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2012年 10月 26日

◎◎「パンドラの函」 太宰治 新潮文庫 546円 1973/10

b0037682_19212445.jpg18歳で傑作だと感じた本を、50歳で再読。太宰には珍しい青春小説である。「正義と微笑」「パンドラの函」の中編2編収録。まずは美文である。そして18歳のときにには気付かなかったが「正義と微笑」の主人公青年は相当のヘタレである。あまりのヘタレ具合に、思わず笑った箇所もあり、太宰で笑うとはである。「ライ麦畑・」の主人公も敵わない大ヘタレ。読むべし。そして、こちらの方が明るい青春傑作と印象に残っていたパンドラ。あとがきを読むと、そうかこの主人公青年のモデルとなった人物は結核を克服できずに死んだわけか。寂しい。
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by kotodomo | 2012-10-26 19:21 | 書評
2012年 10月 20日

◎◎「夏のバスプール」 畑野智美 集英社 1575円 2012/7

b0037682_16582633.jpg高校一年男子の、夏休み前1週間の青春生活のお話。結局、最後の頁まで、何のお話を読んでいるのかわからず、人によっては何の話?オチは?と思うかもしれないが、個人的にこのまとめ方は好みである。最終盤での西澤との会話、青野との戯れ、色んなものが会話の中で恢復していくような筆の運びが。こりゃあ「国道沿いのファミレス」も読まないと。無駄なキャラたち、つまり不登校の男子、久野ちゃんの弟のつまるところ、本屋のバイト君などが、無駄なまま全体の溝をうまく埋めていて、この今までにない計算された構成を読まされると唸るしかない。
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by kotodomo | 2012-10-20 16:58 | 書評
2012年 10月 18日

◎「ビブリア古書堂の事件手帖2~ 栞子さんと謎めく日常」 三上延 メディアワークス 556円 2011/10

b0037682_20482723.jpg1作目より、本にまつわる薀蓄と物語が滑らかでよろしい。これで、「巨乳」と「体質」への言及と、栞子さんのどもり過ぎの描写が少なければ、もっと素直に評価できるんだけどね。前作に引き続き図書館に予約したのだけれども、自分の中では優先順位が低く、ラノベだし読まずに返しても、と思っていたが、いやいや読んで正解。優先順位は相変わらず低いが、続巻も読みますよ(^.^)多くの人が知らない本にまつわる章立てで、果たしてそれでも面白いのは作者のお勉強の賜物と構成力のおかげでしょう。あれだね、男性読者として栞子さん会いたい!
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by kotodomo | 2012-10-18 20:48 | 書評
2012年 10月 14日

〇「フリント船長がまだいい人だったころ」 ニック・ダイベック 早川ポケミス 1785円 2012/8

b0037682_10393337.jpg題名から冒険物かと思っていたら、ノワールな雰囲気の小説であったのことよ。町の漁船団を牛耳るドンが死んで、その息子が資産や権利を売っぱらうと宣言したことから起こる顛末、ただそれだけのお話を文学性を孕んだ描写で読まされるのは、そこまで苦にならないが、冒険物だと思っていたので、その落差は大きい(笑)結局、この作者は物語の中で音楽をプレイヤーに載せたかったのかな。レコードアルバムを奏でたかったのかな。登場人物たちに、好人物が不在なので、物語を楽しみたい読み手なら、本書は避けておいたほうがいいだろう。曇天の小説。
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by kotodomo | 2012-10-14 10:40 | 書評
2012年 10月 08日

▲「金星を追いかけて」 アンドレア・ウルフ 角川書店 1785円 2012/6

b0037682_1214563.jpgハレーが、50年後に金星の日面通過が8年セットで2回起きるよ、自分はもう生きていないから、みんな全世界で観測して宇宙の距離を測りなさいねと言って、それが行われるのも凄いが、当時の先進国も大航海を経ないと観測地に行けないのも苛酷だし、全世界のデータを集めるのも大変だし、科学って凄いね。1760年代なんて、仏革命より前の話。飛行機でFAXで電話でネットで、そんなのないんで、船に乗っていても本国とのやりとりは手紙だし、そんな時代に凄い。ちなみに我々は、2004年、2012年の2セットを経験済み。この前あったね。
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by kotodomo | 2012-10-08 12:15 | 書評
2012年 10月 07日

◎◎「僕らのご飯は明日で待ってる」 瀬尾まいこ 幻冬舎 1365円 2012/4

b0037682_1252951.jpg最高に爽やかな傑作恋愛小説。内に籠った青年の日常からの描きだしに、再生の物語?と思いきや、それ以上の物語。連作短編集のような章立てをとりながら、二人の男女の高校生活描写から、少しずつ物語は未来へと進んでいく。とにかく、読むべし!理屈などいらないお薦め小説。実に中身が健康的なのである。ただなあ、途中で縁があったえみりという名の女の子が可哀そう。可愛くて育ちもよくて素直な彼女が、なぜにフラれてしまうのか。なぜにフラれなければならないのか。ああ、可哀そうで仕方ないというのが中年男性読者からの唯一の欠点かな。
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by kotodomo | 2012-10-07 12:51 | 書評
2012年 10月 07日

瀬尾まいこのことども

b0037682_14475933.jpg  ◎ 『卵の緒』
  ◎ 『図書館の神様』
◎◎ 『天国はまだ遠く』
  〇 『幸福な食卓』
  〇 『強運の持ち主』
  ◎ 『温室デイズ』
◎◎ 『戸村飯店青春100連発』
  ▲ 『おしまいのデート』
◎◎ 『僕らのごはんは明日で待ってる』

