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「本のことども」by聖月

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2005年 03月 17日

△「雨恋」 松尾由美 新潮社 1470円 2005/1

△「雨恋」 松尾由美 新潮社 1470円 2005/1_b0037682_14453142.jpg やっと、冬の季節が終わろうとしている東京である。だから、今朝もクリーニング出しながら、自然とお店のおばちゃんに“過ごしやすい季節になってきましたね”と声をかけたダンディな評者なのである。このおばちゃんとは、毎回クリーニングを預け出しするたびに、そういう時候の挨拶を交わす関係なのである。で、普通にそういう会話が口に出た評者なのだが、おばちゃんの返事はこちらが予想もしないものだった。“あんた、あたしになんか恨みでもあるのかい?”っていうのは、実は評者お得意のデフォルメ表現なのだが(笑)、でもかいつまんで話すと、おばちゃん、この季節の移ろいを喜んでいないのである。花粉症なのだそうだ。今からが本番なのだそうだ。杉が終わっても、まだ檜だらなんだらの花粉に対してももアレルギーがあるそうで、今から5月まで苦しい毎日が続くそうなのである。“もう30年もこれだから”っていうから、花粉症の歴史も相当古いらしい。評者が12歳の頃から、このおばちゃんの花粉症は始まったらしい。まあ、30年というのはざっとであって、来年訊いても“もう30年もこれだから”と言うとは思うのだがね。そいでもって、こういう風に付け加えるおばちゃん“今日、お昼頃雨になりそうだっていってたからさあ、お湿りがあれば花粉も流されて、少しはいいんだけどね。まあ、お勤めの人は雨降ったら大変だろうけど、あたしゃ降ってほしいなあ”って。これはつまり、おばちゃんの「雨乞い」である。「あまごい」である。本書の題名も『雨恋(あまごい)』である。評者はふざけているのである。

 というのも、本書『雨恋』を読んで感想書こうにも、ちょっと気分的に後味が悪いからなのである。面白くなかったとかそういうことではなく、なんか自分が読むべきでなかった本を読んで、それの感想を述べるのは松尾由美ファンや本書を絶賛している方々に申し訳なく感じるからである。まるで、小学生の娘が読んでいる『ちゃお』を評者が勝手に読みだして、“これ、面白くないねえ”と吐いて、面白いから買って読んでいる娘に喧嘩を売るような気分である。もう少し冷静に判断して、読むべきではなかったのである。自分には合わないであろうことを予測して・・・。

 恋愛ものである。それも淡い恋愛ものである。少女マンガを読んでいるような読書中の評者。もどかしくて、先が見えてしまうのである。猫が出てくる。猫は必要あったのだろうか?と思ってしまう評者なのである。雨が出てくる。雨はそこまで重要なファクターではなかったんじゃないかと思ってしまう評者なのである。猫を犬に代えて、雨を空気中の花粉の飛散状況に代えてもよかったんじゃないかと思う。要するに、評者にはもう少女心をわかろうとする若さがなく、はっきり言ってオジンなのである。野暮なのである。これを読んで反感を抱いた女性の方に嫌われても結構と思うくらい、別に今更好かれんでも、ふん!と開き直ってしまうくらいにはオジンなのであるのことなのよ。

 で、本当のところの一番の問題は、最初の設定を読んだときに漠然と想像した、少女を死に至らしめた犯人、その動機と行動、そして淡い恋の行き着く先の描写がそのまま想像通りだったことにある。犯人も動機も結末もわかっていながら、少女チックな物語を読むのはなんか読書した気にもなれなかったのである。ショートショート10頁で表現すればいい話を長々と読まされたような・・・。まあ、読むべきでなかった本を読んだのはこれ評者の罪で、このへんで批判的なことは止して、本書の好きだったところの話へ。

 一人だけ、魅力的な人物が登場する。3年前に死んだ少女の事件のあらましを、主人公に協力して調べてくれる警察官なのであるが、こいつがストーカーでオタクなやつで、その行動や言動が可笑しいのである。わけのわからん写真を所持していたり、亡くなった少女は処女だったに違いないとどうでもいいことにこだわったり・・・。評者としては是非こんなお馬鹿な人物を主人公に据えた物語を松尾由美様にお願いしたいのだが(^.^)

 文芸評論家大森望氏が本書を大絶賛ということで読んだ評者である。それを聞きつけてかどうかわからないが、多くのネット書評サイトが次々と取り上げ、比較的評判のいい物語である。Amazonでも☆5つである。だから、面白い人には面白いはずの物語なのであろう。ということで、そういう人たちの迷惑になるといけないので、今回はTBされないかぎり、TBしないことにしよう。そのくらいには礼儀をわきまえた、ダンディでオジンな評者なのである。(20050317)

※本書の中に、猫の遊び道具としてキャットタワーというのが出てくる。一応想像通りであったが、ネットで調べてみた。『【楽天市場】キャットタワー:快適ねこ生活』(書評No495)

