|
2005年 06月 08日
副題が「プリズナー・イン・プノンペン」。カンボジアで無実の罪で囚われた日本人の話で、作者の実体験をもとにしたものである。大きな流れはそういうことである。勿論、今、小説を書いているということは、無事釈放される結末であることも間違いない。しかし、次の二つの点で、読む者をグイグイ引っ張る筆力がある。 一つは、文章のうまさ。カンボジアに住みついて、女を買うことしか頭にない下品な日本人たちの下品な会話も、そのテンポの良さに引き込まれるし、現地の清楚な少女に寄せる思い、その少女の何気ない立ち居振る舞いの描写についても圧倒的なものがある。 二つめは、カンボジアを中心とした東南アジアの歴史に触れる挿話の面白さ、わかりやすさ。ポル・ポト政権が何をしてきたのか、何故虐殺がおこなわれていったのかを非常にわかり易く教えてくれる。いわゆる教本の側面を持っている。これを読めば、何故、数年前のカンボジアの選挙が世界の注視・監視の中で行われなければならなかったのか、何故ベトナムは南北に分かれて戦わねばならなかったのか、そういったことまで理解できる。 カンボジアで日本人が囚われ釈放された話。そういった表現や紹介のため、この傑作はそこまで話題にならなかった。評者超お薦め本である。読むべし。 ※インターネットで買ったが、一部書店には置いてある。鹿児島県立図書館にもあり。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-08 20:08
| 書評
|
Trackback(1)
|
Comments(0)
|
アバウト
カテゴリ
ことどもカテゴリ
意外と書評が揃っているかもしれない「作家のことども」
ポール・アルテのことども アゴタ・クリストフのことども ジェフリー・ディーヴァーのことども ロバート・B・パーカーのことども アントニイ・バークリーのことども レジナルド・ヒルのことども ジョー・R・ランズデールのことども デニス・レヘインのことども パーシヴァル・ワイルドのことども 阿部和重のことども 荒山徹のことども 飯嶋和一のことども 五十嵐貴久のことども 伊坂幸太郎のことども 伊集院静『海峡』三部作のことども 絲山秋子のことども 稲見一良のことども 逢坂剛のことども 大崎善生のことども 小川洋子のことども 荻原浩のことども 奥泉光のことども 奥田英朗のことども 香納諒一のことども 北森鴻:冬狐堂シリーズのことども 京極夏彦のことども 桐野夏生のことども 久坂部羊のことども 黒川博行・疫病神シリーズのことども 古処誠二(大戦末期物)のことども 朔立木のことども さくら剛のことども 佐藤正午のことども 沢井鯨のことども 柴田よしきのことども 島田荘司のことども 清水義範のことども 殊能将之のことども 翔田寛のことども 白石一文のことども 真保裕一のことども 瀬尾まいこのことども 高村薫のことども 嶽本野ばらのことども 恒川光太郎のことども 長嶋有のことども 西加奈子のことども 野沢尚:龍時のことども ハセベバクシンオー様のことども 初野晴のことども 花村萬月のことども 原りょうのことども 東野圭吾のことども 樋口有介のことども 深町秋生のことども 『深町秋生の新人日記』リンク 藤谷治のことども 藤原伊織のことども 古川日出男のことども 舞城王太郎のことども 町田康のことども 道田泰司大先生のクリシンなことども 三羽省吾のことども 村上春樹のことども 室積光のことども 森絵都:DIVEのことなど 森巣博のことども 森雅裕のことども 横山秀夫のことども 米村圭伍のことども 綿矢りさ姫のことども このミス大賞のことども ノンフィクションのことども その他全書評一覧 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||