2012年 08月 01日
7月の読書メーター 読んだ本の数:15冊 読んだページ数:4835ページ ナイス数:109ナイス 聖の青春 ◎◎10年ぶりの再読。二十歳になった村山が麻雀をしている師匠森のところに来る。ニコニコしながら「僕今日二十歳になったんです」「そうか、よかったな。大っぴらに酒も飲めるな」・・・違うのである。いつ死ぬのか、10代で死ぬのかと思っていた自分が20年目の誕生日を迎えることができるとは思っていなかったので嬉しかったのである。当時読んだときは、非の打ちどころがないノンフィクションだと思ったもんだが、今読むと不必要なエピソードなんかもあって、大崎文章もまだ若い。村山が最強だった頃、羽生対村山対谷川、最高だったろうなあ 読了日:07月31日 著者:大崎 善生 竹島 △もう少し賢い文章を期待していたのだが、ちょっと軽過ぎ。日本、韓国の領有権に影響を与えかねない古文書・・・これの内容に、その存在に、右往左往する日韓中の関係者。その三者間を主人公の悪巧みな駆け引きが。なんか面白そうな設定だけど、結局は最初から最後までドタバタドタバタ・・・読んでいてシラケるぞ。ただ「領土とは言葉だ」というのは、納得。個人の土地と違って法務局に届けるわけではなく、じゃあ日本の領土の定義とは何ぞや?というと、ここからここまで日本だからねと言い、他の国がいいんじゃないのといえば領土なのである。 読了日:07月29日 著者:門井 慶喜 死命 ◎間違いなく今年のこのミスにランクインしてくるんだけど、リーダビリィティ以外は取り立てて起伏のない普通のお話である。連続殺人鬼が記憶障害を抱えていて、殺人鬼、それを追う刑事とも末期がんで果たして最後の頁まで生きていられるかって設定だけで、最初から最後までである。それなりに上手に描いているとは思いながら、全体は上手ではない。だから、このミス1位かもと思っても、これ面白いよと人には薦めない。なんか、ダイナミックさがないだよね。凄腕のデイトレイダー=大金持ち止まりみたいな設定とか。施設の沙織ちゃんは出演のみとか 読了日:07月22日 著者:薬丸 岳 屋上ミサイル〜謎のメッセージ (『このミス』大賞シリーズ) ×前作がグリグリの◎◎評価で、再読したら尚更評価度アップであったため、本書の×評価は残念至極。要因は、登場人物たちは一緒だが、まったくテイストの違う小説だったから。前作で見られた、粋な言葉遊びはほとんどなく、前半のガールズトークで進む展開にはうんざり。結局、暗号という謎解きに徹しているのだが、暗号で伝える必要の必然性は皆無だし、順調に暗号を解くのはいいが、普通ならそこに暗号が存在することも気付かない細い線の綱渡りで、蓋然性に乏しいのである。最後の50頁は1頁を10秒で読み進めた。ただ、もう読み終えたくて。 読了日:07月22日 著者:山下 貴光 ダンス・ダンス・ダンス(下) ◎◎8年ぶりの再読で、内容も覚えていなくても、キーワードはハワイ?と思っていたらそうでした。上巻では札幌、下巻ではハワイ、主人公の流浪的冒険譚。再読して思ったけど、やっぱ村上春樹の代表作は本書に決定!自分も含め多くのファンが『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が代表作というのだけれど、やはり万人受けする本書のほうが、上位!『1Q84』や『ねじまき鳥』なんて足元にも及ばない面白さ。村上作品には珍しく、「痛快」なのである。キキや五反田君やメイは可哀そうなんだけど、主人公の思考回路に快哉!やれやれ。 読了日:07月21日 著者:村上 春樹 ラブ・ケミストリー ×元々はこのミス大賞読者だった評者なのだが、最近はとんと。で、何かの拍子に本書の口コミを見て、こんだけみんなが面白いというのだから面白いのだろうと思って読むはじめたのだが・・・個人的には全然ダメでした。ラノベ自体は敬遠しないが多くの場合肌に合わないし、結局、どこがエンタメでミステリーだったのか。まあ、大賞ではなく優秀賞とはいっても、このレベルではなあ。東山彰良やハセベバクシンオーのあの高いレベルの時代が懐かしい。ええと、お話は、大学の研究生が、初恋に落ちる話。恋の成就までの過程と、研究との両天秤のお話。 読了日:07月21日 著者:喜多 喜久 短篇五芒星 ◎単行本を読んだわけではなく、図書館のロビーで群像3月号に収録されているやつを読んだわけで、勢いで新潮8月号の舞城作品「美味しいシャワーヘッド」も読んだぞ。舞城も芥川直木の両面の貌を持つ作家で、本作はやはり芥川側。爆発暴走を抑え込んで描いているわけで、そんなことはかねてからの読者にはわかるのだが、本作で芥川賞を獲っても新しい読者にはわからないわけで、やっぱどこかで直木賞のほうで獲ってもらってもいいのかなとも思うのである。どの作品も直截的ではない死が内包されていて、それでいて滑るような口語に近い言葉の操り。 読了日:07月21日 著者:舞城 王太郎 パラダイス・ロスト 〇シリーズ1作目の「ジョーカー・ゲーム」が諜報活動の矜持を描いた傑作だっただけに、2作目、本書3作目と、自分にとっては、どこか今一つなのである。あと、主人公は基本的にD機関の一員でないとというのも個人的な嗜好で、そういう意味では本書の連作短編の中では「暗号名ケルベロス」だけが、該当する。