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by kotodomo | 2012-10-07 00:02 | メモる
2012年 10月 03日

2012年9月に読んだ本のことども

2012年9月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:1971ページ
ナイス数:86ナイス

小野寺の弟・小野寺の姉 (リンダブックス)小野寺の弟・小野寺の姉 (リンダブックス)感想
〇小説はもうすっげー沢山読んできたが、身近なものながら、今回小説内で初めて出逢ったものがあり・・ボンタン飴。鹿児島生まれの自分は、地元企業のセイカ食品のボンタン飴は、鹿児島だけのローカルな商品だと思っていたわけで、2年前、その会社の社長様とお話したときに、滅茶苦茶全国区な商品だということを初めて教わったのである。本書129頁で、小野寺姉が婆ちゃんにボンタン飴をわけてあげるだけのシーンなのだが、長いこと小説を読んできた歴史の中で、この単語に出くわしたのは初めてである。鹿児島県人としてなぜか嬉しいのであった。
読了日:9月30日 著者:西田征史
はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸があるはるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある感想
◎人文書や写真付き本、絵画付き本、地図付き本なんて、普段読まないような本の、どこか珍妙なセレクションというかコレクションというか、そんなのにまつわる本紹介本。人文なんて読まないと思いながら、そういえばその昔藤田紘一郎の寄生虫本を好んで読んでいた自分を思い出し、それなら石本や植物本なんかも読んだら面白いだろうなあと共感。しかし、この著者の脱力感溢れる興味のあり方、文章のつづり方には独特のものがあるなあ。自分は好きなんだけど、何これ?どこがいいの?と思う読者も少なくないはず。でも自分さえ愉快であればいいのだ。
読了日:9月30日 著者:宮田 珠己
本の雑誌351号本の雑誌351号感想
本書を読んで読みたくなった本は「わたしがいなかった街で」柴崎有香、「夏のバスプール」畑野智美
読了日:9月30日 著者:
本の雑誌352号本の雑誌352号感想
本書読んで読みたくなった本。「フリント船長がまだいい人だったころ」ニック・ダイベック、「無分別」オラシオ・カステジャーノス・モヤ、「ワイルド・ピッチ」蓮見恭子、「金星を追いかけて」アンドレア・ウルフ、「球界消滅」本城雅人、「春はそこまで」「手のひら、ひらひら」志川節子
読了日:9月30日 著者:
鍵のない夢を見る鍵のない夢を見る感想
〇直木賞受賞作品というのは、人に薦めたくなる物語であってほしいのだが、本書の場合、他人には特に薦めない。「ゼロハチ・・」を読んだときも感じたのだが、この作家、紡げる作家である。己から物語が出てくる作家である。ただ、お話の紡ぎ方はいいのに、文章の紡ぎ方に平凡さがある。オジサン読者には、少し温いのである。加えて本書のキャラクターたちが抱えているのは悪意だったり、自意識過剰であったりで、キャラ自体がお薦めでないのである。5つの短編が収められた作品集。表題と同じ題名の短編はない。共通するものは、「自分のせい?」。
読了日:9月23日 著者:辻村 深月
ブルックリン・フォリーズブルックリン・フォリーズ感想
◎◎いやあ、よかった。今年読んだ海外物では一番かな。この作家の小説には、大きな粗筋などなく、それでいていつも読ませてくれる。初老の引退し離婚した男が、単身ブルックリンに移り住む。少し友人らしきものもできる。あとは題名通り、そういった登場人物たちの楽しく哀しい愚行録でも読まされるのかなあ、なんて思っていたら、p138で物語が動き出す。9歳の愛嬌満点の少女がブルックリンの転がり込んできたところから、物語に光が射す。簡単に言えば、すべての人の再生の物語。孤独だった人たちが仲間をなす物語。素晴らしく紡がれた物語。
読了日:9月22日 著者:ポール オースター
武曲武曲感想
◎◎完全無欠のエンタメ小説。著者は芥川賞受賞作家だが、この作品には個人的に直木賞を授けたい。簡単に言えば、高校2年で剣道に出逢ったラッパーな青年の物語なのだが、美意識というのか感性というのか稚気というのか、そんな諸々と剣の道をどんぶりに入れて、青春を謳歌し煩悩に苦慮するような清々しい小説なのである。もう一人の酔っ払い主人公もいて、こっちのパートは苦悩だけなのであるが、とにかく全体、すこぶるいい小説なのである。しばらくは、人に面白い本はない?って訊かれたら、本書を推し続ける。読む人を選ばない極上小説である。
読了日:9月16日 著者:藤沢 周
心のナイフ 上 (混沌の叫び1) (混沌の叫び 1)心のナイフ 上 (混沌の叫び1) (混沌の叫び 1)感想
〇図書館で本を探すときに、係員に尋ねるのはあまり好きではなく、自分で探すほうなのだが「Y933ネ」・・・Yなんとかって番号の書棚が見つからず、結局尋ねるはめに。なるほどね、ヤングアダルトコーナーってあるのね。ヤングアダルトを調べてみれば、一応定義は12~19歳とのこと。ふむ。本書の物語は、ファンタジーと冒険紀行とSF風味の少年主人公の物語。ある疫病で、女性が死に絶えた町、少年はそこで最後に生まれたから、いつまで経っても最年少という設定から、いきなり町を出て地図のない旅をすることに。やはり少女の登場は大事。
読了日:9月5日 著者:パトリック・ネス

読書メーター

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by kotodomo | 2012-10-03 19:52 | 読書メーター