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2009年 06月 21日

◎「ゴッドウルフの行方」 ロバート・B・パーカー ハヤカワミステリ 588円 1984/10

b0037682_18302674.jpg スペンサーシリーズの第一作目である。まだ、愛しのスーザンも出てこないし、強力な相棒ホークも出てこない。一作目だから、スペンサー初登場ということで、彼を取り巻く環境設定の話でもあるかと思ったが、そういうのもなくいきなりの事件である。要するに事件を通して、スペンサーの生き方、能力、魅力、そういったものを読者に伝えるわけで、それができるということは、やはり著者パーカーの力量というしかない。

 ところで、本書の紹介で多くの読書人たちが触れていることがあって、評者としてはあえて触れたくもないのだが(重要なことではないし)、でも触れないのも、その後のシリーズ作品でスーザンとの良好な関係を知ってしまった今となっては片手落ちのような気がするので、結局のところ触れるのだが、それは本書デビュー作でのスペンサーの親子ドンブリちっくな性に対する軽薄さである。

 要するに、本書の中で、スペンサーはある母娘双方と寝ちゃうわけだが、その後のシリーズで何事にもストイックな面を見せるスペンサーも、デビュー作での造形ではある意味甘ちゃんだったということである。依頼人の妻とその娘と寝ちゃうわけで、最近の作品のスペンサーからは考えられない行動哲学なのである。デビュー作ということで、まだスーザンというステディな関係の女性がいなかったとしても、今のスペンサーの行動哲学から考えたとき、依頼人の妻と娘とはまさか寝ないでしょうみたいな。

 まあ、それはさておき、邦題が原題の直訳にあたる『ゴッドウルフの行方』というのはいかがなものか。未読の読者は、ゴッドウルフを捜す話であろうとは想像しても、じゃあゴッドウルフって何?人物?動物?みたいな感じで読み始めて、それが古い文書の呼称だということがわかるわけで、だったら何か一般呼称(古文書だとか聖典?だとか)にしたほうがいいんじゃないのと思う評者は、勝手なお節介野郎なんでしょうか?

 と、ゴタクばかり並べてみたが、本書『ゴッドウルフの行方』はハードボイルドとミステリーの融合という観点からは、お手本のような物語であるし、シリーズ第一作という位置づけからすると、相当に完成度も高い作品である。原りょうの沢崎シリーズの初期作品と似たようなテイストといったほうがわかりやすいだろうか。

 ストイックな探偵とその哲学。謎の先にある謎の先にある謎たち。そして真相の果てに・・・ただなあ、あの奥さん可哀そうだなあ。いや依頼人の妻じゃなくて、最後あんなことになっちゃう、あの男勝りの体格の奥さん、可哀そうだなあ。(20090614)

※ということで、シリーズ5作品目にして、やっとシリーズ一作目を読んだのことども。スペンサーの出自みたいなのが、ほとんど語られていないことに、プチ驚き。(書評No893)
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by kotodomo | 2009-06-21 18:30 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
2009年 06月 15日

〇「師匠!」 立川談四楼 ランダムハウス講談社文庫 672円 2000/8

b0037682_9283644.jpg 立川談四楼の本や、愛川晶の神田紅梅亭寄席物帳シリーズを読んでいると、もしかしたら聖月様は落語好きなのかも知れないと思い、飛行機に乗っては全日空寄席を聴き、友人から落語CDを借りてみたりしたのだが、さほど面白いとは思わず、それ以上のめり込まなかったのに、やはり落語の世界を題材にとった物語は、相変わらず興味深く面白いのである。

 師匠と弟子の関係も、落語の世界を描いたら必ず出てくるモチーフなのだが、本書はそこのところを少しばかり中心に据えた短編集。泣き笑いなんでしょうか、苦労話なんでしょうか・・・読んでいると面白い、それでいて意外に余韻をひかない落語の世界の噺のことども。(20090607)

※新潮社から出た単行本のほうを図書館から借りて読んだが、ふ~ん、文庫は講談社からなのか。ここらへんの出版事情には疎い聖月様なのでした。(書評No892)
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by kotodomo | 2009-06-15 09:28 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 06月 12日

〇「真相」 ロバート・B・パーカー ハヤカワミステリ 882円 2003/7

b0037682_1193048.jpg スペンサーシリーズ、これで4冊目の評者なのだが、冒頭の展開は相変わらず一緒。シリーズすべてが全部こんな感じと推測していいのかどうかは未だわからないが、逆水戸黄門と呼びたくなってきたぞ。水戸黄門の場合は、物語の最後に印籠とお定まりなのだが、スペンサーシリーズのほうは、冒頭で美女依頼人が登場し、依頼をしたのはいいが、最後には墓穴を掘ることになるというところがお定まりなのである。

