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「本のことども」by聖月

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2005年 05月 28日

◎「ボストン、沈黙の街」 ウィリアム・ランディ ハヤカワ文庫 1050円 2003/9

◎「ボストン、沈黙の街」 ウィリアム・ランディ ハヤカワ文庫 1050円 2003/9_b0037682_2353554.jpg 毎月のように鹿児島と東京を往復する評者にとって、本当に東京ってところはどこか荒んだ街だなあと感ぜられる。まず、繁華街や駅であんなにせかせか歩いたり、歩行中の進路が色んな人と重なってしまうようなことが日常現象として存在していること自体が鹿児島では考えられないし、例えば評者の住んでいる洗濯物が荒川区のように、道を歩いている人の約4割が日本語以外の言語(多くは中国語)を話しているような異様な光景も考えられない。鹿児島では人が殺されようものなら3面記事の多くの部分が割かれるが、東京の場合は場合によっては隅記事である。じゃあ、鹿児島では殺人事件が起きなければどういう記事に紙面が割かれるの?と思われるかもしれないが、う~ん、交通死亡事故なんかが多いかな。一度などは、落雷が牛舎に!牛100頭が死亡!なんてのが大きく載っていたっけなあ。東京なんかでは、交通死亡事故、載るか載らないかわかんないし。とにかく、事件性のある事件のほうが多いんだし。牛が100頭死ぬなんて、事件性のない事件だし、みたいな(^.^)

 だから、鹿児島の、例えば僻地の、例えば三島村の硫黄島の駐在さんなんかが、東京の新宿あたりに職務で放り出されたら驚くだろうなあ。繁華街も物騒だし、ホームレスなんて基本的に鹿児島にはいないし、みたいな(^.^)

 本書の主人公ベン・トルーマンは、田舎の若き署長を務める。避暑地の湖なんていうのがあって、ロッジなんかに夏だけ観光客が来るようなそんな田舎。そこのロッジで射殺死体が発見されて、このサスペンスは動き出す。

 ところが、事件の根源はボストンにあり。いざ、ボストンへ出向く主人公。猥雑な都市での、協力と反目、真実と罠、友情と裏切り、恋と職場、そんなものに塗れながら、主人公は事件の真相へ向かって進んでいくのである。

 しかし、本書、新人の長編デビュー作という観点を考慮に入れずとも、実に大作、実に傑作、実に衝撃作であり、ジョン・グレシャムあたりのデビュー作を彷彿とさせる。サスペンスではあるが、どこかのんびりした主人公の空気も悪くないし、そしてその空気が一転張り詰める終盤は、衝撃的なミステリーの世界なのである。

 このミス2004年版海外編7位ランクイン作品。そういえば、そういうのあったなあ、読もうと思っていたけど結局・・・そんな方は是非に読むべし。読んだらやっぱり面白かったあ(^O^)/(20050528)

※鹿児島の薩摩半島の南に位置する三島村の硫黄島というマイナーな地名を挙げたが、実はこれ、今鹿児島の我が家では話題の地名なのである。来週の月曜日から、上の娘が学校行事として一泊二日でこの島へ宿泊学習に行くらしい。トイレの設備が充分でないとか、野外学習で虫に刺されたくないとか、おまけに海が荒れると本土に帰れなくなる惧れがあるので予備の食料を持って行かされたりとか、なんでそんなとこに行かなきゃいけないの!と上の娘は不機嫌らしい。遠足の前とかはウキウキしているらしいが、今回は一切その話に触れようとせず、おまけに準備もする気がなく、仕方なく嫁さんがお米をペットボトルに入れてえ、予備の水も持たせてえ、みたいな準備をしてあげているらしい。下の娘は“私、5年生になっても宿泊学習は行かないし♪”と今から宣言しているらしい(^.^)(書評No523)
◎「ボストン、沈黙の街」 ウィリアム・ランディ ハヤカワ文庫 1050円 2003/9_b0037682_1653515.jpg


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by kotodomo | 2005-05-28 23:52 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from 辻斬り書評  at 2006-03-07 20:09
タイトル : 「ボストン、沈黙の街」ウィリアム・ランディ / 警察小説..
アルツハイマーに罹患した母を介護するため、歴史家の夢を捨てて故郷の田舎町に帰ってきたベン・トルーマン。 引退した父の跡を継いで小さな警察署(と言っても、派出所くらいの規模だが)の署長に就任した彼の、印象的な独白から始まるこの小説は、2004年度の「このミ... more


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