2009年 05月 29日
題名とは全然違った内容。著者が女の子絡みで中国に行こうと思い立ち、ただ中国に行くのも芸がないなあなんて思って、南アフリカから中国まで向かうという、なんともお馬鹿な企画ノンフィクションである(笑)。 『三国志男』で中国の旅を、『インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも』という、なんとも長いタイトルの同様の道中記でインドの旅を面白おかしく書いてきた著者の、中国編にあらずアフリカ編の旅のブログ風記録なのである。 先に読んだ2つの道中記と比べると、イマイチ面白みにかける結果となっているのだが、そのひとつの理由として写真が少ないことが挙げられよう。『三国志男』では、写真を挿入することで相当笑かしてくれた著者なのだが、本書ではインパクトのある写真が非常に少なくなっている。写真と、その写真のコメントのミスマッチなんて題材はありふれた手法ではあるのだが、この人の本には欠かせない素材だろう。 また、イマイチ面白くないもうひとつの理由に、アフリカ当世事情がほとんど反映されていないっていうのも挙げられるだろう。『三国志男』では、中国の観光地も結構お馬鹿なところがあるのがわかったし、『インドなんて・・・』ではインド人てみんなそんな感じなの?そんなところで笑かしてくれたのだが、本書ではあまりアフリカの事情がはめ込まれていないのである。ただ、トイレだけは汚いっていうか、そんなトイレでどうやって用をたすの?って事情だけはよくわかったのだが(笑)。 あとテンポも悪いか・・・トイレ事情を長々と書いたり、腹痛下痢事件をしつこく取り上げたりしているのだが、それによって随分と冗長なギャグを読まされているような気になってくるのである。 最終的に可笑しいのは、『中国初恋』という題名で南アフリカから出発という、いきなりの設定的ギャグはまだしも、結局、最後に辿り着いた国がイスラエルということで、じゃあ中国は?続きはあるの?そんな感じで話が中途になっているところである。 あなたが、中国に行こうと思ったとしよう。で、図書館に行ったとしよう。色んな本を借りる中(地球の歩き方とか)、サイドで本書を借りるかもしれない。だって、紀行の書棚に『中国初恋』なんて題名で本書が置いてあるんだもん。もしかしたら借りるわなあ。そいでもって読んだら、南アフリカからイスラエルまでの旅路が書いてあるわけで、結局全体題名からして、本書は本当にお馬鹿なフィクションなのである。(20090525) ※さあ、あなたも本書を読んで中国へ行こう(^O^)/買わなくてもここで読めますが(笑)。(書評No888) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2009-05-29 09:10
| 書評
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Comments(2)
Commented
by
カクテキ
at 2009-06-03 11:12
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こんにちは。はじめまして。
聖月さんの書評で「インドなんて~」を読み、気に入ったので「中国初恋」も読みました。 写真コメントが好きだったのでもの足りなく感じました。 この次の「三国志男」は聖月さん、たいそうおすすめなのですね。 三国志をよく知らなくても大丈夫でしょうか?
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カクテキさん はじめまして
ダカーポの毎年総決算の「今年最高の本」を楽しみにしていたのですが廃刊になりまして、もう読めないのかと思っていたら、これだけは去年、今年と特別号として刊行されていることを知り、早速購入。 その中で気になったのが「三国志男」でした。短いコメントで“とにかく大爆笑もの”とか書いてあり、内容も知らず、ましてや三国志の知識なく読み始めたら・・・ これがもう、大爆笑。この手の本で円熟味なんて言葉も使えないかと思いますが、過去2冊の本の超えた円熟度。写真コメントもバッチリというか、写真コメントを本当にうまく使っています。 3冊のうち、格段に笑ったのでした・・・っていうか、箇所により、腹が捩れて中々笑いが止まりませんでしたよ。クールな聖月様のはずなのに。 |
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