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2009年 04月 30日

◎「インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも」 さくら剛 1260円 2006/6

b0037682_1028939.jpg 先に、最新作『三国志男』を読んで大爆笑していたので、本書の評価は◎止まり。いや、可笑しくてしょうがないのは変わらないのだが、『三国志男』では冒険の展開が次から次で、そこに新たな笑いが生まれてくるのだが、本書では“外国人観光客から少しでもお金を取ろうとするインド人”という構図のワンパターン化で、後半は可笑しみが薄れてくるからである。

 『三国志男』の書評の中で書くのを忘れたが、この著者の作品はブログ形式である。いや、ネット連載形式と言ったほうがいいか。本書も【ふりむけばインディアン】というネット記事を出版化したもので、本を読まずとも同じ内容がネットに掲載してあるので、お金を払ってまで買う必要はない。評者の場合も、図書館から借りたので無料・・・逆に本になったものより、ネットのほうが掲載されている写真が見やすいので、いったん読了された方も、是非ネットで読みなおしてくださいませのことども。

 とにかく、この本に出てくるインド人たち、可笑しいほどに観光客から金をむしり取ろうとする。自転車タクシーに乗って目的地を告げ、料金交渉をする。100ルピーで話がついて乗り込む。さあ、着いたぞ!ここはどこ?俺の知り合いの絨毯工場だ!なんで?まあ、買わなくてもいいから見るだけ見てってくれ!いやだ、早く目的地に行け!わかった、わかった・・・さあ、着いたぞ!150ルピーだ!なんで?100ルピーだったじゃないか!ゴニョゴニョ・・・そんな風に、いちいち金の話になってしまうのである。こういう話がバリエーションを変え延々と続くので、乗り切らない読者には少し退屈かもしれない。

 それを補うのが、インパクトのある写真群である。ネットのほうから写真を盗んでくるわけにもいかないので、是非【ふりむけばインディアン】でご確認をm(__)m

 とにかく、評者は、こういうお馬鹿な文章は大好きである。是非、是非、ネットでいいから御一読を。(20090429)

※こりゃあ、『中国初恋』も読まにゃのことども。(書評No880)

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by kotodomo | 2009-04-30 08:27 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 27日

◎◎「そうか、もう君はいないのか」 城山三郎 新潮社 1260円 2008/1

b0037682_837976.jpg 今年、正月明けに仕事の相棒と霧島にてビジネス合宿。途中からは飲食酔っ払い討論。あとは焼酎をひっかけながら、なんだかわからないテレビを眺める。この女学生役の娘、今後結構いけるんじゃない?ブレイクするんじゃない?って言ってたら、翌日嫁さんに確認したら、既にブレイク済みの長沢まさみってことだった。俺達、普段テレビ見ないし。田村正和、いつも何喋ってるかわかんねえし。ヴソボソヴォソ・・・今の田村正和のマネ、似てない?富司純子、俺ねえ、好き、この人好き。

 そんなことがあったのを、本書を読みながらの終盤に気づき、慌ててネットを検索。なるほど、あのドラマって本書『そうか、もう君はいないのか』のドラマだったのか。読書中、もう少し早く気づけよ、自分。

 実は、城山三郎初読みの評者なのである。だから、題名からして、城山三郎が亡き妻を綴った小説だとは思っていたのだが、その城山三郎自身が生きているのかどうかも知らなかった無知な自分で、最後に娘の文章で結ばれていたところから、やっと本書が未完の私小説だったことを知ったわけである。

 ボロボロ泣きながら読む自分を想像していたが、さにあらず。ただ、ただ、いい文章を読みましたという余韻のみ。思い出を綴り、思い出を語り、思いを綴っただけの文章なんだけど、いいんだなあこれが。

 新婚旅行のシーンで三島旅行という単語もいい。評者の住む鹿児島への新婚旅行。鹿児島、桜島、霧島・・・称して三島旅行と呼ばれていたことを、鹿児島で生まれて47年、初めて知りました。

 開高と大江の時代、そんな文壇の風景があったことも、私初めて知りました。今は、伊坂と東野の時代かな。(20090423)

※富司純子が好き、と発言したのは聖月様である。(書評No879)

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by kotodomo | 2009-04-27 08:37 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 26日

