2005年 06月 19日
数学的考察と天文学的楽しみが融合した小説と聞いて、期待して読み始めた評者であったが。。。実は評者はアイザック・アシモフのファンで、彼はSF作家として有名であるがそちらには興味なく、もう一方の側面の科学者としての彼の作品群を相当読んでいるので、天文学的なエピソードには少し詳しく、対数や数列にも今でも馴染んでおり、そういった意味で深味に多少欠けた感があったのである。 ときは、フランス革命(1789年)から数年後。場所はイギリス。フランス革命に敗れた王党派(勿論フランス人)の多くがイギリスに逃げ込んでいた時代である。ここに書かれる彼らは、片方で天文に興味を持ち、もう片方で再びの王政復古を目論んでいる。しかし、たびたびイギリスからフランスに艦船を向かわせるも、毎回上陸地点の場所が漏れているのである。何かの暗号が、イギリス本土からフランスへ流れているようなのだが。暗号に興味を覚える読者なら、そういう記述を楽しく読めるだろう。 また、天文学的な楽しさの観点で言えば、太陽を中心として火星や水星、木星などの位置を数列的に関連付けると、ある謎が生まれてきて、それを中心にして論争が起こっていた時代でもある(興醒めになるので、どういう謎かは説明しないが)。 本書は、暗号の謎、天文の謎が融合したミステリーであり、このミス2003年版でも海外16位にランクインした作品である。分野として興味があればどうぞ、というミステリーなのである。(20030104) ※図書館で借りたが、翻訳物単行本は、買うには少々高値感がある。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-06-19 17:06
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