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2009年 08月 21日

▲「新世界より」上下 貴志祐介 講談社 上下各1995円 2008/1

b0037682_9112170.jpgb0037682_911378.jpg 先週、8月11日の早朝、評者は綾瀬発5時の千代田線に乗車。随分と早いなあとお思いでしょうが、実はその日の夕刻に飛行機で東京から鹿児島へ帰るつもりだったのだが、前日から台風の動きが怪しい。で、もし台風の影響で乗れなかった場合を考えたとき、翌日12日以降はまっぽしお盆のフライトということで各便とも満席状態。意味もなくお盆の期間を家族と離れて東京で過ごさねばならんし、多分ホテルなんかもほとんど取れないだろうから、相当に困ってしまうわけで、それなら予定の飛行機が飛ぶ飛ばないにかかわらず、朝のうちに東京を脱出しようと、朝5時の綾瀬駅出発だったのである。

 綾瀬駅は地上駅だが、そこからは北千住、町屋と地下鉄になるわけで、地下トンネルを走っていたら・・・“電車が急停車します。お気をつけください!”のアナウンスと同時に急停止。何事かと思ったら“間もなく地震がきますので、お客様はしっかり近くの吊革等におつかまり下さい!”のアナウンス。えっ!なんで地震が来るのがわかるの?この電車の運転手と車掌は予言者?超能力者?なんて思っていたら、電車がユッサユッサ(@_@;)黙ってキョロキョロする乗客たち(自分含む)。評者は、意味もわからず、この予言者たちが言ったとおりに地震が来たわけで、予言できるほどに大きい地震かもしれん、このまま地下トンネルが崩れて、自分は死ぬのかなあ、なんて思っていたらほどなく地震もおさまり安堵&安堵。で、電車は動き、空港にも着き、飛行機は飛び立ち、鹿児島の自宅に戻り、嫁さんが“静岡の地震でさあ・・・”なんて言うのを聞いて、初めて静岡で震度6の地震があったことを知ったわけで、つまり何ゆえ電車の乗務員が予言者になりえたのかを知ったわけなのだが、詳しいことはわからないけれど、静岡で地震があった場合に首都圏の交通機関に通報がいくシステムがあるらしいということを経験として知った8月11日の出来事だったのである。

 ということと、本書『新世界より』とどういう関係があるのということになるが、基本的にはまったく無関係(笑)。あえて関連付けるなら、この物語の中では、評者が使った地下鉄も過去の遺物となっており、下巻の終盤では、この地下鉄という地下通路が人間と悪鬼の戦いのステージとして見せ場になることくらいかな。

 舞台はどのくらい未来かわからない未来の日本。そこに住む者たちは呪術者(超能力からテレパシーと予言を抜き取ったような感じ)であり、自分たちの住むエリアの外は魑魅魍魎というか跳梁跋扈というか、過去の日本が異常に育った世界が広がる。

 で、そこから作者の想像力、創造の世界が紡ぎだされるのだが・・・どうもいかん。こういう小説は、やはり評者には合わないようである。一言で言えば、SF少女小説漫画風。変な言い方すれば、子供の寝物語に、枕元で母親が話を紡いでいるような、中々理路整然と話を紡ぐ母親ながら、やっぱ終わってみると話が行き当たりばったりであった感は否めない、そんな内容の物語なのである。

 せっかく上巻を制覇したので、下巻は我慢して最後まで付き合ってしまったが、読破達成感を感じないこの読後感はなんざんしょ?巷の評判は高いっていうのにさ。(20090819)

※『シャングリ・ラ』『テンペスト』を途中で投げ出した評者なのだが、あのときと同じ感じのことども。(書評No905)


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by kotodomo | 2009-08-21 09:12 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 20日

▲「遠い響き」 藤谷治 毎日新聞社 1785円 2009/4

b0037682_1050974.jpg 藤谷治が安部公房風に『燃えつきた地図』を書いたら、こんな風になりましたというような感じの物語である。要するに、作風の抽斗としては評価できるのだが、内容はなあ、イマイチなあ。

 猛烈な台風の吹きすさぶ多摩川で出会った奇妙な男。その男の奇妙でダラダラした話を、主人公夫婦が聞くだけの話である。破天荒でも面白い話ならいいのだが、破天荒で奇天烈なだけであって、結局、夫婦も読者も飽き飽きしながら聞かされるのである。

 小説テクニックを考えれば、評価できなくもないのだが、読書の楽しみという点ではお薦めできない藤谷作品なのである。(20090809)

