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2004年 11月 13日

◎〇 「熱帯」 佐藤哲也 文藝春秋 1800円 2004/8

b0037682_9231414.jpg なんじゃ、この評価記号は!と思われた方も多いかもしれない。「◎◎」と「◎」の中間だったから、「◎○」にしたというわけでもないし、前半は「◎」だったけど、後半は「○」だったからというわけでもない。じゃあ、どういう意味でかっていうと、深い意味はない(笑)。感覚的にこんな感じじゃないのかと思ってつけた記号である。要するに、普通の感覚では測れない面白さなのである。インスピレーションの問題かと思う。奇妙な感覚が読者それぞれの琴線に触れてくるかどうかで評価が分かれるんじゃないかと思う。

 とにかく、自分にもこの面白さ、わかるのかしら?という方は、冒頭から20頁くらい立ち読みしていただければ、よろしいのではないかと。評者にとっても、新鮮さを感じさせてくれた、冒頭からの流れるようでそれでいて強引な物語展開。こんなスタートダッシュな小説、初めて読んだ!って感じですかね。南の島の法螺話をしていたかと思ったら、いつの間にかどこかの夫婦者の食卓のある風景になったと思ったら、政治的な話になったと思ったら、どこかの会社でのバカ会議になったと思ったら、ってな感じで、グイグイグイグイ読ませてくれるのである。この立ち上がり感、最高!!!

 ところが、中盤から少しパターンに嵌まってしまったのが惜しい!冒頭からの感覚で、読む者をドラッグ中毒的にまだまだわけのわからん世界へ運び去ってくれるのかと思っていたら、わけのわからん世界のわけのわからん秩序や枠組みが知れてきてしまって、結局新鮮味が薄れてきてしまって、要するに独自の奇妙な世界のグフフ感も慢性化しちゃうと少し不感症になっちまうのである。わきの下を、羽毛でコチョコチョされたときのグフグフフフフっていう堪らない感覚も、ずっと続けられると慣れてしまうのである。そういう意味では、評者にとって最終的に突き抜けきれなかった作品でもあって、評価記号「◎○」というのは妥当なとこかな。だからやっぱり自分の感性は素晴らしいと思うわけである、ははは。

 なんてこと書いている今は鹿児島の書斎。そこへ下の娘がやってきた。本日は彼女の7歳の誕生日なのだが、逆にパパたる評者にプレゼントなのだろうか、自分で書いた絵を持ってきている。で“パパ、「はい」か「いいえ」で答えてね♪”という。そして“この絵、百万円で買ってくれる?♪”と訊くので、素直に“いいえ”と答える評者。“いい絵って言ってくれるなら、やっぱパパ百万円で買ってくれるんだ♪”と娘。“もっと早く大きくなって、そんなことは違うパパにオネダリしなさい”と7歳の娘に通じないことを言う評者は、私は、俺は、自分の家族は平和でかわいくていいなあ。

 本書『熱帯』も、SFなどこか可愛くお茶目な平和なわけのわからん物語である。表紙絵もカワユイ。うちの娘はもっとカワユイ♪♪(20041112)

※笑いそうで笑わない、捩れそうで捩れない、そんな奇妙な感覚が持続した読書でした。(書評No430)

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by kotodomo | 2004-11-13 09:23 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)