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「本のことども」by聖月

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2005年 06月 30日

〇「紀文大尽舞」 米村圭伍 新潮社 1800円 2003/8


 評者は少なくとも高校を卒業するまでは、真面目に勉強したくちである。科目の好き嫌いはあっても、どの科目も真面目に勉強していた。あまり興味のない歴史も真面目に勉強していた。勿論、日本史も。

 ところで、好きだった国語や英語や数学なんかと違い、この日本史(歴史)という科目は困りもんというか、なんか教育方法がおかしいのである。というのも振り出しに戻るという困った性格を有しているからなのである。小学校で、縄文・弥生から始まり、平安だら、江戸だら、明治だら、そして時間切れになってポツダム宣言受諾くらいで終わる歴史の授業。そして中学に入ったら、その続きの高度成長期から始めてくれるのかと思いきや、またしても縄文・弥生に戻って学び、第二次世界大戦が終わるか終わらないかというとこで時間切れ。二度あることは三度あるわけで、高校で日本史を選択した評者は、またしても縄文・弥生から学び始め、昭和に入ったか入らないかのとこで時間切れ、お受験。アホちゃうか、文部省じゃなかった文部科学省ってとこは。

 そうやって、3回も江戸時代を学んだ評者なのだが、元来、歴史にも、水戸黄門にも、遠山や暴れん坊にも興味を持っていなかったわけで、ただただ暗記詰め込み教育に徹していたもので、全然考えてもいない深層的な勘違いをしていたようである。家康から慶喜まで、純然たる親→子のお世継ぎがなされていたと思っていたのである。ところが本書『紀文大尽舞』を読むとそうではない。題材としてお世継ぎ問題が取り沙汰されるが、普通の家督とみたいに、父→長男といったバトンタッチが連綿として行われてきたわけではないのである。徳川家の略式家系図が手元にあるが、結構養子関係というのが多い。勿論、徳川の血を引く者ではあるのだが。しかし、そんなことくらい、3巡りもした日本史の授業で、誰か教えてくれよ!ってなもんだ。それとも常識か?

 本書を読み始めて、その軽妙な面白さに快感を覚えた評者。もしかすると、これはあの傑作『退屈姫君伝』著者二作目を超えているんじゃないか?とさえ思った評者。これは第一章をそのまま引用するだけで、伝えられる面白さ。この第一章っていうのが、たった1頁なのだ。

「お父(と)さま、おこじゅかいちょうだい」
「いいとも。明夜(あかや)が欲しいだけやるぞ。いくらだ、十両か、百両か」
「ひゃくまんりょう」 「なんだ、それっぽっちか。いいともいいとも。それで、何に遣うんだね」
「えとね、えとね、おもしろいあそびをするの」
「ほう。お父つぁんもまぜておくれ。どんな遊びだい」
「ばくふてんぷく」


 一代で財を成した紀伊国屋文左衛門親娘の会話で始まる本書。その紀文(紀伊国屋文左衛門)の野郎の、これまでの生い立ちをなんとか聞き出し、浮世草子にして戯作者を目指そうとするお夢。ところが、風聞の生い立ちを拾い集めていくと、どうも話の辻褄が合わない。この紀文という男の本当の正体は、何なのだ?そういう冒頭で始まる話に、これは◎◎評価間違いないと思って読み進めたのだが…。

 途中から徳川家のお世継ぎ問題など日本史が入ってきて、歴史の背景の面白さがわかっていない評者には、どうも入り込めないような話になってくる。いや、字面はわかる。言っている背景もわかる。わかるのだが、それがどういう面白さなのか歴史オンチの評者にはわからないのである。

 あ、そうそう。本書には章題に"いとおかし"というのがある。「本のことども」に管理人さんが勝手につけて、なぜか評者も愛着を感じている言葉だ。天英院という公家が多用する言葉で、従来の"そこはかとなく風情や趣があっていとおかし"みたいな使い方のみでなく、"はははは(笑)、いとおかし"みたいな現代の"とてもおかしい"みたいな使い方をする変わった公家である。そんなことはどうでもよいのだが…どうでもよいのだが、やはり章の題名がこういうのだと、いとおかし、と思う評者なのである。(20031124)


※鹿児島市立図書館で借りる。ちょっと期待はずれであったことも、いとおかし。

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by kotodomo | 2005-06-30 14:39 | 書評 | Trackback(2) | Comments(2)
Commented by 四季 at 2006-12-28 06:50
わー、3年前の文章だ。
確かに第一章、一番面白かったかも。てか期待させますよね。

私も英・数が好きだったクチですが、吉宗が紀州出身というのは
ある意味常識なのではないかと…
と思ったんですけど、本当に学校で習ったんでしょうかね? それとも小説で読んだ?
黄門さまも遠山も暴れん坊も見てなかったけど、大河ドラマからかも。
意外なところに盲点があるものですね~。
Commented by 聖月 at 2006-12-28 08:30
四季さん はい、3年前の文章だす。

もう一番古いのが5年半前・・・たま~に、俺、この本でこんな感想書いたんだ!なんて驚きもあったりしますよ。

本書は米村作品の中でも書き出しはピカイチ・・・あとが、続かん(^^ゞ


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