▲「幼なじみ」 佐藤正午 岩波書店 1575円 2009/2

b0037682_6423445.jpg デニス・ルヘインの『運命の日』上下巻二段組みを読んでいたら、読書が全然進まず、それもそのはず毎晩毎夜飲み続けながらの合間読書なので仕方なく、ならってんで薄そうな佐藤正午の本書『幼なじみ』でコーヒーブレイクと手に取ったら、な、な、なんと!15分で読み終わったではないか!っていうか、これ絵本だぞ!まあ内容的には子供が読みそうな物語ではないが、大人の絵本には間違いない。要するに、薄くて絵が多いわけで、15分で読めるわけだ。そんなのも知らずに、佐藤正午の最新刊♪と積読してたのだけど・・・う~む、コストパフォーマンス悪すぎ!315円のコーヒー代くらいのパフォーマンスだど。

 で、岩波書店は岩波書店なんだけど、「coffee book」なんて叢書タイトルみたいなのが表紙に書いてあるわけで、なんじゃらほい?と調べてみた評者。岩波書店のHPを見ると【ブレイクしながらコーヒーブック,わたしの愉しみマイブック,だれかに贈ってギフトブック,あたらしい本,生まれました.色んな味のコーヒーブックス,ほろにが・きもカワ・トキメキ・うめき・(笑)・(怒)・リアル・マジカル! 実力派小説家と気鋭の画家による花の競演シリーズ.おとなたちへ,とっておきのプレゼント】・・・???・・・つまりやっぱり大人の絵本シリーズってことじゃん(笑)。現時点で6作家による叢書のようだ、いや絵本シリーズか。

 で、評者の評価が悪くなったのは、薄いからではない。15分だからではない。佐藤正午らしさが、うまく出ていないからである。小説の名手である著者は、短編でも長編でも技工者なのだが、本書ではどうも中途半端なのである。冒頭の謎かけもうまく収斂しないし、過去に遡る物語の手法も、最終的にうまく落とせていないのである。ただ、文章が佐藤正午らしい透明感があるっていうだけなのである。

 幼なじみの女性の死。過去の記憶が2つ配置され、少しだけ二人の関係性が明かされる。そして、二人の小学校時代のシーン。巧いっちゃあ巧いんだけど、小説全体を見れば、う~む、なんだかなあ。これで1575円だと、絵の部分が1575-315=1260円みたいな感じかな。まあ、いいや。図書館から借りた本だし。(20090423)

※なんて、書きながら評者は佐藤正午は大好きです。(書評No878)

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by kotodomo | 2009-04-26 06:42 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 25日

◎「卵の緒」 瀬尾まいこ 新潮文庫 420円 2002/1

b0037682_647758.jpg なんだか、最近ブログに対する気力がなくなってきたような気がする評者である。これまでは、ブログ落ちする同好の士を横目に見ながら、別に落ちなくても細々続けてりゃいいのになんて思っていたのだが、最近はやめてもいいのかなあなんて気がするわけで、結局どういうことかというと、読書量は落ちてはいるが、面白い本は読んでいきたいなあという気力はある程度持続している一方で、読んだあと、それを文章に落とす気力が減衰してきているのである。

 かつては、読書しながら自分では面白いと思う記憶を喚起され、書いたれ!なんて、馬鹿分をダラダラ書き連ねることに孤独な歓びを見出していたのだが、最近はそれがないのである。はたして、人生も47年になろうとするところ、自分はもう燃え尽きて下り坂なのであろうかと考える日々。もしかしたら、本当にやめちゃうかもしれないが、そんときはごめんなさい。まあ、やめなくても、自分の墓標としてメモ書評として続けていく方向も、まだ捨ててはいないわけで、とにかく今は気力で書きますわ、うくく。

 ということで、やっと皆様お薦めの、瀬尾まいこのデビュー作を読みました。その後の作品ばかり読んで、今やっとデビュー作を読み、それを持ってこの作家の方向性を今更ながら語るのもおかしな話なのだが、結局、この瀬尾まいこという御嬢さんは“いい男の子”を描くのが得意と見た!!!って、さっきも書いたように、後の作品を読んでわかっているのだが、あえてもう一度言おう。この作家は“いい男の子”を描くのが得意と見た!!!

