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2005年 04月 02日
いやはや、伊坂幸太郎。才能溢れる人だ。楽しく読める作品だ。本当にこの人って頭いいぞ。頭いいのが文章読んでいてわかるくらいだもの。ところで、評者の家の近くに、公民館がある。ここは鹿児島市立図書館の分所も兼ねていて、評者もちょくちょく覗いている。借り手の競争率が低く、新作がそう多くは入らないものの、入った新作は比較的借りやすいからだ。今回の収穫が本書『重力ピエロ』。書棚で見つけ、ひったくるように借りてきた。どんな内容かも知らず、ただ伊坂幸太郎という著者の新作というだけで。ページを開いて眺めてビックリ。目次のところに章題が58も書いてある。もしかするとこれは短編集なのかな?それにしても各章のページ数が少ない。もしや、評者の好きくないエッセイ集かしらん?と思いながらも、読み出したら間違いなく長編小説。それもすこぶる面白いお話。各章の題名は、単にその部分のキーワードを拾った程度のものなのだが、それにしてもよくぞここまで区分けしたと感心しきり。 結局、これまで評者が読んできた伊坂作品は、本書も含め、どれもミステリーといえばミステリーなのだが、ミステリーが肝心ではない。謎が解かれようが解かれまいが、そんなのはどうでもいい気にさせてくれる、とにかく心地良い文章なのである。特に本書は顕著。少しハードボイルド風味を効かせていて、会話の妙などは、もう絶品といえよう。 本書の内容ををひとことで表すなら、通常は遺伝子と連続放火事件に材をとったミステリーと言うのだろうが、誤解を恐れずに言わせてもらえば“世界最強の家族のハートウォーミングなお話”である。主人公には弟と父親がいる。愛していた母親は数年前に亡くなっているのだが、それぞれの人間が最高の人間で、亡くなった母親も含め最強の家族を構成しているのである。容姿も知能も最高の弟は、一人でなんでもできるのに、社会人になってからも、肝心なことは兄貴と一緒にやろうとする。兄貴さえいれば大事なことはうまくいく、そういう根拠のない純粋な心を持つ弟なのである。癌で入院中の父親の病室を二人揃って尋ねると、父親が言う「おや、今まで二人で一緒に遊んできたのか?」これは、小さい頃からの父親の口癖。外から一緒に帰ってくると必ずこう言う。「うん、一緒に遊んできた」と答えると、嬉しそうな顔をする父親。そこに挿入される美しく強かった母親の思い出。ハードボイルドでハートウォーミングな家族小説なのである。 冒頭で、頭のよさが文章ににじんでいると表現したのは、DNAの話とか、そんな知識系のことではない。そんなのは、調べれば誰でも書ける。もっと感覚的な才能だ。自分の表現したいものを会話に託すのか、伏線を張らせるのか、そういった感覚が絶妙なのである。多分一年以内に、今以上に名前がブレイクするだろう、伊坂幸太郎。横山や福井や戸梶のように、伊坂の名前で通じる作家になるだろう。太鼓判。(20030520) ※評者は、この本の中に登場する母親に憧れる 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-04-02 01:46
| 書評
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