「本のことども」by聖月

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2009年 11月 19日

◎◎「悪党が見た星」 二郎遊真 講談社 1575円 2009/2

b0037682_8424383.jpg 今年読んだ小説の中で、一番リーダビリィティが高かったのではないかな。デビュー作のメフィスト賞を受賞した『マネーロード』は未読の評者。どんな作風かも知らずに読み始めたのだが、テンポの良さにまずは満足。そして、終盤の二転三転、散りばめられたピースの収斂に、少し安易さは感じながらも、その丁寧な姿勢に満足感を覚え、久々の◎◎評価の読書であったのことよ。

 まずは主人公。服役中に、脳神経にある細工をされた極道である。その主人公が、ある誘拐事件に絡み、その身代金6000万を横取りしようと画策するのが、物語の大筋。また、その誘拐事件(結局は狂言なのだが)を起こした劇団の真意が、本気だったのか、単なる頼まれ実験だったのか、そんなところがサイドの物語。結局、全体像のはっきりしない狂言誘拐事件の合間に、身代金がすり替えられるわけで・・・。

 とにかく何よりテンポのいい物語。最初のうちは、底の浅いライトノベルな感じも否めないが、途中からは先への展開への興味が勝る、チャッチャッチャッとした舞城デビュー作『煙か土か食い物』を彷彿させる機関銃連射が小気味いい物語なのである。

 今年さほど国産ミステリーを読んでいない評者なのだが、レベル的にこのミスランクイン問題なしの作品評価である。デビュー作を読むかどうかはわからないが、この作家の今後の作品は、2、3作は読み続けるだろうなのことども。(20091109)

※久々にメフィスト賞作家の本を読んだらグッドだったのことども。(書評No928)

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by kotodomo | 2009-11-19 08:43 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 18日

〇「線」 古処誠二 角川書店 1680円 2009/8

b0037682_9494056.jpg 多分、この作家、大戦末期シリーズ(『ルール』以降の作品を、評者は勝手にそう読んでいるのだが)を書き続けるために、色んなところで取材を重ねていると思うのだが、本書は、そういう中で拾い集めてきたネタを、ひとつの長編にまとめずに、短編に収めていった統一テーマ連作短編集ということができる。

 テーマとしては、敗色濃厚の終戦末期、パプアニューギニアを舞台にした疲弊兵たちを場面として切り取った物語ということができる。長編のように、一人一人の登場人物たちの心情に深く立ち入ることをせず、敗残兵+戦場を、ひとつの風景として切り取った物語たちなのである。

 ということは・・・ある意味、味気ない。ということは・・・ある意味、文藝色が強い。つまるところ、感じ入る人には沁み入るし、物語読みには淡白に映るような作品群なのである。

 評者的には、全体、まあまあといったところか。深く心に残った作品もなければ、駄作だと感じる作品もなかったわけで、ただ古処作品群の中では、少し表面的過ぎる感は否めないなあというところである。(20091105)

※文学、文芸として読むべき作品集。(書評No927)

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by kotodomo | 2009-11-18 09:50 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 18日

古処誠二(大戦末期物)のことども


◎◎ 『ルール』
  △ 『分岐点』
  ◎ 『接近』
  ◎ 『七月七日』
◎◎ 『遮断』
  ▲ 『敵影』
  〇 『線』


※おまけ※
参考のため読みました。
◎◎ 『菊と刀』 ルース・ベネディクト

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by kotodomo | 2009-11-18 07:57 | メモる | Trackback(2) | Comments(0)
2009年 11月 13日

▲「幻想小品集」 嶽本野ばら 角川書店 1365円 2007/12

b0037682_935324.jpg 諧謔趣味的ショートショート風味作品集。

 全体、あまり評者の好みではなかったが、巻頭にある「Sleepingpill」は秀逸。要するに睡眠薬、睡眠導入剤について書かれた小品なのだが、睡眠薬にも色々種類があるようで、そのそれぞれを貴婦人に例え静謐な筆致で描写する技巧は、多分この人しか持っていないんじゃないかな。

 本書自体を強く薦めはしないが、本屋さんにて、巻頭の1作品のみ、大きくお薦めするのことども。(20091101)

※ハルシオンを飲んでみたくなった。いけない考えだけどさ。(書評No926)

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by kotodomo | 2009-11-13 09:04 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 11日

〇「デウスの棄て児」 嶽本野ばら 小学館文庫 500円 2003/7

b0037682_9144418.jpg 評者が嶽本野ばら本で初めて読む時代物。今は単に、嶽本野ばらをもっと読もう、もう少し読んでみようと思って読み重ねている最中で、期せずして時代物を読むはめになってしまったのである。