 いやあ、いい男の子を描かせたら本当にうまいや。未読の方には、いい男の子の意味がわからないかもしれないが、いわゆる“おりこうさん”。そして、性的にはあまりにもスマートでストレートな男の子なので、女性寄りの中世的な男の子(って書いて自分でも意味がつかめんが)ってなわけで、年上の女性には可愛がられるタイプと言えばいいのでしょうか。なんか、昔々の聖月様みたいです。

 本書には表題作「卵の緒」と「7’s blood」という2つの中編が収められているが、どちらの主人公(後者の方は準主人公だが)も“いい男の子”が主人公であり、性格は“おりこうさん”なのである。前者の主人公は、自分は拾い子だと固く信じて疑わない男の子、後者のほうは姉とはいいがたい姉と同居し始めた男の子の、その素養の良さを綴った物語である。

 評者も、その昔々おりこうさんだったので、もしかしたらこういう設定におかれたら同じように行動するのかも知らん。母親を愛し愛され、本当の母親じゃない母親を愛し愛されみたいに。

 中学生の少年少女には是非読んでいただきたい一冊。って、評者の娘も中学生なんだけど、もしこれを読んでいたらキミも読みたまえ。最近、ネットにハマっているようだし。パパはもうすぐ、ブロガーを引退するかもしらんから、そんときはよろしく。続きを書きたまえ。パパのハンドルネームは、キミの名前から取ったのだから。(20090413)

※私信:四季っぺ、読んだぜ!(書評No877)

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by kotodomo | 2009-04-25 06:47 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 15日

〇「黒百合」 多島斗志之 東京創元社 1575円 2008/10

b0037682_10392036.jpg 普通の小説として読むと、青春小説としてその静謐な文体が心地よい小説なのだが、過去と現在が織りなすミステリー小説としては???である。終盤驚くよという情報は仕入れて読み始めたので、騙されるように素直な気持ちで読んでいって、そろそろ騙される頃合いかな?なんてところで種明かしされて、それが自分の想像していたものと違ったとき、人は驚愕するものなんだろうけど、ああそうですか、そうだったんですか、だから?みたいな感想を持ったのは、評者が天の邪鬼だからでしょうか?

 表向きは、昭和27年の男二人、女一人、それぞれ14歳の、夏休みの青春のひとこま小説なのである。夏休みの六甲で出会った3人の少年少女。同性として異性としての若い感情の機微を描いた爽やかな物語。そこに挿入される、戦前、戦中の出来事。その過去に登場する謎の女は?若い恋は?そして現在における殺人の犯人と動機は?そこがミステリー部分なのだが、その真相が明かされたとき・・・物語の風景は反転はせず、評者はただ、ああそうだったんですかとしか言いようがないのである。

 でも、よ~く考えたとき、この真相と、二人の少年の父親同士の会話には、随分無理があるんじゃないかなあ。あると思うよ。(20090412)

※悪くはない。競って読むほどのものでもない。(書評No876)

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by kotodomo | 2009-04-15 10:41 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
2009年 04月 14日

◎「シャレのち曇り」 立川談四楼 ランダムハウス講談社文庫 750円 1990/3

b0037682_92475.jpg 将棋界の大崎善生、落語界の立川談四楼といったところだろうか。とにかく文章が上手い。また、その世界に散らばっているエピソードを、多岐に、そして過去に遡って拾い上げていくのだが、その羅列の仕方が絶妙である。う~む、と唸ってしまうくらい巧みなのである。

 本書『シャレのち曇り』は、落語家立川談四楼の作家としてのデビュー作だが、その内容は、自身を主人公とした落語界の内幕を小説仕立てにしたものである。ほとんどノンフィクションに近いかたちでのフィクション小説といってもいいだろう。

 落語協会での真打試験での混乱、それに端を発した立川流の独立、そして家元制度の内情、そういったものを織り交ぜながら感情移入せずにおれない、これはまさしくノンフィクションではなく、小説なのである。

 本書を読んでいると、将棋界の羽生善治のことを思い出さずにおれない。羽生と羽生世代の台頭は、将棋に興味ない人々の関心を集めたが、一方で地道に棋界で励んできた者たちの受難の到来でもあった。地道な努力を重ねて、さあこれから、そういうときに天才たちに席捲される棋界の中で、努力人たちは地に落ちていく。これまでの棋界がセスナ飛行でよかったのに、後ろから羽生世代がジェット飛行で通り過ぎていき、セスナの多くの人々が抜かされ地に落とされていったのである。

