2005年 06月 12日
評者の読書傾向としては、この歳(昭和37年5月7日鹿児島に生まれ鹿児島で育ち、東京の大学に行ったため、よく東京の人と間違われる。特に、福岡とか大阪とか第三都市に出向いた際、鹿児島弁のイントネーションじゃなんだかなあと思うので標準語で喋るのだが、"どこから、きんしゃったとね?"と博多美人に訊かれたりして"当ててごらん"なんて言おうものなら、その博多美人が"東京から、きんしゃったとでしょう。うち、わかるもん。雰囲気が、ここらの人と全然違うもん"なんて言われるて、その後ウソをつき続けるのが面倒になってきている中年なので、これからは"どこから、きんしゃったとね?"と訊かれたら"オイドンのことや?オイドンは東京ったい!"と、最初からウソとわかるウソをつこうと思っている。)になるまで、あまりエンターテイメント系、ミステリー系は読んでこなかった(純文学読みで育ってきた。鹿児島の学習院みたいな中学、高校を出た評者に、先生方は純文学以外の存在を教えてくださらなかったし、またご学友の中で純文学以外を読んでいた方もいたが、それは評論、小林秀雄などであった)ので、最新作とか話題作とかにこだわらず、また、これから面白い本を読んでいきたい(今までは星新一と眉村卓と筒井康隆しか読んだことがない)という「本のことども」ファン(多分27人だと思う。あ、そうか。最近、千葉県市川市にもファンの存在が確認されたから28人)のために、新旧問わず、取り上げている次第なのである。(おお、カッコを多用すると便利だなあ。文章の量が倍以上になるし、文章の流れがおかしくても多分誰も気付かないし。でも難点は、自分で筆の方向が、何を続けて書こうと思っていたのかが、あやふやになってくることなのだ) でも、あまり古い本ばかり紹介していると、たまには意識して新しい本も紹介したくなる。図書館へ出向くと、新しい本は貸し出し中が多く(「金融デフレを考える」なんて本は新しくても誰も借りていないが)、実際知らない題名の本なら、手に取って出版日付けを確認しないと、新しいのか、さほど新しくないのかわからない。そういうとき(ただ新しい本を読むという意味のない読書をしたいとき)便利なのが、ハヤカワポケットミステリーシリーズである。年末のベストには何作かランクインするくらいの叢書である上に、何より番号順に(我が鹿児島県立図書館は)並べてあるので、一番数字の大きい番号がふってあるのを借りるだけだから。本書「第四の扉」は1716番。とりあえず、置いてある中で一番番号が大きかったのと、ポケミスならではの裏表紙粗筋を読んで、確かこの本をお薦めの書評を読んだぞと思い出したからである。それにしても、著者紹介のコピー"フランスのディクスン・カー"。先に書いたように、ミステリー系を読んでこなかった人間にはわからんぞ。鹿児島のアラン・ドロンと言われる評者のようなもので、いまどきの若い娘はアラン・ドロン(@_@)?てなもんだぞ。(どうやら、本格推理小説の先人たる大家にも、負けず劣らずの本格作家と言いたいようなのだが)。おまけに"本書でコニャック・ミステリ大賞を受賞"とは。評者が"芋焼酎大賞"をもらうようなものなのか?(昨年、社内で優秀社員ということで表彰された評者だが、それより偉いのだろうか?蒟蒻ミステリ大賞)。ついでに"ツイスト博士シリーズ"と銘打ってあるが、誰もそんなの知らないし、知らないのは当たり前で本書がシリーズ一作目ということは、まだまだ続きを出すという表明なのだろうか?(多分、そうなのだろうが、もし、本書の評価が芳しくなくて2作目以降の出版をやめた日には、結構お茶目かと思う)。 舞台はイギリスの片田舎。かつて密室の中での自殺が起こった屋敷に、霊能力、占星術に長けた夫妻が移り住む。そして起こる密室殺人。犯人は誰か。動機は。方法は。そして、次の殺人が起こる。うーん、どうもおかしい。半分も過ぎたあたりで、ドルー警部がみんなを一同に集めて、謎解き、犯人当てを行う。"だから、お前が犯人だ!"というのだが、どうもおかしい。犯人と言われた人物が"いや、別にその推理で構わないのですが、そのとき私別のとこにいました。アリバイありますよ"という。さてはアリバイ工作かと思えば、ドルー警部の推理、誠に論理的なのだがその裏をとっていないだけの話なのである。で、話はまた展開していくのだが。うーん、どうもおかしい。いつ出てくるんだ、ツイスト博士。どこにいるんだ、ツイスト博士。と、いつまで経っても中々ご本人が登場しないシリーズ1作目である。普通、シリーズ3作目くらいに中だるみで使われるような手法が1作目に使われているのに驚愕(笑)。多分、シリーズ化するかどうかもわからず著者が書いた長編一作目。その後、シリーズ化されて中には名作もあっての、版権取得、翻訳化出版なのだろうな。こういうのが一番困る。今回評価▲であったが、きっと次が出たときには、これあたりが面白いのかも知れないと思い、読んで、しまった!やられた!となりそうだからである。 原題は「LA QUATRIE(上にチョンがついているE)ME PORTE」。じぇーんじぇん、フランス語を知らない評者(大学時代履修した第一外国語がドイツ語。第二外国語が英語である)であるが、クアトロでカルテットなポートと読めるので、おそらくそのまま直訳で「第四の扉」の邦題かと思う。本格推理小説は、密室とかイメージするのが面倒なので、評者の評価はどうしても低くなる。題名の意味も、読み終わってからしばらく考え思い当たった。アガサ・クリィスティーあたりを評価する人にはお薦めだろう。(20020828) ※二段組200ページのポケミス。1100円は高い。文庫600円くらいの価値しかないと思うのだが。 いや、面白さじゃなくて、分量的に。それとも版権取ったときに、ユーロ高円安だったのかと、 そこまで思い巡らす評者であった。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-12 07:36
| 書評
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