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2005年 07月 01日
前作『龍時01-02』に続く、スペインに渡ったサッカー少年を主人公に据えた物語である。評価は◎だが、やはり前作の続きものであるので、単独で読んだ場合、どこまで面白いかは疑問。だから『龍時01-02』を読んで、本書『龍時02-03』に進むべし。要するに前作『龍時01-02』を読むべし、読むべし、べし、べし、べしなのである。前作では、日本からスペインに単独で渡った主人公リュウジの成長物語といった感じだったが、今回は主人公リュウジを通してのサッカー考的な意味合いも強い。前作では日韓ワールドカップを控えての描写であったのが、本書では終了した日韓ワールドカップを踏まえて書かれているところも興味深いし、スペインリーグで注目度ナンバーワンのスター軍団「レアル・マドリー(ド)」のジダンやらロナウドやらフィーゴの活躍が側面で描写されているところなんかサッカーファンにはたまらないだろう。ちなみに評者は、普通のファン。昔からマラドーナの試合みたりしてきた過去はあっても、日本代表の親善試合やアジア代表予選リーグなどは通常見ない。この試合で勝たなきゃいかん、もうあとがないぞ、頑張れニッポン!みたいな試合とか、ワールドカップの日本の試合は全部みたりするほう、そのくらいのサッカーファンである。でも、スポーツ好きで知識的文化人ではあるので、結構色んなことは知っているんだけど。 では、粗筋は書かずに、サッカー考を3本。 1.「審判が試合を作る?」 試合を作るのは勿論選手たちだろうという意見が聞こえてきそうだが、ちょっと待て。ワールドカップの試合を思い出してみよう。(1)稲本がゴール前、後ろからボールを受け、強烈なシュート。“やったー(^O^)/”なんて叫びながらも、少しサッカーを知っている人なら、“あれ?オフサイド?笛鳴らなかった、ラッキー”なんて考えながら、“やったー(^O^)/”なんて叫んだんじゃないだろうか。そして、ビデオ見て、なんかやっぱオフサイドくさいけど、やっぱラッキーなんて思ったんじゃないかな。このとき、相手の国の人はどう思ってテレビ観戦してたかな?(2)赤トサカ男戸田。彼が自陣ゴール前、危ない場面で相手選手を引きずり倒した場面。あれも何回もビデオで流れていたシーンだが、解説者なんかは“うまくやりましたね”的なコメント。このとき、相手の国の人はどう思って観戦してたかな?多分、(1)の場合も、(2)の場合も、“なんで、笛吹かないんじゃ審判。ワレ目え、ついてんか、ボケ。日本で開催だからって、日本に贔屓してんじゃねえよ!”って、相当に怒ってたんじゃないかな。まあ、それはさておき、戸田のプレーは審判が気付かなかったって言えばそれまでだが、稲本のあの位置。サッカーファンの80%が、やべ、オフサイドかも、と思ったシーンで、3人の審判は誰も何も心に直感的なインスピレーションは起きなかったもんだろうか。続いて(3)。韓国対スペイン。この試合、みんながみんな見ていないとは思うが、スペインが右ゴールライン手前からセンターリングをあげて、見事ヘッドで決めたシーン、これがセンターリングをあげる時点でボールがラインを割っていた、ノーゴールとなったのが大問題。結局はノーゴールの判定は覆らなかったのだが、あとからビデオのどこをどう見てもボールは全然ラインを割っていない、っていうか、肉眼的直感でみても全然出ていないと言ったほうが正しいのか。そのとき、スペインの熱狂的サッカーファンはどう思っていたのでしょう。 (1)(2)(3)のどのプレーも覚えていない、見ていないっていう人も、よくサッカーの試合見ながら、“何で笛吹かんのじゃ、ボケ!”“今のファールじゃん。PKじゃん!おかしいじゃん。さっきのファールなら今のもファールじゃん!”というシーンを経験したことないかな。もし、審判が、自分の深層心理的にゲームをメイクしていたとしたら…。あの韓国対スペインの試合。あれがスペインで行われていた試合だったら、あのゴールを割ったという誤審はありえなかった。たとえ、ゴールを割っていても笛を吹かなかったという逆の誤審はありえたとしても。だって、スペインでスペインチームに不利になるような際どいプレーに対して笛吹いたら、熱狂的なファンを前にして、生きて帰れるのか疑問だし。 2.「スペイン人はなんであんなにサッカーに熱狂するの?」 まあ、スペインに限らず、海外の色んな国で熱狂的サッカーファンのシーンが放映される。ワールドカップじゃなく、普通の国内試合である。日本で言うところのJリーグ。まあ、スペインリーグなんか大スターばっかだから、ファンは熱狂するにしても、あの競技場での乱闘騒ぎや、爆竹、酒場での乱痴気騒ぎ、ああいうの見ていると、日本人にはワカランなんて思うだろう。でも、一番わかりやすく例えれば向こうのサッカーは地元密着、要するにプロ野球でいう阪神ファンばっかりなのである。日本の野球ファンが、全部阪神ファンタイプになったと思えばわかりやすい。巨人とか西武とかいう球団が、全部阪神Aとか阪神Bとかいう球団になったと思えばわかりやすい。どこの球場に行っても、一塁側スタンドも三塁側スタンドも敵対する阪神ファン同志で埋まっていたとしたら… 3.「新しいフォーメーション」 今、スペインでは従来のフォーメーションとは違う概念が出てきている。よく3-4-3とか、2-4-4とか、フォワード、中盤、バックを数的に表現して厚みのファーメーションを組むが、その概念がもっと面としての広がりを見せている。すべての選手の位置を円としてとらえ、ある選手が右回りに位置を変えたら、他の選手も右回りに位置を変えるのである。例えば、前左から内側にフォワードの選手が切り込んでいったら、右バックの選手は、もっと自陣キーパー寄りに位置取るというような感じかな。それがどういうことか、わかるようなわからないような評者なのだけど。 とにかく結論は、『龍時01-02』を読んで、本書『龍時02-03』に進むべし。(20040312) ※この楽しい小説は、まだ続くらしい。ちなみに01-02とか、02-03ていう表題は、リュウジの2001年から2002年までの活躍、2002年から2003年までの活躍という意味。 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-07-01 10:06
| 書評
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