「本のことども」by聖月

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2005年 05月 22日

◎「永遠の出口」 森絵都 集英社文庫 580円 2003/3 

b0037682_8281327.jpg 『本の雑誌』2003/8月号で、上半期のベスト1に輝いた作品である。連作短編集であり、一人の少女の成長を描いた物語である。少女小説、家族小説、成長小説として楽しめる本書である。と思ったのだが…

 前半の3篇、少女の小学校時代を描いた部分は楽しめなかった評者なのである。本書に収められている作品は1999年11月から2002年2月のあいだに『小説すばる』で発表されたものである。多分、著者は、書きはじめた当初は重松清『半パン・デイズ』のような作品を書くつもりではなかったのだろうか。大人の誰もが忘れているが、思い出すと懐かしくなってしまうような、そんな幼い頃の日常を。それが評者には、合わなかった。少年たちを描いたものなら、ああ、そうだった、そうだった、なんて共感するのだが、少女たちのことはわからないのである。少年たちは仲間を増やすが、少女たちはグループを作って垣根を作る。少年たちがグループを作って垣根を作っていたら、草野球チームは作れない。根本的なところが違うのである。

 あっ!!思い出した!!女のわけのわからん行動を。評者がはしかという病で2週間近く学校を休んだのは、周りの人々より相当に遅い、中学一年の3学期である。当時、つきあっていた子、というよりは、仲のよかった、そのまま放っておけば恋愛などというものに発展したかも知れない、そんな関係の女の子が電話してきて"休んでいる間は、私がノートとっておくから心配しないでね♪"という。全然心配してないし、ノートとってもらったらあとで見るのが面倒だな、と思っていたハードボイルドな少年評者だったのだが"ありがとう"と返す。で、やっと病が治って学校に復帰したら、その子、ノート持ってこないのである。というか、口もきいてくれないのである。なんど?と思っていると、昼休みに、赤い縁の眼鏡がよく似合う学級委員長タイプの学級委員長の女の子が"はい、これ、ノートとってたの♪"って。2日ほど経って、やっと先の女の子が口をきいてくれるようになって"ノートとっててくれたんでしょう?"って問うたら"学級委員長タイプの学級委員長の女の子から、もう貰ったでしょう。なら、私のとったのいらないでしょう?"という。メンドイなあ、と思いながら、"いや、ありがとう。キミのとったやつ見たいんだ"とかなんとか少年評者。結局あとで聞いた話を総合すると、なんでも、彼女がノートとりだしたのに気付いた学級委員長タイプの学級委員長の女の子が"これからが勝負ね"と彼女に宣言してノートを取り出したらしいのである。このセリフ、臭いが本当の話らしい。そして、どういうバトルがあって、どういう経緯になったか知らんが、復帰当日の現象が先の話なのである。ワカラン…。ノートとっててあげる、っていったんなら、復帰当日ノートを何故渡さない。女二人のバトルは、自分の知らないとこの話じゃ。それに学級委員長タイプの学級委員長の女の子のほうも、臭いセリフ吐くなよな。俺たちゃ、"どげんしたとかでごわす"が日常語の薩摩人だぜ。何が、これからが勝負ね、じゃ。せめて"天下分け目の天王山が始まったごとごわす"とか言え。ボケ。

 ところで、その彼女たち。学級委員長タイプの学級委員長の女の子のほうは、今は法務関係の公務員で鹿児島で活躍しているとのことだ。ずっとお会いしてはいないのだが、話は聞こえてくる。もう一人の彼女は、結局ノートとってくれた頃をピークにして、成績が下がり、不良な心が芽生え、結局のところ、中学卒業してからの話は聞こえてこない。さてと…

 家族小説の部分はよい。両親と、中学生の主人公と、姉の四人で別府へ家族旅行。いろんな家族の思惑があっての旅行なのである。少女の視点で語られるのだが、少女と姉、少女と母、その女三人の視点の向こうに父親がいる。タイプは違うが、これは評者である。家族構成が、評者と一緒である。女三人と一人の男。そういう家族の旅路に、少し自分の将来が重なる評者なのである。

 ところで、2003年11月1日から2日にかけて、今回の衆院選絡みで大分は別府へ飛んだ評者なのである。飛んだというのは、実はこれ間違いで、鹿児島~大分間はこれ飛行機ないので、高速で行って途中の山並みの紅葉をやり過ごし、帰途は特急で帰るという這いつくばった旅路の評者なのだったが、やっと鹿児島へ戻り、タクシーに乗った評者に運ちゃんが"どちらまで行かれたんですか?"とのたまう。"大分、別府ですよ"と評者。"ああそうですか。私も今度行くんですよ、大分。みんなで紅葉を見に。国東半島のお寺さんのほうへ。"ああ、そうですか、いいですね、と、なんで自分が相槌うって接待せにゃならんかという考えは置いといて、その時、なんで国東半島?お寺?熊本から大分への有名な"やまなみハイウェイ"じゃなくって?と思った評者なのである。期せずして本書を直後に読んだ評者の疑問は氷解。主人公家族も、その地へ紅葉を見にいくのである。ちょっと素敵な場所の描写に、娘たちが中学くらいになったら、行ってみようかなあなどという想像が評者の胸に去来する。

 そして、成長小説としての本書もよい。多分、長期に渡って作品を作り上げていくなかで、作者の筆の方向も修正があったのかと思う。小学校時代の話は文章に遊びがなく、切々と事象を重ねて表現しているが、中学以降の部分は筆に勢いがあり、うまい筆の遊びもあり、これこそ自分が『DIVE!!』シリーズで知っている森絵都じゃ!と楽しく読んだ評者である。多分、評者が幼いとき少年でなく少女だったら、評価は◎◎だったのかもしれない。わからない。(20031110)


※最初2編読んだ時点で、こういう話が続くのなら、読むのをやめようと思った評者である。鹿児島市立図書館で借りる。

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by kotodomo | 2005-05-22 08:28 | 書評 | Trackback(8) | Comments(2)
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迎撃って・・・
なるほど、『本の雑誌』2003/8月号で上半期のベスト1に輝いた由緒正しい作品だったのですね。知らずに読んでました(笑)
『DIVE!!』シリーズもあたってみます!
Commented by 聖月 at 2005-05-22 09:14 x
迎撃・・・悪意はございません(^.^)
だって、乃太郎さんにTBするだけのために発射台に用意したんですものって意味。

うんうん『DIVE!!』シリーズも迎撃したいし、重松清の『半パン・デイズ』とか『流星ワゴン』も迎撃したいなあ(^.^)


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