この中でクロスワードが出てくるのだが、犬のポメラニアンがバルト海地方の地名由来だと初めて知ったぞ、どうでもいいけど。「失楽園」の主人公彼女の行動や考えは、全然わからなかったなあ。まあ、なんだかんだ言って4が出たら多分読む。 読了日:07月16日 著者:柳 広司 屋上ミサイル (このミス大賞受賞作) ◎◎「2」を読む前に再読。こうやって、冷静に読み返すと、このミス大賞受賞作の中で、ダントツに面白いんじゃないかい。バチスタも超えていると思うよ。キャラの造形も細かく最高。近藤さんもそうだけど、脇役のお父さんやお母さんまで、しっかり作られているし。前回読んでから2年経たずの再読でも、面白いものは面白いわけで、つまり粗筋や展開に頼らない場面の作りっていうのが相当にしっかりしている証左なのだ。なんて書いていたら、ロンドン五輪に備えて、イギリスでは屋上にミサイルを配備しているとのニュースが。あそこはテロ多いからな 読了日:07月15日 著者:山下 貴光 言語小説集 〇読んだからといって、毒にも薬にもならないような言葉遊び短編集。薬にはならないが、クスリと思わせるようなユーモア短編集ともいえる。凄いなあと思うのは「括弧の恋」ワープロ(PC)のキーボードのキーが、言い争いをするという、なんとも奇想天外なお話で、「!」や、「→」や、「?」や、「【」がお互いの立場から主張するなんて、なかなかに面白いのである。あと言語学者が相手の言葉の端々を聞いて「お宅、東京は〇〇町界隈の出身・・・」なんて言いあてるのは、県民ショーのバーのマスターのようで、これも面白いのである。1時間で読了 読了日:07月15日 著者:井上 ひさし ダンス・ダンス・ダンス(上) ◎◎2004年に読んだ本を8年ぶりに再読。なぜかって?自分の過去の書評を見たら(そうなのだ。自分は書評を書いているのだ)、村上春樹の文体小説として最高と書いてあったから。それと昼休みの45分間の読書に「1Q84」を読んでいたら、お昼の間、頭が村上春樹だったから。中身はすっかり忘れていた。彼女、父親、横浜、旅行・・・そんなキーワードが残っていたけど、ちょっと違ったな。彼女が少女だったり、横浜じゃなく辻堂だったり。でも、間違いなく面白い。次は下巻。下巻終わったらどうしよう。『羊をめぐる冒険』に遡ってみようか。 読了日:07月09日 著者:村上 春樹 灰色の季節をこえて ◎1666年の英国の田舎を襲った疫病の顛末を、主人公女性の目を通して描かれただけの小説なのだが、小説とは何か、小説にできることは何か、そして作家という役割は何かを考えさせてくれる良書である。簡単に言えば、こんな題材で書いてもベストセラーになるわけではなく、作家とはベストセラーとは無縁な、業としての宿命を全うすべき存在なのである。常人が紡げない物語を紡ぎ、常人が繋げない物語を繋げるのである。主人公と牧師とその妻の宿命の物語。人間の強さと弱さと狂気と歓喜の物語。そして最後におまけの物語。良書読むべし読書人よ。 読了日:07月08日 著者:ジェラルディン・ブルックス アイ・コレクター (ハヤカワ・ミステリ 1858) ◎多分、このミス2013年版1位でしょう。ノンブルが逆に(最終頁に向けてカウントダウン)なっていたりなんていう奇を衒った方法を措いておいても、途中からの頁を繰る手が止まらない展開の速さに、読者はいったい最後はどうなるの?本当にパズルはぴたりとハマってくれるの?実は主人公が夢遊病者で犯人だったんだぜぇ、ワイルドだぜぇ、そんなインチキじゃあないの?そんな風に思わせておいて、それなりに着地するあたりはさすがなのである。でも、ノンブルが逆になっているのも困りもの。読んできた頁数がわかりにくいのは、少し困るのだなあ 読了日:07月07日 著者:セバスチャン・フィツェック 一分間だけ ◎やっぱり泣いちゃいました。飼い犬が死ぬお話というのはわかっていても、やっぱり泣いちゃいました。動物が好きってわけでもなく、犬が好きっ手わけでもなくても泣いちゃいますね。意外に飼い犬との交流の描写は少なく、主人公女性の職場、恋愛、そんなものが、物語の骨子として展開していくのだけど、結局は犬で泣いちゃうんだよねえ。しかし、あれだね、コワモテと思っていた登場人物が、意外な内面を持っていたりすると、物語に膨らみがでてきますね。カッコいいなあ、北條女史。会議終わらせるんだもん。こういう人に付いていきたいもんだなあ 読了日:07月01日 著者:原田 マハ 週末は家族 〇形式夫婦と、疑似娘の3人チーム、お互いに仲睦まじい部分や、特異なキャラの設定など、根本的な部分は凄くワクワクするのだが、全体の展開はイマイチ突き抜けられなかった感じ。特に、11歳の少女ひなたの、ませた、キャラと、パパ役大輔の理屈を捏ねまわす少年みたいなキャラが魅力的なので、展開自体がもう少しカッチリとなれば傑作になったような気がするのだが。施設の少女を週末だけ里親として引き取る・・・だから週末は家族で、週中は家族じゃないみたいな題名と設定。妻役、夫役、娘役、3人の視点から語られる物語は、どこか暖かいのだ 読了日:07月01日 著者:桂 望実 2012年7月の読書メーターまとめ詳細 読書メーター
by kotodomo
| 2012-08-01 17:12
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