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「本のことども」by聖月

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2005年 07月 01日

▲「マッチメイク」 不知火京介 講談社 1600円 2003/8


 第49回江戸川乱歩賞受賞作品てなことで読んでみたが、プロ作家に求められる完成度、安心度としてはまだまだかな。手垢のついた形容句、先の読める展開、わざとらしい人物設定(最初から妙にひっかかっていた人物がいて、人気レスラーなのだが目が悪く普段は牛乳壜のようなレンズの眼鏡をかけているという設定なのだが、最近はレンズも発達してきていてそんな眼鏡をかけるようなレスラーはまずいないだろうし、そもそもそういう設定にしたということは、後半何かあるな!と思わせないわけにはいけないわけで、そう思って読んだのだが、何かあったような、それが結局何の意味があったのか、よくわからなかった評者なのである)とか、素人臭さの抜けきれない作品である。しかし、プロレスという題材自体は、幼い頃テレビのプロレス番組を観ていた評者(今は全然観ない)としては、懐かしくも新鮮な部分もあった。

 マッチメイク。試合をつくることである。おおよその試合の展開、粗筋をつくることなのである。八百長だとかそういう話ではなく、ショーとしてお客を呼び寄せる力がないといけないのである。なるほどねえ。いやね、小さい頃、テレビを観ながら花束贈呈、あれやらなきゃいいのに、って思っていたの、僕チン。だって綺麗なお姉さんたちから花束貰っても、レスラーって控えの人に渡すだけで実際には喜んでないように見えたし、悪役レスラーなんかその花束で暴れて…って、あれも計算されていたわけね。母親がプロレス嫌い、血を見ると気分が悪いと言っていたが…なるほどね、この試合で血を流すか流さないか前もって粗筋たてておかないと、血だらけの試合が続いて飽きられちゃうこともあるし、血の流れない試合が続くと、興奮感の足らない客にそっぽ向かれちゃったりするし、適当に計算して血を流さなきゃ駄目なのね。そうそう、昔は日本人が悪い外国人レスラーを倒して気持ちがいい!っていうのが、中心的な粗筋だったわけで、日本人レスラー同士が戦うなんてなればどっちが勝つか凄く話題になったわけだけど、そうか最近は日本人同士戦う試合も多いのか、ふ~ん。

 本書『マッチメイク』はプロレス界で起きた殺人事件をめぐるミステリーなのである。評者の昔のイメージに置き換えて話すと…アントニオ猪木対インドの虎タイガージェット・シンの試合。試合前、猪木は若い主人公にこう漏らす。秘密だけど、今夜の試合で俺は引退だと。試合の模様を見つめる主人公。場外に出て、鉄柱にぶつけられた猪木の頭から流血。直後動かなくなる猪木。動きを止め、心配そうに見守るタイガージェット・シン。しかし、猪木はそのまま死んでしまう。死因は毒による中毒死。

 どうなのかな。小さい頃、手に汗握って観ていた評者には面白い裏話も、最近のプロレスファンなら周知の事実が題材として扱われているんじゃないのかな。そういう意味ではプロレスファン必読とも言えないだろうし。江戸川乱歩賞、追いかけるほどの賞でもないような気がしてきた、レベル的に。ただし、過去の受賞作で滅茶苦茶完成度の高い『テロリストのパラソル』藤原伊織を未読の方は、これを読んでから乱歩賞云々を語るべし。(20040128)


※鹿児島県立図書館で借りる。表紙にレスラーと猫の絵。なるほど、猫も登場するが、あまり意味のないような絵である。

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by kotodomo | 2005-07-01 07:47 | 書評 | Trackback(2) | Comments(0)
Tracked from デコ親父は減量中(映画と.. at 2006-04-13 00:35
タイトル : マッチメイク<不知火京介>−(本:今年29冊目)−
講談社 ; ISBN: 4062120011 ; (2003/08) 評価:85点(100点満点) 第49回江戸川乱歩賞受賞作品。 表紙がブレーンバスターであることから自明であるが、プロレスを題材としたミステリーだ。 本格的な謎トキがあるわけではない(人は2人死ぬが)。 プロレスの舞....... more
Tracked from 猛読醉書 at 2006-05-14 11:59
タイトル : 『マッチメイク』 不知火京介
第49回(2003年)江戸川乱歩賞受賞作。大阪を中心に活動をする新大阪プロレス創始者・ダリウス佐々木が試合中に倒れ、そのまま亡くなる。毒殺か自殺か――。入門したばかりの山田聡がその謎を追います。彼は高校までは柔道をやっていて、二段の腕を持つ。インターハ...... more


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