 その昔、銀行強盗事件に巻き込まれ死んだ母親、その母親を殺した人物を今更ながら見つけてほしいというのが、今回の美女依頼人からの案件。真相が徐々に明らかになってくるにつれ、もうこれ以上捜査はしないでほしいと願いだす美女依頼人。過去を明らかにすることにより自分のステータスを確立しようと思っていた美女依頼人は、意外な過去を知らされることにより、墓穴を掘ってしまうのである。

 ところで、美女依頼人を伴ってスペンサーの事務所を訪ねてきたのがポール・ジャコミン。評者の記憶のシナプスは、その時点ではスルー。色んな登場人物たちの会話からシナプスが繋がって、途中で思い出すはめに・・・あの『初秋』のポール君がこんなに立派になっちゃって。

 このシリーズ、どうやら過去の事件の登場人物たちが、その後のシリーズにも普通に出てくるようだ。現実世界では当たり前のことなんだけど・・・。例えば『ドリームガール』のエイプリルも3回目の登場であったし、『ポットショットの弾丸』で活躍した7人の侍たちも、過去のシリーズから友情出演みたいなことがあとがきに書いてあったし、そういう意味では、きっと1作目から読むのが正解なのかもしれない。『ポットショットの弾丸』で、老いのため衰弱していた名犬パールが、本書『真相』では死んだことになっていて、本書の中で二代目パールの登場が書かれているってことは、『ポットショットの弾丸』と本書『真相』の間に『笑う未亡人』という作品があるので、多分その中で死んじゃうことになるわけで、評者のような読み方をしていると、シリーズ全体に連なる時系列的な風景が断片になってしまうのである。まあ、いいか。後で頭の中で繋げていけば。

 ところで、本書の中身自体は、少し入り組んでいる分まあまあの面白さ止まりなのだが、巻末にある“スペンサーシリーズ私のベスト・ワン”という企画が面白い。実は本書『真相』はスペンサーシリーズの30作目という節目の作品であり、それにあわせスペンサーを愛する読書人たちが、短いコメントと共にベスト・ワンを挙げているのである。それを評者なりに集計したのが以下の結果。

 『初秋』10票 川本三郎(評論家)郷原宏(文芸評論家)菅原千代志(写真家)谷村志穂(作家)内藤陳(日本冒険小説協会会長)日色ともゑ(劇団民藝俳優)東理夫(作家)前島純子(コラムニスト)山本博(弁護士・翻訳家)渡辺祥子(映画評論家)
 『レイチェル・ウォレスを捜せ』7票 我孫子武丸(作家)池上冬樹(文芸評論家)香山二三郎(コラムニスト)佐々木譲(作家)中沢けい(作家)松坂健(ミステリ評論家・長崎国際大学教授)渡辺武信(建築家、映画評論家)
 『ゴッドウルフの行方』4票 東直己(作家)木村仁良(ミステリ研究家)関口苑生(文芸評論家)浜野サトル(編集者)
 『キャッツキルの鷲』2票 西尾忠久(エッセイスト)長谷部史親(文芸評論家)
 『ユダの山羊』1票 北川れい子(映画評論家)
 『虚空』1票 温水ゆかり(フリーランス・ライター)
 『笑う未亡人』1票 馬場啓一(作家)
 『失投』1票 林家こぶ平(落語家)
 『真相』1票 原りょう(小説家)
 『儀式』1票 藤田宜永(作家)
 『スターダスト』1票 細越麟太郎(映画評論家、フリー・ライター)
 『約束の地』1票 吉野仁(書評家)
 注:原りょうの『真相』への1票は、未読のまま本書を読みますみたいな感じなので、あてにはならないのことども。

 う~む、まずは『ゴッドウルフの行方』デビュー作を読まねば。そいでもって『レイチェル・ウォレスを捜せ』も早めに読みたい。『初秋』は既読で面白かったが、まだシリーズ4冊しか読んでいない評者ながら、私のベスト・ワンではないような気がする。よし、ベスト・ワンを探してスペンサーシリーズを読みまくるぞ!のことども。(20090606)

※投票の結果も面白いが、それぞれの肩書も興味深い。池上冬樹と吉野仁の肩書の違いはどこにあるのかな?(書評No891)

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by kotodomo | 2009-06-12 11:10 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 06月 03日