追加:キャットタワーの実際はこちら モデル:ココさんちの猫さん

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by kotodomo | 2005-03-17 17:00 | 書評 | Trackback(3) | Comments(12)
Tracked from 猫は読書の邪魔をする at 2005-03-17 14:57
タイトル : 松尾由美 『雨恋』
雨恋 松尾 由美 雨の多かった年、しばらく海外に行く叔母のマンションに、叔母の二匹の猫と共に住むことになった渉。ある日猫の様子が変なことに気づき、何もない空間から女性の声が聞こえてくる。それは三年前、その部屋で自殺したことになっている女性の幽霊だった。 幽霊が出てくることで、SF。幽霊の彼女の、死の真相解明を渉が負うのがミステリー。そして、二人の決して結ばれることのない関係が切ないラブストーリー。そんな三つをミックスした物語でした。 雨の多い秋、その雨の日だけ渉の部屋に出てくる...... more
Tracked from 活字中毒日記! at 2005-03-17 23:32
タイトル : 第2回新刊グランプリ加点前ランキング発表!
第2回新刊グランプリ!(第1回の最終ランキングはこちらの通常投票は3/15で締め切らせていただきました。 合計711票ものご投票誠にありがとうございます。 現在までの加点前確定ランキングは次の通りです。 1 『天国はまだ遠く』 278点 (8.4) 2 『夜のピクニック』 254点 (8.7) 3 『グラスホッパー』 219点 (7.5) 4 『幸福な食卓』 215点 (8.9) 5 『犯人に告ぐ』 177点 (7.6) 6 『明日の記憶』 164点 (9.1) 7 『そのときは...... more
Tracked from Ciel Bleu at 2005-05-22 12:52
タイトル : 「雨恋」松尾由美
 [amazon] [bk1] 急にアメリカに行くことになった叔母の代わりに、叔母のマンションに住みこんで2匹の猫の面倒をみることになった渉。しかしそのマンショ...... more
Commented by ココ at 2005-03-17 15:06 x
聖月さん、こんにちは。
それではこちらから、TBさせていただきまーす。いろんな意見がありますよーということで。
私はこの雨という設定が雰囲気出ていて良かったのですけれどもね。花粉だなんて!ダメです!今日は雨降りだっていうのに、目が痛い私なのです。
ところで、キャットタワーはウチにもあります。猫も二匹います。上下運動・タワーの柱で爪とぎ・天辺から外を眺める……というふうに、とても役立っております。
Commented by 聖月 at 2005-03-17 15:12 x
ココさん、さすが「猫は読書の邪魔をする」というサイト名だけあって、本当に猫は読書の邪魔をするのでキャットタワーで勝手に遊べよって魂胆なのですね(^.^)
私は一度も見たことなかったので、サイトで調べたのですよ。結構コンパクトだなあというのが印象で。どういう風に飛び渡るのか見てみたいものです。
花粉症じゃダメ?ココさんにも今日のお湿りよかったようですね(^.^)
Commented by ココ at 2005-03-17 15:26 x
度々すみません。
キャットタワーの使い方の一例をと思いまして。ウチのは小さいタイプですが、柱の部分をガシッと抱えてワッセワッセと上に登っていきます。
名前のところに猫日記のURLを貼りましたので、よろしければご覧くださ~い。
Commented by 聖月 at 2005-03-17 16:14 x
はい、ココさんちの猫さんに本文登場願いました。
猫も元気なもんなんですねえ。
Commented by 四季 at 2005-05-22 13:13 x
聖月さん、こんにちはー。
あれ、今回はTBされない限りしないって…?(笑)
でもこの作品、私も☆5つではないのでご安心を。
松尾さんの作品はこれまでのところ全部読んでるし、
すごく好きな作家さんなんですけどねー。
悪くはないし楽しめたんですけど、感動するほどではなかったです。

それと、キャットタワー、気になってたんです。
楽天のもいいけど、ココさんのとこの写真で凄くよく分かりました!
ありがとうございます(^^)。
Commented by 四季 at 2005-05-24 16:52 x
聖月さん、忘れちゃいや〜ん。(笑)
Commented by ヾ(=ΘΘ=)ノ at 2005-05-24 18:34 x
きっと目にウロコがついているんでしょう。(四季さん、横から失礼します。私も、なんでレスしてないんだろう、って気になってたものですから…。)
Commented by 聖月 at 2005-05-24 23:12 x
四季さん、おまけにタマさん、本当に全然、目に入っていなかった、このコメント!!本当に目くそのせいだかも。

で、気を取り直して・・・あ!TBされない限りって、近いも忘れているし・・・
で、もう一回気を取り直して・・・やっぱ、読書中に気になったものは調べる几帳面な私なのです。ためにならないようなものと、いつ読んでもわからないファッションの描写とかはホットイテおりますが。
しかし、猫ちゃんも贅沢ですなあ。でも、狭い環境には欠かせないのかも。
Commented by 四季 at 2005-05-25 06:51 x
そっか、目にウロコがついてたんですね…
相手をして下さってありがとうございます(^^)。>タマさん

…ということは、私はハンドキャリー並?!(違)

や、イオリンにはぜひとも頑張って頂きたいですね。
(なんつーレスしづらい書き込みなんだ 爆)
Commented by 聖月 at 2005-05-25 07:31 x
イオリンは、『てのひらの闇』が出た頃、講演会を聴きに行きました。
私が聴衆の一人として「主人公は、アル中タイプが多いみたいですが、これは酒好きの作者が反映されているんですか?」と訊いたら苦笑していました。
ボトル一本空けるような飲み方をされる人なんですよね。
イオリンの不調を聞いて、自分も節制せななあと考える今日この頃なのです。
Commented by B.Rose(ぶろ) at 2005-05-25 23:33 x
いや、私もヾ(=ΘΘ=)ノちゃんに続いて突っ込むべきか…と悩んでおりました(笑)。気付かれて、よかったよかった。
イオリン、そんなお酒の飲み方されるのね。頑張って回復して欲しいです…。ホントに聖月先生も飲み過ぎないようにね。って今夜も飲み会じゃなかったっけ?・・・
Commented by 聖月 at 2005-05-26 10:57 x
今夜も飲んでいましたあ(^O^)/あ、もう昨夜か。
私、レスの不義理はじぇーったいしませんので、そういうときはいつでも教えてくださいませ。
イオリンは、作中の主人公みたいな飲み方するようですよ。
あと、徹マンなんかも。そういうのがあって、ああいうハードボイルド作風が生まれるのですよね。


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