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2006年 03月 02日
で、冒頭に持ってきた変な数字の羅列である。これを含めて、順を追って説明していこう。 東野圭吾という作家は旧来の小説手法に飽きたらず、新しい小説の手法に果敢に挑戦し、次々に成功をおさめている。本書では、筋の本流を書かずに、きれぎれの話をちりばめることによって本流を浮かび上がらせる手法をとっている。 大阪場末の工事途中のビル内で、男の刺殺体が発見される。刺殺体で発見された男の身元は、まだ小学生であった桐原亮司の父親であり、生業は質屋の主人である。調べてみると、死んだ父親は、殺される直前に100万円を銀行からおろしていた。また駅前でケーキを買って、娘と二人で暮らしている未亡人のところへ足を運んでいることもわかった。 本書は、未亡人の娘雪穂と、亮司の物語である。結局、この事件は容疑者の疑いをかけられた男も、雪穂の母も事故で死んでしまい、解決をみないまま月日が流れる。 そこからなのだ、上の変な数字の出現の意味は。今述べたような物語の始まりの部分は、上記数字の1にあたる。何の疑問も持たない普通の小説の始まりである。ところが、次章の雪穂と亮司が中学になったところから、いろんな物語の断片が、エピソードが、きれぎれにつづられていく。最初のうちは、話がどちらに進んでいくのか読者は迷う。ある程度進んでいくと、やっと本筋の輪郭が浮かび上がってくる。上の数字、2や3は数字自体は一筆で書いていないが、影や光をあらわすことによって、数字が浮かび上がってきている。この小説内でも、直接的には本流の話を書かなくとも、それを取り巻く光や影を表現することによって、筋の運びを行っている。最後5の部分では、また本流の話に戻って終息する。 話が進むに連れ、雪穂も亮司も徐々に成長していく。例えば雪穂のほうは、大学を卒業し結婚するが、離婚の後、子連れの男性と再婚する。そのぐらいまで成長した雪穂と亮司の物語は、最後の最後で完結する、どちらかの死をもって(←ネタばれだが、どうでもよいネタばれである)。 「白夜行」というのは、雪穂の心を表した表現である。普通の人生は、太陽に喜び、夜の暗さに怯える悲喜こもごもの人生である。しかし、雪穂は自分の人生には太陽がない、だけど微かな光を与えてくれる人がいる、まるで白夜をを歩いているようだと吐露する。 笑わせんじゃねえ、雪穂さんよ、自分の心に瑕(きず)はあるかもしれないが、人生やっていいことと悪いことの区別がつかなきゃ生きてく資格なんかないよ、あんたのような女は。。。と、これは評者の心の吐露である。 ここまでにしよう。このくらいが限度であろう、本書の紹介は。これ以上話すと、ネタばれというより、やはり読み手の興を殺ぐことが危惧される。でも、あえて言わせてもらうなら、読みながら亮司という男が、だんだん好きになってきたし、雪穂という女性は、評者の傍には存在して欲しくない。しかしながら、雪穂の顔を是非拝見してみたいと思わせるのは、やはり作者の描写力によるところであろう。 わかんない記号と、わかんない表現でダラダラ紹介してきたが、東野圭吾はうまい。そして中でも本書は珠玉の作品と言ってもいいだろう。傑作ではない、名作である。 ※県立、市立ともに図書館にあり。古書店も散見。評者はぶらり散歩買い。 2002/5文庫化 1050円書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2006-03-02 21:59
| 書評
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Trackback(15)
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Comments(4)
聖月殿、はじめまして。いつもTBさせていただいておりありがとうございます(勝手にしておりすみません。また、TBしていただきありがとうございます)。さてさて、東野圭吾はこの白夜行が初めて読んだ作品であります。自分のブログではごちゃごちゃ書きましたが、端的に『巧い』と思いました。しかし、こういったミステリーの書評は難しいですね。若輩者の私は見出しに『読了後の方に』と入れて逃げてしまいました。年末年始かけて白夜行を読み終え、これより芥川賞候補作品を17日までに出来るだけ読んで予想したいと思います。
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鬼太さん はじめまして(^.^)
確か、私も『白夜行』が最初だったと思います。その後『名探偵の掟』を読んで大笑い。その時点で、ああこの作家、ひとつの作風だけじゃないんだと気付かされました。 『白夜行』の面白さは、結局自分はどういう話を読んでいるのだろう?なんてとこがわからない部分かもしれないですね。 芥川賞、直木賞はお祭りですからね。盛り上がって、ひとつの読書のきっかけになるようなそんな受賞風景になればいいですね。
ドラマのほうを見てまして、見てから読みか、読んでから見るか、悩んでいます。ただ、今回のテレビ化で文庫版の表紙が真っ白から、キャストの写真になっていて、購買意欲がそがれたと思うのはわたしだけしょうか?
直木賞授賞作品も気になっています。 12月で図書館で300人待ち!
美結さん こんにちは。
読んでから見る・・・というほうが、先に読んでドラマを観ていない人間の本音(^.^) 見ちゃうと、本当に購読意欲薄れちゃいますよねえ。 でも『容疑者Xの献身』より『白夜行』のほうがずっと直木賞に相応しいというのが、多くの東野ファンの本音でもありますね。私も同じ。 ただ、万人向けは『容疑者Xの献身』のほうでしょうか。 |
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