 この棋界の羽生が、落語界の春風亭小朝である。談四楼たちがセスナに乗って順調飛行していた後ろから、ジェット飛行で通り過ぎていったわけで、これが今も破られていない36人抜きの真打昇進記録なのである。まあ、天才だからと高をくくっていた談四楼たちだが、その後解せない真打昇進試験制度の弊害にあい、最後は師匠談志と落語協会を脱退し、新たな落語の在り方への模索の冒険が始まる。

 評者も記憶にあるのが、ビートたけしや高田史夫がなんだか知らんけど立川流の噺家に名を連ねていたことである。談志が家元制度という面白いことを始めた、くらいのニュースの表層しか知らなかった当時の評者。その裏では、落語協会の内紛というのがあっての、この面白制度の登場だったのである。

 談志が太鼓判を押す談四楼が、落語協会の真打試験に落ち、疲弊しきった協会に愛想をつかし、立川流を立ち上げ、家元制度を興したということなのである。

 しかし、本書はその内容より文体である。落語界の大崎善生こと(←評者の勝手だが)立川談四楼の流れるような紡ぐようなこの文体、どこか静謐さも相まって、う~む、未読の作品も全部読まなきゃである。(20090411)

※大崎善生が『パイロット・フィッシュ』から、完全なフィクションを書くようになったように、この人にもいつか普通の小説を書いてほしいものである。(書評No875)

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by kotodomo | 2009-04-14 09:02 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 04月 13日

◎◎「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女」上下 スティーグ・ラーソン 早川 1700円 2008/12

b0037682_1237374.jpgb0037682_12372924.jpg 評者が小学校5、6年生の頃、なんかエッチな言葉を口にするのが年頃的に流行っていて、今も記憶に残っているのが、ひとつは“かまきり婦人”。五月みどりの日活映画ポスターが、当時いろんなところに貼ってあり、なんかエロい印象があったわけで、“かまきり夫人”と口にすることで、「どうだ!俺は今相当エッチなことをいったぞ!」と胸を張れたわけである。なんと幼く可愛いツッパリであったことか。

 そして、もうひとつが“スェーデンポルノ”。なんかませたやつが仕入れてきた言葉で、みんな全然意味はわかっていなかったのだが、“ポルノ”なんて言葉より相当世間がわかっている大人が使う言葉のようで、“スウェーデンポルノ”と叫ぶだけで、当時はいっぱしの不良が気取れたわけである。ははは。

 そして、本書『ミレニアム1』は、スウェーデンの小説なのである。ポルノではないが、結局、読書中もしくは読み終えたときに、うーむ、フリーセックスの文化だから生まれた小説だなと、妙に納得する文化背景がそこにはあるのである。これが舞台が日本だと、なんでみんなこんなに簡単にセックスするんだ!作者が都合よくセックスさせてるだけじゃないか!みたいになるわけで、そこは本場“スウェーデンポルノ”が舞台なので、さもありなんで終わるとこができるのである。

 ところで、登場人物たちにヘンリック・ヴァンゲル、エディット・ヴァンゲル、リカルド・ヴァンゲル、ゴットフリード・ヴァンゲル、イザベラ・ヴァンゲル、マルティン・ヴァンゲル、ハリエット・ヴァンゲル、ハラルド・ヴァンゲル、イングリッド・ヴァンゲル、ビリエル・ヴァンゲル、セシリア・ヴァンゲル、アニタ・ヴァンゲル、グレーゲル・ヴァンゲル、イェルダ・ヴァンゲル、アレクサンデル・ヴァンゲル、グスタヴ・ヴァンゲルなんてのが出てくるわけで、どこかの感想を読むと“誰が誰だかわからない”なんて書いてあったが、心配することはない。途中で、このヴァンゲルは、あのヴァンゲルの叔母だっけ、従妹だっけ、なんて考えて読む必要はない。何も考えないで読んでいくと、必要な人物名は自然と入ってくるので、とにかく考えないで読むように。

 で、この作品の本質の話なのだが、すこぶる面白いエンターテイメントミステリーである。随分と昔、ヴァンゲル家の16歳の娘が失踪する事件があった。年老いたヘンリック・ヴァンゲルは、ヴァンゲル家の誰かが殺したのだと思っているが、それが誰なのかを死ぬ前に再度洗い出したいと考え、ジャーナリストのミカエルに、家族史の編纂という表向きの仕事を与え、捜査を依頼するのである。

