完全無欠のエンタメ小説。著者は芥川賞受賞作家だが、この作品には個人的に直木賞を授けたい。簡単に言えば、高校2年で剣道に出逢ったラッパーな青年の物語なのだが、美意識というのか感性というのか稚気というのか、そんな諸々と剣の道をどんぶりに入れて、青春を謳歌し煩悩に苦慮するような清々しい小説なのである。もう一人の酔っ払い主人公もいて、こっちのパートは苦悩だけなのであるが、とにかく全体、すこぶるいい小説なのである。しばらくは、人に面白い本はない?って訊かれたら、本書を推し続ける。読む人を選ばない極上小説である。