※買うほどの本ではないのは事実。(書評No904)


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by kotodomo | 2009-08-20 10:50 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 20日

◎「任天堂 “驚き”を生む方程式」 井上理 日本経済新聞出版局 1785円 2009/5

b0037682_10191376.jpg かねがね任天堂って凄いなと思っていた評者なのである。京都の花札屋だったものが、今や世界のゲームメーカーである。凄い転身・・・と思っていたら、本書を読むと、いきなりの転身でないことがわかる。

 花札屋と書いたが、トランプも作っていたわけで、日本で初めてのプラスティックトランプを作り大ヒットさせたのも任天堂である。覚えてます。覚えてます。これまでのトランプは、すぐよれよれになったり、中にはクセがついて何のカードかすぐわかるようになってしまったりで、そんな中で初めて手にしたプラスティックトランプは画期的でしたなあ。

 レーザー光線銃を大ヒットさせたのも任天堂・・・覚えてます。覚えてます。近所の友達が持っていて羨ましかったもの。勿論、遊ばせてももらいましたが。

 遠くのものが取れるウルトラハンドも任天堂。名前は忘れたけど、家の中でピンポン型バッティングセンター装置、あれも任天堂だったのですね。懐かしいなあ。

 ということで、ずっと子供を見てきた任天堂の凄さを書いた本書。最近では奥様をターゲットにしてるって、ホントに驚き。確かに我が家にもWii Fitがあるけれど、他のゲームと違って、嫁さんも楽しんでいるものなあ。(20090805)


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※勉強になりました。我が社も大変身せんやろか。(書評No903)
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by kotodomo | 2009-08-20 10:19 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 20日

〇「恋文の技術」 森見登美彦 ポプラ社 1575円 2009/3

b0037682_9423183.jpg 森見登美彦お得意の、同場面繰り返し小説である。技巧的には巧いのだが、視点を変えても同じ場面の描写には変わりなく、最初のうちは面白い感じもしなくもないのだが、途中からはどうしても飽きてしまう評者なのである。

 仲間同士の文通を通じ、お互いの近況を語りながら、それぞれの恋愛事情を綴っていく、そういう形式の物語である。

 終盤、同じ日付で、差出人はそれぞれ違いながらも、同じような内容を書いた手紙が飛び交うが、この部分は読み間違い要注意。そんなこと偶然にもあるわけないわけで・・・ということは(^.^)(20090731)

※森見登美彦・・・嫌いじゃないけど、そう好きでもない、評者にとっては変な作家。(書評No902)


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by kotodomo | 2009-08-20 09:42 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
2009年 08月 19日

◎◎「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」上下 白石一文 講談社 上下各1680円 2009/1

b0037682_11442596.jpgb0037682_11443855.jpg 白石一文フリークの評者としては、早く読まねばならん!などと思っていたら、第22回山本周五郎賞を受賞、評価が固まったのかと思って色んなところを覗いてみると、やはり好悪が分かれているようで、白石一文の哲学をどう楽しめるかで読書人の評価が違うようである。評者は好き♪

 また、本書の場合、各所に知的雑学が散りばめられており、そこのところも評者の好み。粗筋は、あるようでないような・・・出版社に勤める主人公の人生力学、ライフバランスを描いた作品である。普通でいえば、危うい主人公の生き方。それを通してのフィロソフィーが、多分読者を選ぶのかもしれない。

 著者自身、文藝春秋に身を置き、パニック障害で退社した過去があるので、ある意味、自己投影色の強い作品なのかもしれない。(20090726)

※構成の妙に唸るものがありまっせ。(書評No901)


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by kotodomo | 2009-08-19 11:44 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 19日

◎「レイチェル・ウォレスを捜せ」 ロバート・B・パーカー ハヤカワ文庫 777円 1987/2

b0037682_10592416.jpg いやあ「本のことども」を始めて900冊ですか・・・最近は、なんだかブログ自体をやめる気配があった聖月様なのですが、やっぱり本は読んでいるわけで、今現在、短評などという姑息でお下劣な手段をとりながら、なんとか続けようとしているわけです。

 以前にも書いたことはあるのですが、ここまで来ると墓標みたいなもんですから、やっぱ頑張ろうかと思っちゃうところはあるのですよ。

 さて、記念すべき900冊目は1987年発行のスペンサーシリーズ6作目『レイチェル・ウォレスを捜せ』ということになりました。シリーズ30作目の『真相』の巻末の人気投票で『初秋』に次いで第2位ということなので気になっていたのですね。

