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「本のことども」by聖月

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2005年 04月 02日

〇「チルドレン」 伊坂幸太郎 講談社 1575円 2004/5

〇「チルドレン」 伊坂幸太郎 講談社 1575円 2004/5_b0037682_11122271.jpg 東京に出てきて新しい仕事で頑張っているのだが、顧客と呼べる会社がいたるところに散らばっているので、今現在東京で単身でいるのが家族単位で考えたとき出張みたいな心の位置づけにしているのに加えて、本来の意味での出張が入ってくるわけである。先週は、前半が沖縄、後半が仙台である。沖縄も着いた日には天気がよく、鹿児島にはない日差しの強さに感動したのだが、2日目からは雨。梅雨の雨と、近づいている台風の雨。当然蒸し暑く、本場もんの梅雨を体験してきたのである。東京に戻っても雨。加えて人、人、人。帰りの電車の中も、蒸し暑くって、くそ暑い。

 で、翌日仙台へ。『ラッシュライフ』の書き出しのように新幹線で仙台へ。駅に降り立ち、外へ出て街を一望したとき、相棒に冗談で言った言葉は“俺さあ、仙台支店作るわ。そいでもって、東北エリア攻めるわ。こんな街に住んで仕事するべさ”。いやあ、杜の都仙台は見ただけで、素晴らしい街。道路は広いし、緑は多いし、加えてカラッと風が気持ちよいのである。この街を舞台に伊坂幸太郎君は作品を書き続けているという事実も、また街の魅力に加えられてしまう要素でもある。駅を見回す。街を見回す。伊坂が書いた犬を連れた情けない中年男や、奇妙な泥棒や、宝くじや、変なカップルや、落書き消しの弟やその兄や、地図を見ても載っていないような島や、そんなものがすぐそばにありそうな街仙台。素敵な街なのである。おい、相棒。本当に俺仙台支店作るからな。そいでもって、東京離れるわけにはいかないから、取締役東北エリア統括ゼネラルマネージャーなんてわけのわからん肩書き作って、出張バンバンだからな。取締役東北エリア統括ゼネラルマネージャーだからな。早口言葉の練習しとけよ。

 で、本書『チルドレン』である。素敵な街仙台に、目は見えないけれど素敵な頭脳と素敵な盲導犬を持った好青年がいるかもしれなくなったのである。若い頃銀行強盗に出くわして、今は家裁に勤めるハチャメチャな男、陣内がこの街にいるかもしれなくなったのである。多分、評者は今回の出張でどちらの人物も目撃した。盲目の好青年が公園のベンチで素敵な女の子と会話しているのを見たし、陣内と呼ばれる男が隣のボックス席で牛タンを食いながらとんでもない理論をぶっているのにも気付いた。仙台は、伊坂の書く登場人物たちで、もっともっと素敵な街に成長中なのである。

 しかしこの作品、これまでの作品からすれば静か過ぎて、頁を繰る手のスピードが1/2である。おまけに読みながら4時間も昼寝してしまったりして、これまでの伊坂作品はほぼ一日で読了したのに、今回は2泊3日かけて読んでしまった。そう、少しおとなし過ぎる作品である。作者は帯に、短編集じゃないですよ、短編集に見せかけた長編ですよ、と書いているが、やはりどう読んでも連作短編集。ハチャメチャ陣内が、若い頃に遭遇した銀行強盗事件に軸足置いて、時間や視点を変えて書いた連作短編集なのである。伊坂ファンに失礼なので、細かい内容には触れないが、もしこれが長編だと作者が主張するなら、陣内とその父親の関係にポイントを置いての主張かな?陣内という主人公、どうも昔から自分の親父と訣別しているらしい。最初の作品から、そのことに触れられている。なんでも、一度親父を殴ったらしい。それも、親父に殴ったのは自分だと気付かれないシュチュエーションで。どうやって?読者はそう思う。最終章、直截に親父は出てこないが、でも親父が登場する(←読んでみないとわからん表現だが)。そして、陣内がいかにして親父を殴ったのか、そういったことが間接的に表現されて物語が収束するところが、作者の言う長編なのかな?

 評者的に明らかに失敗だと思うのが題名。これまでの作品群は、その題名に妙があった。今回は『チルドレン』。ところが、読み終えてもどこが『チルドレン』だったのかよくわからないのである。なるほど、各章題にもチルドレンという表題と同じ作品もあるのだが、それでもなぜ章題がチルドレンなのか納得できない評者なのである。伊坂の高尚な作品を消化するには、評者はまだチャイルドなのかな?(20040606)

※仙台に出張すると言ったら、みんなが牛タンだねと言う。なんで牛タンなのと訊くと、だって牛タンじゃんて答える。なるほど、伊坂作品には描写はないが、街中牛タンの幟が。お土産にも牛タンの真空パックが並ぶ。仙台に行ったなら、牛タンを食いなさい、そういう状態なのである。そこで少し疑問が。札幌と言えばラーメン。当然地元の人もラーメン好き。いや、ラーメンが好きで今の札幌ラーメンが育って、観光的にもシンボルとなったのだろう。大阪といえばお好み焼き。これも同様か。じゃあ、牛タンは?仙台の人たちは牛タンばっか食ってきたのだろうか?それとも仙台牛はベロが2枚も3枚もついているのが特徴なのか?いや、牛タン卸業者が集中しているのか?ネットで調べればって?いや、いい。どうせ取締役東北エリア統括ゼネラルマネージャーになって、バンバン足を運べば、いずれは氷解する疑問なんだから。

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by kotodomo | 2005-04-02 11:13 | 書評 | Trackback(14) | Comments(0)


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