2009年5月に読んだ本のことども(リンク:読書メーター)

5月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:2835ページ

ポットショットの銃弾 (ハヤカワ・ノヴェルズ)ポットショットの銃弾 (ハヤカワ・ノヴェルズ)
〇難点は会話の口調。会話の口調。スペンサーや、その他大勢のタフガイたちが“~なのだ。”と会話を締めくくるのだが、あまりの多用にバカボンのパパが大勢で会話しているようでいただけない(笑)。特に7人が集合してからの後半部分では、7人が一堂に会して“~なのだ”と喋ってしまうので、誰が喋っているのか判然としない部分があるし、みんなでバカボンのパパごっこをしているのですか?と本に向かって問いかけてしまいたくなるほどなのである。
読了日:05月31日 著者:ロバート・B. パーカー
ばかものばかもの
〇絲山秋子。好きな作家だが、性的な描写が出てくる作品は、どうもいまひとつ面白くない。結局、性的な描写が物語全般と結びつかないからだろう。作家として、こんなシーンもドロドロに描けますという主張にしか思えなく、本当のこの作家らしさからかけ離れているように思えるからである。
読了日:05月26日 著者:絲山 秋子
中国初恋中国初恋
〇題名とは全然違った内容。著者が女の子絡みで中国に行こうと思い立ち、ただ中国に行くのも芸がないなあなんて思って、南アフリカから中国まで向かうという、なんともお馬鹿な企画ノンフィクションである(笑)
読了日:05月25日 著者:さくら 剛
こうふく みどりのこうふく みどりの
◎あとがきによると、著者は本書『こうふくみどりの』を執筆しているときに別の着想を得、並行しながら対になる『こうふくあかの』を書き上げたらしい。らしい、というのも、普通西加奈子ファンなら読む前に知っていそうなことだが、最近、読書家とも呼べなくなってきた評者の読書周辺のアンテナはヘタレで、本書もただ図書館に並んでいたから借りてきただけで、読み終えてから気づいた話なのだが、まあそんなの知らんでも、本書は充分面白かったのことども。
読了日:05月20日 著者:西 加奈子
ミスター・ミー (海外文学セレクション)ミスター・ミー (海外文学セレクション)
〇書痴という言葉を、本書の紹介記事で初めて目にしたが、本書『ミスター・ミー』は、本狂い(書痴)の80歳代の好々爺物語である。だけではなく、作中作と言える二人のお馬鹿な転書屋(翻訳屋)の物語と、もうひとつジャン・ジャック・ルソーに傾倒する大学教授の物語の、3つの要素からなっている。
読了日:05月19日 著者:アンドルー クルミー
ラジ&ピースラジ&ピース
◎◎題名は、独身主人公女性の受け持ちのラジオ番組名。主人公は、いわゆるパーソナリィティってやつですな。皆さんのお便り読んで、感想言ったり励ましたり、恋の作法を伝授したり・・・でも、素顔の本人は、随分と人嫌い。そんな材料でも、絲山秋子にかかると、こんな素敵で人間味のあるドラマに・・・まあ、読んでみなさい。
読了日:05月18日 著者:
初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)
◎◎主人公のスペンサーはハードボイルドな(というかタフな)探偵である。今回は探偵業が話の発端になってはいるが、中身の多くは探偵話には割かれていない。スペンサーというタフな男と、ポールというヤワな少年との心の交流(最初通いあわないものが、最後にはという、いかにものパターンだが)が、物語の中心を成しているのである。
読了日:05月17日 著者:
ドリームガール (ハヤカワ・ノヴェルズ)ドリームガール (ハヤカワ・ノヴェルズ)
◎◎多分、パーカー好きの読者には、同じシリーズの中でも出来、不出来みたいな評価があるとは思うのだが、とにかく初めて出会ったスペンサーの生き方に惚れぼれした評者なのである。決定(^O^)/スペンサーシリーズ読破を目標に生きていこう。生き延びていこう。老眼が進もうとも、外人さんの名前が区別しづらくなったとしても、読む手が震えるようになったとしても、何としてもこのシリーズは読破するぞ!・・・と、今は思うのことども。
読了日:05月06日 著者:ロバート・B・パーカー
ディスカスの飼い方ディスカスの飼い方
◎◎本書『ディスカスの飼い方』で、大崎善生の村上チャイルド系譜はお終いで卒業と評者は評価したい。大崎節の完成である。多分、大崎善生は直木賞に縁のない作家だと思うのだが、こういう完成された物語に受賞してもらい、多くの人に読んでほしい、そんな作品に仕上がっているのである。
読了日:05月05日 著者:大崎 善生
運命の日 下 (3) (ハヤカワ・ノヴェルズ) (ハヤカワ・ノヴェルズ)運命の日 下 (3) (ハヤカワ・ノヴェルズ) (ハヤカワ・ノヴェルズ)
◎◎本書の一番の魅力は・・・心底、嫌な奴が2名登場することじゃないだろうか。黒人を人間とは思っていない警官が一人と、末端の警官のことを全く理解しない警察組織の本部長と合わせて二人。いやあ、読んでいて、嫌で嫌で仕方なかった評者なのである。でも、この二つの障碍が物語全体のリーダビリティを支えているのである。ルヘイン、天晴れである。
読了日:05月04日 著者:デニス・ルヘイン

