人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「本のことども」by聖月

kotodomo.exblog.jp
ブログトップ
2005年 06月 08日

◎◎「P.I.P」 沢井鯨 小学館 1200円 2000/7


 副題が「プリズナー・イン・プノンペン」。カンボジアで無実の罪で囚われた日本人の話で、作者の実体験をもとにしたものである。大きな流れはそういうことである。勿論、今、小説を書いているということは、無事釈放される結末であることも間違いない。しかし、次の二つの点で、読む者をグイグイ引っ張る筆力がある。

 一つは、文章のうまさ。カンボジアに住みついて、女を買うことしか頭にない下品な日本人たちの下品な会話も、そのテンポの良さに引き込まれるし、現地の清楚な少女に寄せる思い、その少女の何気ない立ち居振る舞いの描写についても圧倒的なものがある。

 二つめは、カンボジアを中心とした東南アジアの歴史に触れる挿話の面白さ、わかりやすさ。ポル・ポト政権が何をしてきたのか、何故虐殺がおこなわれていったのかを非常にわかり易く教えてくれる。いわゆる教本の側面を持っている。これを読めば、何故、数年前のカンボジアの選挙が世界の注視・監視の中で行われなければならなかったのか、何故ベトナムは南北に分かれて戦わねばならなかったのか、そういったことまで理解できる。

 カンボジアで日本人が囚われ釈放された話。そういった表現や紹介のため、この傑作はそこまで話題にならなかった。評者超お薦め本である。読むべし。

※インターネットで買ったが、一部書店には置いてある。鹿児島県立図書館にもあり。

書評一覧
↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら

by kotodomo | 2005-06-08 20:08 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)


<< ◎「私の事件簿」 中坊公平 集...      ◎◎「刑事の誇り」 マイケル・... >>