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2009年 02月 23日
評者は、割とこの朔立木という作家を追いかけている気がする。自分で“追いかけている気がする”と、あやふやに言うのも変な話だが・・・『死亡推定時刻』を読んで以来、遡ってこの作家の作品を読もうとはしていないのだが、その後の作品を図書館で見かけると、借りて読んでしまうのである。というのも、現役弁護士の肩書きを持つ作家であり、裁判を舞台にした作風に、今の日本の司法の実情というものが伺え、お勉強的に興味を惹かれる部分があるからである。ハイグレードな老人施設で、近所を散歩中の入所者が二人、川に転落して死亡してしまう。事故なのか事件なのか?その少し前には、所内で老女が足の爪を剥がされるという事件も起こっている。警察は、勤務している看護婦に目をつけるのだが・・・そんな冒頭である。 その看護婦(女性看護師と書くのが面倒なので、評者は看護婦と書く)は、事件後退職し、マスコミ等を利用して“自分は無実キャンペーン”みたいなのを展開し、今では多くの支持者が彼女の周りに集っている。 なんて、いかにもありそうな事件の裁判事例を通して、作者が読者に問いかけるものは、『死亡推定時刻』と同じで、捜査や裁判を通じての日本司法における自白の偏重性にある。だから、くれぐれも、これを読んでいる皆様方におかれましては、たとえ不在証明ができなくても、たとえ罪を犯していたとしても、たとえ取調べがいかにきついからといっても、ユメユメ自白などなさらぬように。 本書を読み終えたあとも、結局この看護婦がどういう動機で、どういうやり方で、はたして事実として本当にやったのか?そういった事柄は明らかにされない。ただ自白に至った理由につき、白じゃなく黒という司法の裁きが下った事実のみが残るのである。 小説の出来としては不完全燃焼みたいな感じで、お薦めってほどではないのだが、とにかくこの作家の作品を読むと、考えさせられるのは間違いないところである。(20090220) ※ということで、作家のことどもに「朔立木のことども」を作ったのことども。(書評No866) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2009-02-23 07:55
| 書評
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