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「本のことども」by聖月

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2005年 01月 13日

◎「死亡推定時刻」 朔立木 光文社 1890円 2004/7

◎「死亡推定時刻」 朔立木 光文社 1890円 2004/7_b0037682_1312064.jpg 法曹界に身を置く作者の著者名は“さく たつき”と読む。本書『死亡推定時刻』は、その裏側を熟知した作者が書いたノンフィクション風味たっぷりの冤罪ドラマなのだが、ミステリーやサスペンスとしては不完全燃焼で、ノンフィクションとして読んでも及第点の域を出ないのだが、最終的な結末といい、扱っている題材といい、いつ自分の身に起こるかわからない冤罪というテーマはなぜか読ませるのである。

 例えば、あなたの好む散歩コースに人気のない雑木林があったとしよう。ある日、いつものように散歩していたあなたは、少し道を外れたところに何かを見つける。近寄ってみるとそれはお財布。当然、取り上げるてみるわなあ。評者はそうする。当然開けてみるわなあ。評者はそうする。そいでもって、う~ん、いくらくらいにしようか?まあ1万3千円としとこうかな、1万3千円が中に入っていたとしよう。そこでどう行動するかはあなたの自由だが、評者の場合、なんせ人気のない雑木林だからなあ、誰も見てないしなあ、もしかしたら中身だけ抜いて持って帰るかもしれない。年老いた雌猫を気取るかもしれない。んっ?猫婆=ネコババの洒落ね(^^ゞそいでもって、立ち去ろうとすると、ふとその先に人が寝転がっていることに気付くわけだ。まあ近寄ってみるわなあ。評者はネコババの事実をこやつ見ていたか?どうやってごまかすか?と思って近寄るだろうなあ。そうすると、それが死んでいる女子中学生。不気味な初めて見た死体。ギャーッと言って逃げるあなた。評者ならお金を戻して、警察に通報するが。でも、あなたの行動も、評者の行動も結論は同じかもしれない。

 翌日早朝、警察があなたの家の扉をドンドン。女子中学生誘拐殺人容疑でしょっぴかれてしまう。事情を聴くため、いわゆる事情聴取なのだが、実は担当の警察官は端からこいつはクロだと決めて取調室で高圧的に迫ってくる。恫喝する。お前が殺した仏の身にもなって早く吐けという。

 一方、自分から警察を呼んだ評者の場合でも、事件の指揮担当者の第一発見者が一番怪しいとの思い込みから、結局事情聴取へ。なぜ財布に指紋がついているのか?金目当てで結局殺して、怖くなってお金戻して警察を呼んだんじゃないのかと、これまた恫喝されてしまう。

 こっから後は、あなたの運命も評者の運命も一緒。自分を取り調べる警官は、頭からこいつが犯人だ!吐かせる!と思っているので容赦ない。恫喝、暴力、眠らせず、食事も与えない。拷問器具を使わない拷問である。評者は正直言って弱い。自慢じゃないが弱い、脆弱性の固まりである。すぐに極限状態に陥ってしまう。早くこの場から解放されたい。楽になりたいと思う。警官から“自分がやりましたと言えばそれでいいんだ。今日のとこは終わりだ。明日またやってないと言えばいいじゃないか。それで、明日我々が納得したら家に帰れるかも知れんしなあ”と言われ、逡巡して逡巡して逡巡して、とにかくこの場を終わらせたくて“やりました・・・”と答えてしまう評者。自白。自白しちゃったんだよ。

 そうなれば、後は犯人としてベルトコンベアーに乗って流れていき、都合のいい状況証拠だけで起訴。そして死刑判決。まあ、ここらへんがどうやってそうなってしまうかは、本書を読んでくんなまし。そして、当然控訴する評者。

 新聞を見た第三者は思う。こいつ一旦自白したんだろう。で、裁判になったら一転否認。でも自白したならこいつが犯人に違いないよ。だって、やってないのに自白するわけないもんな。もしもし、そこのあなた、こんな事件見聞きしたことあるんじゃないかい。明日はあなたでっせ!
 
沖縄なんかで米兵が事件を起こして、日米地位協定とかなんとかで、犯人の身柄引き渡しに米国が応じず、なんてずるいんだ!と思っているそこのあなた。それはあなたの勘違いである。米国は日本で罪を犯した自国の兵士を無罪放免しようと企んでいるわけではないのだ。日本の旧態的な捜査による冤罪を嫌っているからなのだよ。日本の司法制度を信用していないからなのだよ。決して被害者を軽視しているわけではないのだよ。日米地位協定なんかの本質はそういうところにあるのだよ。
 
 結局結論から言えば、財布に気付いても死体に気付いても知らぬふりをすればよかった、もしくは財布にお金を戻したとき、指紋を一生懸命拭いて、やはり後は知らぬふりをすればよかったのだなあ(ToT)と独房で悲壮感漂わす評者なのである。(20050112)

※同じ世界の薀蓄を放り込んだ▲『13階段』高野和明よりは、ずっと興味を持って読めたので評価◎(書評No459)

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by kotodomo | 2005-01-13 13:11 | 書評 | Trackback(5) | Comments(4)
Commented by ブラトラ at 2005-01-14 12:00
TBありがとうございます。そしてお久しぶりです!
聖月さん、その後お元気だったでしょうか?
なんかついに発見されてしまったって感じですw
ブログを始めた当初書評などもガンガンやるつもりだったんですが、全然違う形になってしまいました。おかげでこちらにも連携することもせず今日に至っております。折をみて書評もアップしていきますので、その際はヨロシクお願い致します。ではまたです!
Commented by 聖月 at 2005-01-14 12:13
はい随分前に発見しておりました。
>全然違う形になってしまいました
お蔭様で心が疲れ果てたときに、そちらのサイトに癒しにいっております。
一人暮らしだし(笑)

でもこれでやっと書評にあげた本が重なりましたね(^.^)
Commented by ざれこ at 2006-09-22 00:43
私も聖月さん同様、「きっとやってもないのに自白してしまう・・・」と怖くなった一人です。自然、感想も微妙に似通ってしまうのでした。自分の身は自分で守るしかないようですね・・・。やな世の中です。
Commented by 聖月 at 2006-09-22 07:28
ざれこさん 私はやっていない!!!・・・何を???

昔は、自白したんなら絶対そいつが犯人なんて思っていましたけど、冤罪は強要した自白で作られたりするんですね、怖いですね。

あ!夕べアリバイがない!身の回りで変な事件が起きていませんように(笑)


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