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2005年 06月 08日
今年5月に、早川書房がハヤカワepi文庫を誕生させた。その第1回配本5冊のうちの1冊。新聞広告などで、何故だか気になってしまい、近くの書店に買いに走ったら、この「悪童日記」がたった1冊だけ、"私を買ってください"と置いてあった。非常に面白かった。純文学に位置する本なのだが、子供の視点を借りて寓話的に書かれており、文章も平易で、約3時間で読み終えた。 "悪童"は、双子の男の子。戦乱期のハンガリーの片田舎で、したたかに生き延びるために、大人も出し抜けば、自分たちにも鍛錬を強いる"ぼくら"という一人称で語られる主人公である。 "日記"とは、その"ぼくら"の日々を、短い題名を冠して日記という形式を用いて描いているからである。そこに登場する人物たちは、子供の視点で描かれているので、司祭様とか、将校とか、女中とか名前のない役割で表される。戦時中の物資入手の困難さ、死と隣り合わせの現実、戦時下での奔放な性、陵辱などが、"ぼくら"の視点で淡々と語られていく。 先に寓話的と書いたが、寓話とは言わない。寓話とは、そう、「チーズはどこに消えた」のように、別のものになぞらえて、"チーズは何をあらわし、ネズミは何をあらわし、つまり作者は何を言いたい"という表現方法だ。「悪童日記」は、その平易な文章と、興味つきない内容で、最後まで一気に読ませてくれる。読み終わったら、本を閉じて、余韻にひたればそれで良い。作家は何を言いたかったんだろうなんて考える必要はない。感じるだけで良い。 また、この作品は、「ふたりの証拠」「第三の嘘」と続く、三部作へと発展していくのであるが、慌てて次作を手にとる必要もない。結果として三部作になってはいるが、これはこれで完成度の高い作品なのだから。問題作ながら万人向け、超お薦め文庫。読むべし。読むべし。べし、べし、べし。 是非、ハヤカワepi文庫に触れて欲しい。古書店には単行本で三部作とも散見。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-08 20:43
| 書評
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