 どこにでもありそうな出だしの設定なのだが、ミカエルの抱える現状、謎深きドラゴン・タトゥーの女の活躍、財閥ヴァンゲル家の不可解な歴史、そんなのが相俟って全体をハリウッド級の作品に仕上げているのである。ミステリーとしても、エンターテイメントとしても完璧である。すこぶる面白い娯楽小説である。読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!である。

 特に、物語終盤が素敵である。広げすぎた感のある風呂敷を丁寧に、それも読者の納得する形で畳んでいくところが読んでいて快感。島田荘司にこの作者の爪の垢を飲んでほしいものだが、実はこの作者、50歳で既に亡くなっている。ということは、『ミレニアム2』『ミレニアム3』は出ないの?と寂しく想像してしまいそうだが、総てを完成させて発刊前に心臓の病で亡くなったとのことで、なんとも惜しいものである。

 もう一度、終盤の収斂について触れるが、同様の終盤のテイストを持つ小説としては、最近では『数学的にありえない』アダム・ファウアーが挙げられるし、古いところでは『夏への扉』ロバート・A・ハインラインが挙げられるだろう。途中の何気ない伏線が、一気に収束していくあの快感である。
評者的には、次回のこのミス海外編の1位はこれで決まりである。これからも、どんどん面白い作品が出てくるとは思うのだが、他の作品が面白いからといって、比較して本書が下位にくるというような薄っぺらな小説ではないのである。本書の面白さは、本書の中にドスンと構えているのである。(20090405)

※NHKの週刊ブックレビューを見ない評者なので、中々児玉清に騙される機会は少ないが、それでもたまに雑誌の書評などで、児玉清には騙される傾向にある評者である。今回は、新聞書評の児玉清の記事に気になって、騙されたつもりで読み始め、序盤、騙されたかもなんていう気もしていたのだが、終わってみれば完璧楽しい読書でした。(書評No874)

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by kotodomo | 2009-04-13 12:41 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
2009年 04月 05日

2009年3月に読んだ本のことども(リンク:読書メーター)

3月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:1878ページ

三国志男 (SANCTUARYBOOKS)三国志男 (SANCTUARYBOOKS)
◎◎大爆笑、お気楽冒険記である。評者は、数多くの本を読んで大笑いしてきたが、本書ほど笑いが爆発した記憶がない。最初は、何ベタな笑いを誘う文章を書いてんの、くらいの感じで読み始めたが、途中から、こいつの文章やっぱ面白れえ!!!グハハってな感じで、箇所によっては20秒くらい笑いを押さえきれず、腹捩れ読書体験となったのである。とにかく事実に即しては書いているのだが、甚だしい誇張、妄想、自分に都合の良い解釈、そんなののオンパレードなのである。とにかく、この面白さを理解してもらうには、読めとしかいいようがない。読む
読了日:03月22日 著者:さくら 剛
オケ老人!オケ老人!
○本書で肝心なのは面白いかどうかもそうなのだけど、あの荒木源の作品だということが肝心なのである。あの荒木源とは、あの『骨ん中』という中々骨太のミステリーを書いた荒木源のことで、今度はどんなミステリーなの?なんて思って読み始めると、あらら、ということになるからである。つまり、本書『オケ老人!』は全然骨太でなく、お気楽物語なのである。どちらかというと軽薄なのである。あの『骨ん中』の作者が、ふ~ん、こんなの書くんだなあなのである。
読了日:03月21日 著者:荒木 源
チェーン・ポイズンチェーン・ポイズン
▲多分このミスランクインでしょう
読了日:03月16日 著者:本多 孝好
神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件神器〈下〉―軍艦「橿原」殺人事件
◎ミステリー風味に加え、SF風味、形而上風味、ハードボイルド風味、怪奇風味、男色風味他、色々なものが混ざり合った風味なんだけど、結局は、この作家、芥川賞受賞作家なわけで、なんだかんだいっても文学風味なのである。
読了日:03月16日 著者:奥泉 光
神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件神器〈上〉―軍艦「橿原」殺人事件
◎やはり、平成の夏目漱石と評者が勝手に呼んでいる奥泉光という作家は、高踏的に余裕的に巧い。知的なユーモアを内包した文章に、既存の文体に固執しない自由な筆遣いが心地良いのである。何箇所か、評者もウププと笑ったくらいである。
読了日:03月07日 著者:奥泉 光

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by kotodomo | 2009-04-05 20:10 | 読書メーター | Trackback | Comments(0)