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「本のことども」by聖月

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2005年 05月 13日

▲「泣かない女はいない」 長嶋有 河出書房新社 1470円 2005/3

▲「泣かない女はいない」 長嶋有 河出書房新社 1470円 2005/3_b0037682_10501633.jpg 表題作「泣かない女はいない」と「センスなし」という二つの中編、それに秘密の短編を収めた本書である。

 秘密の短編?と思うかもしれないが、本当に秘密の短編なのである。目次には二つの中編の題名しか書いていないが、注意深い読者は奥付にそれぞれの短編の初出が書いてあるのに加え、もう一つの秘密の書き下ろし短編の題名が書いてあるのに気付き、どこに?と思われるわけである。

 そういえば、長嶋有ご本人のサイトだったか、そこで発行されるメルマガで書いてあったのか忘れたが、大体のところでいうと、こんな発言をしていたのを思い出した評者である。“長嶋は(ご本人はご本人のことをこう呼ぶ)、本を借りてでも読んでくれる読者も好きだけど、買ってくれる読者はもっともっと好き。だから差別しちゃうもんね”って。だから、差別した結果、図書館から借りた評者のような輩には、わからないようなところに、読めないようなところに短編を収めやがったのである(笑)。その場所とは、表紙カバーの裏。書いてあるのはわかったが、しっかりパウチしてあって、やはり読めなかったよ~(ToT)。

 こういう本に出会ったのは2回目かな。1回目は・・・次のような感想を評者は書いている。「ところで、本書を読み終えて、最後に大きな謎が出現した。最後の発行者、発行年月日が記載されたページに、写真:某氏(要するに誰か人の名前)と書いてある。写真なんかあったっけ?と思っていると、ヘア&メイク:某氏、スタイリスト:某氏とその下にある。あれ?著者近影でもどこかにあったっけ?と思ってよく探してみると…図書館で借りた本書の表紙カバーはナイフの絵、表紙カバーと本体は離れないよう留めてあるのだが、その隙間は覗くことができる。覗いてみると、なるほど、この表紙カバーの裏にもデザインがほどこしてあるのか。納得。ということは、この表紙カバーを反転してかける読者もいるわけか。ちょいと不気味。確かめたい方は、是非書店で手に取ってお確かめあれ。(20030509)」 。そう乙一の『GOTH』。これには、少し不気味な、確か女性の綺麗な(?)死体か何かの写真があったんだよな。同様に、注意力のない読者でも、カバーを裏返しにかける癖のある(最近はいないような)読者なら“あれ?”っと思う洒落た、図書館派には意地悪な(笑)趣向なのである。

 ところで内容だが(といいながら内容は書かないが)、温(ぬる)い。それ自体はこの作者の持ち味なのだが、◎◎『猛スピードで母は』とか◎◎『パラレル』などは、温くても評者には長湯に丁度いい39,5度なのだが、本書や〇『ジャージの二人』などは、36度くらいしかなくてちょっと温過ぎ!って感じなのだなあ。工場勤めの女性主人公の何気ない話、旦那と別れる寸前の状態のこれもやはり女主人公の話なんだけど、さりげないことをさりげなく書いてあり、感性は評者好みなのだが、やはり温過ぎなのである。ちょっとしたアイテムなんかも、もう少し意味深に配置してあれば、また変わったのかもしれないが・・・

 この作家の、粗筋のない小説は好きなのだが、もう少し粗筋に代わるものが欲しくて物足りない小説、そんな感じの小説である。いい意味でいえば、感性の小説かな。(20050511)

※もう少し、男性読者を意識したような小説も読んでみたいなあ(書評No518)

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by kotodomo | 2005-05-13 10:50 | 書評 | Trackback(4) | Comments(2)
Tracked from おもしろい本/おもしろい.. at 2005-05-14 06:46
タイトル : 長編、短編、超短編、詩文、コラムのサイト。
ネットで読める長編、短編、超短編、詩文、コラムのサイトです。 七月に上梓する本「ノーベンバーレイン」の情報も載っております。 http://www.kubolion.com/ 読みやすいものがそろっていると思います。 時間があるときに覗いていただければ幸いです。 窪璃音(くぼりおん) 人気blogランキングに参加しております。 ↑クリックしていただけたらうれしいです。 ... more
Tracked from でこぽんの読書日記 at 2005-05-14 15:43
タイトル : [読書]泣かない女はいない/長嶋有
ISBN:4309017053:detail★☆ >>  睦美の乗る電車は「シャトル」と呼ばれている。モノレールと電車のあいのこのようなもので、とても小さい。下手をすれば隣ではなく向かいの席の人と膝がぶつかりそうになる。車高も低いので最近の発育のよい男子学生などはなんだか窮屈そうに乗っている。冗談みたいだ。 (P8) << 私は大宮(埼玉)にはよく行くのですが、シャトルには乗ったことがありません。名前自体は知っていましたが、利用する機会がなかったですね。 こういう記述を読む...... more
Tracked from 猫は読書の邪魔をする at 2005-05-15 00:20
タイトル : 長嶋有 『泣かない女はいない』
泣かない女はいない 長嶋 有 女性が主人公の二編を収録。 でも、カバーの裏に特別に短編があります。これは購入者特典ですね。私は図書館本なので読めないのです。 どちらももの悲しい雰囲気に包まれていました。もっとユル〜イ小説を想像していたので、少し意外。 私の長嶋有の読み方は、何かを読み取ろうというものではなく、その雰囲気を楽しむということ。例えば、表題作の主人公が、出勤途中に見知らぬ者たちが毎朝同じメンバーで歩くことの法則を見出したり、またその途上、筋肉マンの妙に上手なイラストに感心し...... more
Tracked from 日々のちょろいも at 2005-05-26 15:42
タイトル : 『泣かない女はいない』読了。
 長嶋有『泣かない女はいない』の感想をこちらにアップ。  はー、久しぶりにサイトをいじっていたらつ、疲れた…。(ー_ー;) 身から出たさびだけど。くすん。  初めての長嶋有は心地よい読み心地ながらひと味足りないような気がしないでもない。他の作品はどうな... more
Commented by でこぽん at 2005-05-14 15:48 x
聖月さんは、長嶋有とは相性が良いようですね。私はダメでした。もともと純文学は好きじゃないっていうのもあるのですが。
聖月さんもおっしゃってるように、温過ぎですね。もう少しストーリー性があったらなと思った次第でした。では~。
Commented by 聖月 at 2005-05-15 08:18 x
相性ではなく、出会いのほうが強いですね。
最初に読んだのが『猛スピードで母は』。近年の芥川賞受賞作品の中では、非情に自分に合った小説でしたね。
その後、リアルで追っていますので、もっとガンバレみたいな感じで読んでいますね。
あと、粗筋はなくとも、文芸的表現は拾って読んでいますので、そこらへんでかな?


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