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「本のことども」by聖月

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2005年 07月 01日

◎◎「グロテスク」 桐野夏生 文藝春秋 1905円 2003/6


 ふう。6月24日から鹿児島に逆出張をして、自宅から仕事に通えるのはいいのだが、今回のビジネスの場合、朝5時半には起きて早めに行き、夜は帰宅が10時過ぎという状況で、そこから缶ビール350ML2本飲んで焼酎お湯割り4杯飲んで酔って寝て起きたら仕事というありさまで、本は読めないわ、娘たちとの時間は持てないわでずっと来て、だが昨日その仕事も無事終了し、やっとお休みの今これを書いている7月11日なのである。セブンイレブンなのである。で、なんでやっとのお休みで、朝からこうやって文章なんか綴っているのかというと、娘たちと遊ぼうと思ったら、片方はピアノ、もう片方は算盤と、日曜の朝から自己研鑽されていらっしゃるので、どうもお邪魔なようなので、こうやって自分も娘たちにならって、綴り方をやっているわけなのである。

 そういうわけで、6月22日に読み終えた本書『グロテスク』を7月11日の今綴るということは、結構思い出しながら書かねばいけないことになってしまうわけなのだけれど、粗筋をたどる気が評者にはないので、まあなんとかなるか(笑)。実はこの本、先日の浅草オフ会で「3つ数えて目をつぶれ」のくらさんから貸していただいた初交換本であり、また評者にとっての初桐野夏生作品でもある。『OUT』が話題になってドラマ化までされ、『柔らかな頬』で直木賞を受賞したりしても読まなかった評者は、はっきり言って出遅れてしまったわけで、本当に面白いのかなと積極的に手に取るチャンスを失ってしまっていたのである。ただし本書は気になっていたわけで、チャンスがあれば読もうと思っていたところ、オフ会交換本で貸していただいたわけである。くらさん、ありがとう。

 本書は東電OL(娼婦)殺人事件をモチーフにしていたり、有名女子高のドロドロした描写が話題になったりとか、そんな色物的な部分が誇張されがちだが、そういう見られ方とは一線を画した作品なのである。グリコ森永事件をモチーフにした高村薫作品『レディ・ジョーカー』が、事件そのものを超越した圧倒的な物語であったように、本書も東電OL殺人事件そのものを基本的には事実に基づいて綴っていながら、その才能溢れる描写力によって、事件の話題性に頼らない圧倒的な力を内包している作品なのである。また女子高の人間関係の描写も、感情移入せず設定として読み進めれば、これはこれで結構面白いのである。全体的にダークな感じで進んでいく本書を面白く感じるか、なんだか嫌な気分で読み終わってしまうかどうかは、それぞれの読者の感性、好みによって違ってくるのは間違いない。東野圭吾作品『白夜行』を傑作だと思った評者のような読み手なら、本書に対してもその悪意に満ちた全体的な雰囲気にのまれることなく評価できるのではないだろうか。

 それと、本書はミステリーではない。だから、ミステリーとしての結末を期待して読む読者にも評判がよくないようである。本書はミステリーではない。文藝であり、溢れる才能から紡ぎ出された小説なのである。文節を楽しみ、文章を楽しみ、頁を楽しんで繰る、そういう読み方が似合う小説なのである。粗筋など関係のない小説なのである。まあ、粗筋っていえば、結局東電OL殺人事件なんだけど(笑)。

 実は、この東電OL殺人事件、評者も知らないわけではなかったのだが、詳細には疎かったのでネットで調べてみたりもした。幸い読了間際だったからよかったのだが、小説内の人物の行動や描写が結構事実を踏襲しているので、これから読むという方は、実際の事件の知識を前もって積極的に吸収されないよう注意されたし。 もう一度言おう。文章を楽しみ、紡ぎ出される物語を楽しむ小説である。伏線もなければ、解決もないし、そんなもの必要としない圧倒的な物語である。そういう読書の楽しみ方を理解している本好きピープルは、読むべし、読むべし、べし、べし、べしなのである。(20040622)

※本書に対して、実はひとつだけ注文がある。ある女性の癖に、前歯をトントン指で叩くというのが出てくるのだが、実際にやってみると現実感のない癖であるし、その癖が頻繁に出てくるところが煩く感じるのである。それ以外は注文なし。

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by kotodomo | 2005-07-01 12:48 | 書評 | Trackback(3) | Comments(0)


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