 中身はというと・・・レイチェル・ウォレスを捜すんですな、題名通り(笑)。で、多分、なんで人気投票の上位になったかと推測すると、序盤のレイチェルとスペンサーの関係性や会話が興味深いからじゃないでしょうか。ウーマンリブの同性愛者レイチェルということで、ハードボイルドなスペンサーと噛み合うわけがないところを、仕事をともにする(っていうか、スペンサーがボディガードを引受けて同行)わけですから、そこんとこがオモロイわけなのですな。

 でも、中盤でレイチェルが行方不明になっちゃうわけで、そこから二人のやり取りが不在になるわけで、そういう意味で評価は◎止まり。ただ、22年前の作品ながら色褪せてない面白さは内包してるんですな。(20090719)

※って、一体どこのどなたの文体をマネしたのか、自分でも不明(^^ゞ(書評No900)


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by kotodomo | 2009-08-19 11:01 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 19日

◎◎「灰色の嵐」 ロバート・B・パーカー 早川書房 1995円 2009/6

b0037682_10152454.jpg スペンサーとスーザンが出席することとなった、とある島での結婚式。そこが灰色の男(グレイマン:シリーズで過去2回登場したらしいが、評者はその作品は未読)率いる戦闘服軍団に乗っ取られ、おまけに都合のいいことに嵐も吹きすさび、文字通り絶海の孤島でのダイハードが始まる緊張の前半。

 花嫁がさらわれ、その背景をスペンサーが探りだす、中だるみの中盤。

 そして『初秋』のような何か温かな光が感じられる終わり方・・・。

 結局、最初と最後が読ませるならば、いい本だったなあと感じさせるお手本のような物語。今年のこのミスでランクインもありかと・・・でも、パーカーだからなあ。このミスの世界では、あまりファンがいなさそうだし・・・。(20090711)

※前作『昔日』よりはワンランク上。(書評No899)


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by kotodomo | 2009-08-19 10:17 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 19日

◎◎「赤めだか」 立川談春 扶桑社 1400円 2008/4

b0037682_9474135.jpg 噂に違わない面白本の一気読み体験(^.^)立川流に入門した談春のこれまでを自ら綴っただけの話なのだが、さすが立川流、毎日が面白おかしく厳しくて、楽しいながらに真剣さひたむきさが伝わってくるのことども。

 立川談四楼の本を何冊か読んできた評者なので、立川流の内幕は知っていたのだが、筆を談春が握って描けば、そこはまた別の一面が浮かんでくる。

 とにかく読んでくれとしかいいようがない・・・そういう一気読み本なのである。(20090704)

※立川流、弁も立つが筆も立つねえ。巧いねえ。(書評No898)


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by kotodomo | 2009-08-19 09:48 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 18日

〇「やんごとなき読者」 アラン・ベネット 白水社 1995円 2009/2

b0037682_16203883.jpg “やんごとなき”という言葉の意味も色々あるのだが、本書の場合は“地位や家柄等が一流である高貴な”読者という解釈が一番合いますかな。だって、英国女王なんだから。

 特に読書に喜びを見出していない人物が本にのめり込んでいく面白さ、超上流階級ならではの束縛と自由さのバランス、そんなところが本書の読みどころ。

 ただ、巷の評判ほどにはリーダビリィティがなかったのことども。(20090704)

※薄くてサラリと読めますよ。(書評No897)


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by kotodomo | 2009-08-18 16:21 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 08月 18日

◎◎「商人(あきんど)」 ねじめ正一 集英社 1890円 2009/3

b0037682_15593181.jpg ミステリーとかは年末に総括されるので、おおよそ面白い本の読み逃しはないのだけれど、この手のノンジャンルな普通小説は旬を過ぎると中々総括されないので、そういう意味で、評者的には今年の押さえ本だよと言っておこう。

 ノンジャンルとは書いたが、あえていうなら時代小説・・・江戸時代、鰹節の商人の次男として生まれた主人公の、鰹節ライフを描いた物語である。ただそれだけである。

 それだけなのに、読ます、読ます、読ます!人によっては書き込みに深みを感じないかもしれないが、逆に淡々とした筆の運びがいいのです。

 やっぱ、ミステリーだけじゃなくて、こういう本も読まなきゃなのです。(20090701)

※初ねじめ正一でした。よかったです。(書評No896)


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by kotodomo | 2009-08-18 16:00 | 書評 | Trackback | Comments(0)