きとか書いたことがある評者なのだが、藤谷文体に較べれば森見文体は幼稚園。藤谷は評者にとってのノーベル賞もの(^O^)/と、すべて個人的嗜好ですが(^^ゞ悪しからず。

 こういう文章を読むと、次にこの作家の文章を読むのも勿体ない気がするし・・・ということで、次は海外物に行きましょうかねえ。(20071027)

※全然、わけわからん書評ですんません。(書評No753)

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by kotodomo | 2007-11-02 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 11月 01日

◎「椿姫を見ませんか」 森雅裕 講談社 1000円 1986/3

b0037682_8352172.jpg 同様の設定(芸大学園物)のデビュー作『画狂人ラプソディ』のときも思ったが、いやあ、こんなに人が死んだらいかんのじゃないか、しかも同じ学園内で。教授は死ぬし、美人女学生は死ぬし、なんだか芋蔓式に死んじゃうし、みたいな。

 そいでもって、死ぬのはミステリーという世界の枠組みの中で仕方ないと容認しても、その動機が明かされたとき、そんな理由で殺さんど!と思うのは、評者だけなのだろうか?まあ、いいか。

 『画狂人ラプソディ』と較べたとき、本書の中には確立されたハードボイルドがある。男性主人公も、その相棒の女子学生もへらずぐちのタタキや。最初で小学生の男の子が登場するのだが、この子も中々にハードボイルド。大人顔負けの行動力もある。

 序盤、オペラ主役の華ある女子学生が舞台練習中に殺され・・・いかにもありきたり・・・その娘は実はある大人物の縁者で・・・いかにもありきたり・・・その謎を主人公と一緒になって追う娘も実は○○で・・・といったように、実に都合のいい話が展開していくのだが、まあその瑕も作者の筆の上手さの中に隠れるのかな。

 それはいいとして、気になるパズルのピースが置いてきぼり。物語の展開の中で、オペラの演者は実は他人の物真似も上手いことが判明・・・ということは、誰かが誰かの物真似をもってして騙るのかな?と思いきや、少し誰かが勘違いするだけで終わり・・・ってなんざんしょ。

 面白かったような、そうでもなかったような読後感。でも評価は◎。全体に上手くまとまった作品ではある。(20071027)

※絶版。AMAZONユーズドで467円だったなり。(書評No752)

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by kotodomo | 2007-11-01 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2007年 11月 01日

森雅裕のことども

b0037682_12402218.jpg  ▲ 『画狂人ラプソディ』
  ◎ 『モーツァルトは子守唄を歌わない』
  ◎ 『椿姫を見ませんか』
◎◎ 『さよならは2Bの鉛筆』

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by kotodomo | 2007-11-01 23:57 | メモる | Trackback | Comments(0)