「本のことども」by聖月

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2014年 09月 06日

2014年8月に読んだ本のことども

金脈 The OILSHOCK! (小学館文庫)金脈 The OILSHOCK! (小学館文庫)感想
▲最初は面白そうな書き出しも、中盤から不調。結局、野ばらファンもしくは野ばら読者にしか通読できなそうな馬鹿馬鹿しさ。で、自分は野ばら読者なので最後まで。ロリータファッションの主人公女子高生が、デートに誘われて「行くます」。ここは、野ばら氏の笑いのツボ文章。あとは、ヒッピーな爺さんの手伝いで、油田を掘り当てるけど、意味のわからない理論などに筆が割かれていて、飛ばし読みも多々。で、この爺さんが不利な立場に追い込まれると話言葉は女子高生「っていうか、超カワでぇ」みたいな。ここらへんも野ばらツボ。ファンのみ必読。
読了日:8月31日 著者:嶽本野ばら
たまものたまもの感想
〇いやあ、最初の読み始め十数頁では、文章がきらきらしていて、こりゃあ面白い感性の文章に浸れるぞ!と思ったのだが、物語、もしくは物語と思われるものが進行しだすと、文芸性は高いのだが、最初で感じた感性が続くわけでは、少しがっかり。川上弘美がいたり、奥泉光がいたり、そんな既読の作家の作品も読書中彷彿されるが、この作者の文芸性はオリジナル。もう少し、全体が山尾とのやりとりばかりであったなら、今さらながら芥川賞、そんな雰囲気を持つ、変わってないけど、風味は変わった物語である。
読了日:8月20日 著者:小池昌代
マスカレード・ホテル (集英社文庫)マスカレード・ホテル (集英社文庫)感想
〇巧いんだけど、下手というかベタ。巧いのは、犯行の連綿性とか意外な犯人像とか、ホテル的なエピソードの盛り込み方とか。ベタなのは、やはり2時間ドラマ的な会話での進行や、トリック的なものを支える人物たちが本当にそういう行動をとるのかという蓋然性の希薄さ。まあ、でも東野圭吾、まだまだ頑張る所存です!って感じで、攻めの一冊かと。あと、読了後、マスカレードの意味を調べたのである。
読了日:8月20日 著者:東野圭吾
神様のケーキを頬ばるまで神様のケーキを頬ばるまで感想
◎◎この作者の本は3冊目だが、どれも巧い。手垢のついていないピュアな表現が、心をツンツンする。新しい音楽に触れたような気持ちになってくる。本作は連作短編集といっても、あるビルのテナント入居者もしくは関係者、それとある芸術家の絵画や映画といった作品と、小道具が共通するだけ。時も同じくするわけではない。また、それぞれの作品も、温度が若干違う。全体的に言えば、全部温めの温度ではあるのだが。粗筋の紹介もしようがない、さりげない物語たち。いつか凄い賞を獲るだろう。これまでの作品を読めばそう思う。天性の瑞々しい筆致。
読了日:8月16日 著者:彩瀬まる
ポーカー・レッスン (文春文庫)ポーカー・レッスン (文春文庫)感想
〇。それぞれの短編が少し長めで、おおよそ終盤に視座が変わるという構造で、ある意味飽きてくる。いや、ひとつひとつは、さすがディーヴァー、丁寧に作られ面白いのだが、それをいくつも並べられると、お腹一杯なのである。まあ、自分が通しで読み切ったのも間違いで、一日一編くらい読んでいくのがいいのかもしれない。原題と一緒で、ツイストの効いた話ばかり。普通に話は進んでいくのだが、終盤、今まで語られてきたものの様相が一変する。簡単に言えば、被害者が加害者かと思ったら、加害者が被害者みたいな(笑)誰が読んでも楽しめる一冊。
読了日:8月15日 著者:ジェフリーディーヴァー
ボラード病ボラード病感想
▲序盤はアゴタ・クリストフ「悪童日記」のようなシュールな物語である。「悪童日記」の向こうには戦争が見えたが、この本の向こうには「フクシマ」が見える。逆にいうと、震災がなければ、ただシュールなだけで意味が汲めないだろう。もっと言えば、今、福島で頑張っている人たちが読んだら、怒りを覚える本なのかもしれないし、頷きながらも慌てて首を振る内容なのかもしれない。福島の文字も、原発の文字も、地震の文字も一切ない。行政によって、絆によって、信じることこそが正しさ、幸せ。そんな地域に暮らす少女の目を通して描かれる問題作。
読了日:8月3日 著者:吉村萬壱
神秘神秘感想
◎◎この作品は、今日本における小説の最高峰に立っている。誰が読んでも面白い、誰もが唸る、誰も書けない大傑作。物語のキーワードのひとつ双子。著者自身も双子で、弟の文郎も小説家。父も直木賞作家の白石一郎。血統が書かせるものなのか、著者自身の思慮が書かせるものなのか、紛れもない名作である。転落的な物語も多い著者ながら、この物語は、ずっと天使がつきまとう。癌を宣告された壮年男の物語なのだが、話はずっと前向きで、どこか一条の光が射し、中年男の冒険的な部分も読者の心をくすぐる。二つの震災を扱いながら、どこまでも神秘。
読了日:8月2日 著者:白石一文
暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出感想
▲3月11日午後2時46分の自分は、羽田空港で故郷鹿児島行の搭乗アナウンスを待っていた。6脚カーブ型の椅子に座り本を読み、隣の女性の貧乏揺すりが気になり、それが地面からの揺れとわかり、地震直面。翌日の夕方まで28時間、空港という離れ小島に幽閉。福岡に帰る予定の男性とタッグを組んで、荷物を見てもらったり、弁当配布状況を教えてもらったり。他の幽閉先と比べると空港はラッキーな場所で、テレビ報道で何が起こっているのかわかり、トイレも自由、一人あたりの床面積は広い。仮眠はウツラ3時間程度。だから、こういう本は解る。
読了日:8月2日 著者:彩瀬まる

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by kotodomo | 2014-09-06 16:11 | 読書メーター