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「本のことども」by聖月

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2009年 02月 01日

▲「退出ゲーム」 初野晴 角川文庫 1575円 2008/10

▲「退出ゲーム」 初野晴 角川文庫 1575円 2008/10_b0037682_18275134.jpg 直前に発売された『1/2の騎士』と、本書『退出ゲーム』はそのテイストは大変似ているが、評価は『1/2の騎士』のほうが上。両者とも女子高校生が主人公の学園物で、謎解き係の隣人がいて、無意味な同性愛が下敷きにあり、例えば事件にしても“学園祭開催に対して脅迫状が届く”なんて同じモチーフが使われており、そんなこんなで随分と似ているのだが、本書のほうは読みながら欠伸が出てしまい評価が低くなってしまったのである。

 それはなぜかといえば、これも両者の共通項なのだが、謎や事件に現実味がなく(まあ、普通こんな理由でこんな事件やこんな展開はないわなあ的に)、『1/2の騎士』の場合、その謎以外の部分で楽しく読めたのだが、本書『退出ゲーム』の場合は連作短編集ということもあって謎を中心にこじんまりとまとまっているのはいいのだが、結局のところ、その謎を除けば何も残らないわけで、現実味のないミステリー部分を退屈しながら読まなければならないからである。

 例えば表題の「退出ゲーム」。ゲームの趣向は悪くはないのだが、ゲームのルールが非常に曖昧で、現実にこういうルールのないゲームは成り立たないわけで、それがなぜゆえ物語の中で成立しているかといえば、作者が勝手に話を展開しているだけのことである。舞台の上で、うまく退出理由を言えたチームが勝ち!というルールなのだが、読んでいて優勢も劣勢もなく、作者が都合のいいように軍配をあちらにあげかけ、こちらにあげかけしているだけなのである。要するにロジカルでないのである。

 本書は、最新のこのミス2009年版にランクイン。ついでにいえば、『ラットマン』道尾秀介も同じテイストの物語でランクインしているのだが、世の中の人々はこんな小説が嫌いじゃないんだろう。だが、評者は好きくない。物語全体から謎を除いても面白い小説が好きなのである。だからハードボイルドな主人公や、魅力的な女性が登場する物語に評価が高くなっちゃうんだろうな。藤原イオリンだとかさあ。(20090120)

※全体に悪くはないと思う。悪くはないと思うが、このミス投票直前の2008/10に発行されて、うんこりゃオモロイと慌てて投票するほどの作品でもない。(書評No855)

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by kotodomo | 2009-02-01 18:28 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from 粋な提案 at 2009-02-16 05:07
タイトル : 退出ゲーム 初野晴
穂村チカ、高校一年生、廃部寸前の弱小吹奏楽部のフルート奏者。 上条ハルタ、チカの幼なじみで同じく吹奏楽部のホルン奏者。 変わり者の先輩や同級生のせいで、校内の難事件に次々と遭遇するはめに―。 日小..... more


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