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「本のことども」by聖月

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2005年 07月 01日

◎「クリスマスのフロスト」 R・D・ウィングフィールド 創元推理文庫 924円 1994/9


 この本、今年2004年5月の初め鹿児島から東京へ単身で出てくる際に持ってきた本である。などと書いているのは、実はこの本を読みながら、そういえば鹿児島を出てくる3日くらい前、こんなことがあったよなあ、なんてことを思い出したからなのである。

 一旦東京へ出てきて、5月の末には父兄参観があって鹿児島へ戻って出席したことは以前書いたが、実は鹿児島から東京へ発つ少し前にも、通常の授業参観があって、前の職場を4月末には退社していた評者は一応お休みモードだったので、その授業参観に出席したのである。上の娘は嫁さんの担当ということで、下の娘の参観のため一緒に学校へお手てつないで行ったのである。靴箱の前までくると、下の娘が「パパ、ちょっと待ってて♪」と言って、裏庭の方へ駆けていく。待っていてもつまらないので追いかけていくと、娘は水道で小さなペットボトルに水を入れて花壇のほうへ。そして花壇の前にずらり勢揃いしている植木鉢のひとつに水をやり始める。娘の名前が書いてある鉢。「朝顔かな?」と問うと「うん、あさがお♪」と漢字に平仮名で答えたわけじゃないけれど、そんな返事をしながら嬉しそうに水をやっているのである。で、そこで評者はふと気付く。クラスのお友達の他の鉢は全部双葉が出ているかそれ以上に生長しているのに、娘のやつだけ芽が全然出ていないのである。土だけ。評者はなぜか悲しく淋しくなってしまったのである。よりによって、我が娘の朝顔だけ芽を出していないとは。土だけの鉢。それに嬉しそうに水をやるけな気な娘。誰か悪さしたんじゃねえだろうな。そんなことを考えたひとコマを思い出したのである。でもあとで確認したら、ちゃんと芽が出てきたそうな(^.^)

 で、話を本書に戻すと、と思ったけど、戻さないで、本書を鹿児島から東京へ持ってきたということは、本書は空を飛んだのである。最近、評者の持っている本は、よく空を飛んだりする。オフ会で借りた本、荒川図書館で借りた本、色んな本が空を飛んでいるのだよ。想像すると、なんか面白いでしょ。上空11000mのところで、聖月様が読書。なんか凄いでしょ、想像すると。なに!想像しても凄くないって?じゃあ、こんな話は。上空11000mで読書している評者の外側には、無限とも思える中空が広がっているわけで、晴れた日なんか下界がよく見えるわけで、おお四国は高知じゃ、土佐じゃ、地図のまんまじゃ、きっと下は暑いのだろうな、32度くらいあるだろうな、と思いながら読書している11000m上空の聖月様の乗っている飛行機の機外の温度はさて何度でしょう?答えは、大体マイナス50度。下に気だるそうな真夏の海が広がっているのが見えるのに、機外はマイナス50度。ええ~っ!まじピョンで!!と思ったそこの女子高生のあなた、こういう風に想像してみたまえ。世界で一番高い山は昔はエベレストだったが、今はチョモランマ。いやいや女子高生君、新しい山が生えてきたわけではない。呼び名が変わっただけなのだ。おじさんが小さいときはエベレストと習っただけ、君たちはチョモランマと習っただけの違いなのだよ。で、そのチョモランマ山頂の映像や写真は見たことあるかと思うが、あそこはどうみても極寒の地だよね。あれよりずっとずっと高いところが、11000m。君たちの言い方からすれば、チョー極寒だというのがこれで理解できると思うのだが。じゃあ、もう一度。評者はチョモランマよりずっとずっと高いチョー極寒の中空で飛行機という防備に守られながら読書したりするのだよ。そいでもって、本を持って移動するという事実は、本がチョモランマより高いとこを、あっちこっち移動しているわけのことよ。どう?やっぱ面白くて凄いことでしょう(^.^)。

 で、面白くて凄い警部の話が本書『クリスマスのフロスト』に始まるフロスト警部シリーズなのである。何が面白いって、捜査会議の時間は忘れるし、上司の秘書の隙をついて指浣腸しちゃうし、しっちゃかめっちゃか。そのくせ、事件に対する姿勢は真っ直ぐ正しく、寝る間もなく捜査しちゃって最後の最後には全部解決しちゃう凄さなのである。全部解決と書いたのは、本書は俗に言うモジュラー型警察小説で、ひとつの事件だけでなく、複数の事件が勃発して一体最後はどうなるのやらタイプの小説なのである。一番のメインは少女失踪なのだが。

 ある娼婦の娘が、家の近くで行方不明となる。フロストと少し新米な若い刑事が、その事件の解決に挑もうというのが本書の本筋なのである。ところがいくら小さな町デントンといっても、事件や犯罪がひとつしか起きないわけはなく、色んな事件や人物に振り回されてしまう二人のおかしな活躍物語なのである。そして、一番肝心なのは、一見だらしなく見える主人公フロストを読者が好きになれるかどうかであり、そこはもう間違いのないところなので、面白く楽しいミステリーを読みたいと所望のそこの女子高生君、読むべし。(20040717)

※3年以上前に買っていた積読本をやっと消化。当時古書店で、450円で買った本。今なら200円以下、もしくは100円均一で買いだろう。

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by kotodomo | 2005-07-01 12:54 | 書評 | Trackback | Comments(2)
Commented by くろにゃんこ at 2005-07-01 23:30 x
作業終わったようで、ご苦労様。
大変だったでしょ~。

私も、このシリーズは大好きなんです。
フロスト警部の迷惑なおじさん加減がたいへんよろしい。
ところで、フロスト警部がDVDになっているって知ってますか?
スカパーで見たことがあるんですけど、フロスト役のおじさんがとってもいい味出してましたよ。
ちゃんとえび茶のマフラーしてたりして。
さすがBBCってか。

空を翔る本って、なんかロマンチック。
「空を飛ぶフロスト」なんてタイトルがあってもおかしくないかも。
Commented by 聖月 at 2005-07-01 23:41 x
くろにゃんこさん やっと終了(^.^)
飛ばしていないTBあればどんどん。
一応コンテンツ書評一覧のとこで、エクスプローラーの検索かければ、あるなし引っかかると思いますので。
そういたら、TB返しまするのでえ(^.^)

映像になっているのは知っていましたよ。でもDVD情報とかは・・・あまり映像観ないものですから(^^ゞ

本、良く飛んでまっせえ。前回は『大人の保健体育』が飛びました。


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