 場所は島原(天草)、基督教が禁教として迫害されている時代。で、主人公の名前が四朗なわけで、何の話かは推して知るべし。

 ふ~む、歴史上の事実も嶽本野ばらが描くとこうなるのですね。なんていう物語の紡ぎ部分は読めばわかりますよなのだが、本書には結構な知識も含まれているのも事実。当時の基督教の迫害の状況、ポルトガルの時代考証、悪魔崇拝のイロハ、そういうものへの知識の希求があって初めて本書は成り立つわけで、そういう意味で、嶽本野ばらは調べるべきものは調べて書く(もしくは元々知識の深い)作家なのでした。ということが、認識できた評者なのである。

 嶽本野ばらを読み重ねてきてわかったのだが、この方、ファッションだけでなく、基督教とか悪魔崇拝も結構モチーフに使っているんですねえ。先日読んだ『ツインズ』もそうだったし。

 そういう底辺は一緒でも、本書は野ばら作品の中でも、時代物という一風変わった存在ですね。(20091101)

※次は『幻想小品集』でござる。(書評No925)

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by kotodomo | 2009-11-11 09:14 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 10日

▲「ツインズ-続・世界の終わりという名の雑貨店」 嶽本野ばら 小学館文庫 560円 2001/12

b0037682_15392683.jpg 前作『世界の終わりという名の雑貨店』の続編という位置づけに加え、切なくもスタイリッシュな書き出しの描写があれば、自ずと本書『ツインズ』は傑作じゃなかろうかと思って読み始めるわけなんだけど、さにあらず。

 中盤からの悪魔崇拝の部分の描写から、冒頭にあったスタイリッシュさも忘れさせるようなフィロソフィーが展開し、文学作品としてはそれでもいいのだが、文学作品的な主人公の最終決断まで達すると、なんで前作からの主人公がそんなんなっちゃうの?と、作者の持って行き方にうろたえる読者も多いのではなかろうか。

 作品的には、ロジックも一貫しており、主人公の今は亡き彼女に対する救いの行動指針という形で、最終決断も当然のものなのだけど、前作にあった切なさはそこには存在せず、結果的にあるのは虚無感というべきものなのだろうか。

 続編とはいいながら、どこかパラレルワールドな世界ですな。いいとか悪いとかではなく、作者の読者への裏切りというか、いい意味での裏切りとは言えないような、そんな技巧の純文学作品野ばら風でした。(20091030)

※で?どういう話?って部分は省略ということで。(書評No924)

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by kotodomo | 2009-11-10 15:39 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 09日

◎「八朔の雪-みをつくし料理帖」 高田郁 ハルキ文庫 580円 2009/5

b0037682_2033394.jpg 日経新聞は会社で適当に目を通す評者なのだが、やはり会社事務所という環境では、新聞を読むという行為に長々と時間を費やすのも憚れるので、そこまで隅々までは目を通さないし、大抵の場合、下の方の広告にまでは目が行かない評者なのである。

 今回は、珍しく、その日経の出版社の広告が目に留まり、何々・・・江戸人情本、料理本、感動本(これが決め手のフレーズでした)、増刷、そんなところで図書館から取り寄せて読んでみた本書なのである。

 澪という女性主人公。その彼女の料理にかかわる奮闘本で、また人情本であるからして、色んなキャラの登場人物たちの泣き笑いがそこに描かれ、読んでいる途中までは、なるほど広告通り、なんて思って読んではいたのだが、感動さんはどこにあるんだろう、連作短編のひとつひとつに世の人々は感動するもんなんだろうか、自分はそこんとこはイマイチなんだけど・・・なんて思っていたら、はいはい感動さんは、ちゃんと居ましたよ。終盤のところに居ましたよ。クールな評者も、ちょっとググッとくるような感動さんがね。

 ということで、本書は今年の押さえ本。気軽な読書、それでいて何か感じるような読書体験を求めている方に超お薦め。やはり、男性よりは女性向けかもしれませんが。(20091029)

※続編『花散らしの雨』も2009/10に同じハルキ文庫から。著者の姓は、本当は梯子高(意味のわからない人は調べてね)の高田に、名前の読みはカオルでござる。(書評No923)

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by kotodomo | 2009-11-09 20:33 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 06日

◎「変身」 嶽本野ばら 小学館 1470円 2007/4

b0037682_11511664.jpg 朝起きたら、不細工な主人公男性が、イケメンになっていたというワンアイディアだけの作品ながら、やはりこの作家は巧い。なぜ、イケメンになったのかという謎にも触れず、ただただイケメン変化後の世界を紡ぎながら、結局は人は変身しても本質的には何も変わりはしないのだよと言っているだけなのだけど、唸るような巧さもちゃんと内包しているのである。