読書メーター


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by kotodomo | 2009-06-03 09:10 | 読書メーター | Trackback | Comments(0)
2009年 06月 02日

〇「ポットショットの銃弾」 ロバート・B・パーカー ハヤカワミステリ 882円 2001/7

b0037682_15322275.jpg スペンサーシリーズ「七人の侍」もしくは「荒野の七人」という趣の本書である。ただ、評者的に残念なのは、スペンサーが加勢を頼んだ6人が、過去のシリーズで活躍した人物たちらしく、その過去の活躍を知っていれば、もっと楽しめたかもしれないというところである。

 冒頭に依頼人美女が出てくるのは、このシリーズまだ2作しか(『ドリームガール』『初秋』)読んでいない評者だとしても、3作中3作ともそうなので“お決まりの冒頭から始まる”と言っても、あながち間違いではないのかもしれない。そのお決まりの冒頭での依頼人美女の依頼内容は、自分が住むポットショットの町が無法者たちのいいようにされている。自分の夫も、その無法者たちに殺された。是非、その犯人を突き止めてほしいというものである。

 そして、ポットショットの町に出向いたスペンサーは、自分が相手すべく者たちの数が約40名であること、それと同時に全員を排除すべき別の依頼を受諾する。そして、7人の侍を揃えるべく、各地に出向いていくのである。

 全体、ロバート・B・パーカーらしいタフなハードボイルド小説に仕上がっていてそれなりに楽しめるのだが、具体的な難点がないわけではない。

 まずは、会話の口調。スペンサーや、その他大勢のタフガイたちが“~なのだ。”と会話を締めくくるのだが、あまりの多用にバカボンのパパが大勢で会話しているようでいただけない(笑)。特に7人が集合してからの後半部分では、7人が一堂に会して“~なのだ”と喋ってしまうので、誰が喋っているのか判然としない部分があるし、みんなでバカボンのパパごっこをしているのですか?と本に向かって問いかけてしまいたくなるほどなのである。

 このシリーズ、翻訳者が固定していないので、訳者の技量?とも思うのだが、本書の訳者菊池光氏は評者が既読の『初秋』の訳もしており、『初秋』のときはそんなことはなかったわけで、そういう意味では理由がわからない。多分、翻訳時に天才バカボンのアニメの再放送を楽しみにしていたとか、パチンコ天才バカボンにハマっていたとか、そんなところの単純な理由であるのだろう。

 もうひとつの難点は、7人の侍を集めて戦闘の準備をするまでの間に多くのページを費やしており、展開の妙のないまま最後の決戦まで持たせておるところである。まあ「七人の侍」や「荒野の七人」にしても、それぞれに特徴のある七人が揃うまでに物語の妙はあったようなあやふやな記憶があるが、それにしてもあちらは映像であって、こちらは文章で読まされるわけで、そういう意味ではちょっと退屈な感じがするのである。それでも、端的な文章、端的な章立てのおかげで、読みにくさはないのだけどね。

 結局、最後まで読んでの一番の疑問は、冒頭の依頼人美女がなんでスペンサーのところに依頼に来たのかがわからないのである。こういう結末を少しでも想像する力があるなら、決して依頼にこないと思うのだがなあ・・・って、そういえば『ドリームガール』の依頼人美女エイプリルも同じだし、『初秋』の母親にしても・・・。

 まだ、シリーズ3作しか読んでいないところだが、冒頭に依頼人美女が現れ、結局墓穴を掘るというのが、このシリーズのパターンなのかどうか興味深々というところである評者なのだ、なのだ、なのだのことども。(20090531)

※パーカーは図書館で借りたい放題なので、どんどん追っていこう。(書評No890)