 一番感心したのは、これはいつもの嶽本野ばら節と言えると思うのだけれでも、語り手の主人公に、語る相手を位置づけていることである。全体は主人公視点で、語る相手もなく描写されていくのだけれど、途中で“おーい、〇子よ、今の俺って、人気もあるし、お金もあるけど、でもさあ・・・”ってなものを挿入することによって、時間軸とは異なった心理描写を描くわけで、これはこの作家の得意とする手法で、時間軸で読んでいた読者にちょっと佇んで物語を感じさせるわけである。う~む、このあたり巧いよなあ。

 主人公は、うだつのあがらない少女漫画家(男性32歳)である。ある朝、起きてみると美男子になっていて、その容姿を武器に本の売れ行きもあがり、写真集まで出す始末。取り巻く女性たちもデートに誘えば断らないわけで・・・でも、そこには元々の本人が持っていた拘りや性質は残っているわけで、そんなものが邪魔をするような形で、決してハッピーとは言えない『変身』の物語なのでした。

 ただ、最後のほうの主人公の心境の吐露は、なんでそうなるの?と納得のいかない評者。あと、この手の作品で気になるのは、イケメン魔法はいつ解けるの?というところで、それは読んでのお楽しみのことども。(20091027)

※〇子の喋り方は、非常に特徴があってオモロカッタ。(書評No922)

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by kotodomo | 2009-11-06 11:51 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 05日

〇「さよなら、愛しい人」 レイモンド・チャンドラー 早川書房 1785円 2009/4

b0037682_8411575.jpg 勿論、村上春樹新訳ということで手に取ったわけで、清水俊二訳『さらば愛しき女よ』を未読の評者としては、その新訳の妙味を語ることは叶わないが(いや、読めば叶うのはわかっているんだけど、新訳と旧約とふたつも読む気力は聖書といえどもない私です)、本書より後に描かれたマーロウ物『長いお別れ』清水俊二訳は読んでいるので、そこのところでの違いを感じて語ることはできる。

 『長いお別れ』のほうのマーロウは、中年の悲哀みたいなものを身に纏い、多くを語らず、信念をあまり表面に出さずに行動していたが、本書のマーロウはまだ青臭い感じがする。自分の利得を考えずに行動する根幹の部分は変わらないのだが、事件自体を自分の脇の甘さで複雑にしてしまったり、思いつき的行動が多かったり、女性に対する距離感がぶれたりと、ハードボイルドながら、まだ自分のハードボイルドスタイルを作り上げていない感じがするのである。

 結局あれですね。マーロウが、冒頭、あの店の中に入らなかったら、何も問題は起きなかったかもしれないわけで、そういう意味では真の犯人は罪作りな主人公なのかもしれないのことども。(20091020)

※村上春樹が、この作品に惚れ込んだから訳したわけで、評者からすると本書のどこがそこまで素晴らしいの?と思ったりもするのだが、訳したい本を訳せる村上春樹は素晴らしいし、長編を執筆しながら気分転換的にこういう作業ができるライフスタイルも素晴らしい。(書評No921)

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by kotodomo | 2009-11-05 08:41 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2009年 11月 04日

◎「カフェー小品集」 嶽本野ばら 小学館文庫 500円 2001/7

b0037682_93411.jpg しばらく書評などは書かずに、本ばかり読んでいた(っていうか、晩酌の合間に多少の本は読みましたって程度なんだけど)評者なのだが、やはり自分のために読んだ記録は残そうと、休みの日に一念発起。短い文章ながら、数冊の本の書評を書いたのはいいが、アップしようとしたら、本書『カフェー小品集』の原稿がまっさら・・・どうも、保存の仕方を間違ってしまった47歳の耄碌。

 何を書いたのだろう?多分、こんなことを書いた・・・はず。

 要するに、本書は素敵な小説集で、素敵な小説を書く作家というのを考えたとき(評者的には村上春樹とか山田詠美が浮かぶのだが)、そういう作家たちは、日頃から素敵な小説を読み、素敵な音楽を聴き、素敵な酒を楽しみ、素敵な服を纏い、そんな素敵がいっぱいだから、素敵な小説が書けるわけで、素敵なカフェーで思索する嶽本野ばらの小説はやはり素敵なんですよ・・・そんなことを書いたんじゃないかと思う、47歳耄碌の記憶。

 では、そういうことで。(20091006)

※せっかくだから、カフェーを飲みながら記憶を探って綴りました。(書評No920)

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by kotodomo | 2009-11-04 09:34 | 書評 | Trackback | Comments(0)