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by kotodomo | 2009-06-02 07:29 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 06月 01日

〇「ばかもの」 絲山秋子 新潮社 1365円 2008/9

b0037682_8423581.jpg 最近、会う人会う人、同じことを訊いてくる。どうされました?・・・

 なぜかというと、最近の評者、マスクをしているからである。で、こういう風に答える・・・“流行りだから”・・・すると相手はこう返してくる。“鹿児島ではまだみたいですけど、本当に今回の豚インフルエンザは・・・”そこで評者はこう切り返す。“いや、その流行りじゃなくて、東京や大阪で流行っているファッションだから。いわゆるモードだから。つまり都会のファッションの先取りっていうか・・・”嘘である。

 しかし、マスクをしているっていうのは本当である。実は先週末、東京出張を終えて夜遅くに自宅へ帰ってきたら、無茶苦茶暑かったのである。寝ようと思ったら、暑い暑い暑い。だから、Tシャツに短パンで窓を開け放して寝たのである。そして、朝起きたら喉が痛い。言わんこっちゃないである。翌日まで様子を見たのだが、どうも回復の兆しがない。それで夕方病院へ出向いたら、入口にこんな貼紙が・・・「次の症状の方、熱、咳、喉の痛み、鼻水・・・は、院内に入らずに、次のお電話番号に・・・」・・・要するに、豚インフルエンザ野郎は無闇に入ってくるな!と書いてあるのである。無視して受付へ。診断。風邪ですなあ。お薬出しときましょうなんて医者に言われて、帰宅して飯喰らって、眠ろうとしたら、どうもきつい。病院では37.2度だった熱が、なんと39.3度(@_@;)眠れない夜を過ごし、朝嫁さんに状況を話したら・・・いきなり豚扱い。じゃあ、子どもたちのご飯とパパのご飯は別々っていうことで。パパの行動エリアと私たちの行動エリアは別々っていうことで。そういうことで、早く医者に電話して入院しなさいなんて、血も涙もないようなことを言われ医者に電話した評者。“熱があがってきて、下がらんのですが、今流行りの発熱外来なんてとこへ行ったほうがいいのでしょうか?”意外な答えが返ってくる。“あんた渡航歴ないんでしょう。外国行けない貧乏人なんでしょう。普通に再診だよ。”いやな言い方されたが、なんか貧乏でよかったという気がしないでもない、などと思いながら風邪ということで落ち着いたのである。今では、熱も下がり、多少回復はしてきたのだが、咳が止まらないわけで、そういうわけでマスクの日々なのである。だから、会う人会う人同じようなことを訊いてくる日々が少し鬱陶しく過ぎていく今日この頃なのである。

 で、この話が本書『ばかもの』とどういう関係にあるかというと、無関係という関係にある。しいて関係性を見出すなら、馬鹿は風邪をひかないという言い回しが、風邪とばかものという題名を結びつけるくらいか。

 絲山秋子。好きな作家だが、性的な描写が出てくる作品は、どうもいまひとつ面白くない。結局、性的な描写が物語全般と結びつかないからだろう。作家として、こんなシーンもドロドロに描けますという主張にしか思えなく、本当のこの作家らしさからかけ離れているように思えるからである。

 主人公青年と額子という女性の結びつきから物語は始まり、酒に溺れる青年のその後が描かれ、終盤額子と再会し、結果的には救いの物語みたいな体裁なのだが、いかがなものでしょう?同じ骨子で、この作家なら、もっと別の絲山秋子物語が書けたんじゃなかろうか?

 そんなことを思いながら、多分今夜も咳きこみ、明日からまた東京出張なのでマスクをして飛行機の中で咳きこみ、隣の叔母はんに嫌われるのだろうなあと想像する評者の日々は前途多難?(20090526)

※『海の仙人』と比較しての論評も散見されるが、評者的にはまったく別物。(書評No889)

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by kotodomo | 2009-06-01 08:42 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 06月 01日

絲山秋子のことども

b0037682_9105493.jpg  ◎ 『イッツ・オンリー・トーク』
◎◎ 『海の仙人』
◎◎ 『袋小路の男』
◎◎ 『逃亡くそたわけ』
  ▲ 『ニート』
  ◎ 『沖で待つ』
◎◎ 『絲的メイソウ』
  〇 『エスケイプ/アブセント』
  ▲ 『ダーティ・ワーク』
◎◎ 『ラジ&ピース』
  〇 『ばかもの』

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by kotodomo | 2009-06-01 05:00 | メモる | Trackback(10) | Comments(0)