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「本のことども」by聖月

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2005年 07月 01日

◎「残虐記」 桐野夏生 新潮社 1470円 2004/2


 この作者の前作『グロテスク』や本書『残虐記』を読んでいて、やはり気になることがあって、それは多くの人がそう思うのだろうけど、下地になった事件の関係者、特に被害者やその家族に対する配慮はどうしているのかなあ、ということである。でも、そこは作者や出版社が当然のように配慮しているんだろうと勝手に判断して、素直に小説として読むことをするのが、一番いいのかもしれない。特に女性読者などは、前作でも本書でも、そういった配慮に対する憂慮に加え、書かれている事実や虚構の重さに、心に負担を抱えて読了しているような感想を、ひとつところではない場所で見聞きしているからである。この2作品を読むときは、これは小説、虚構なんだと思って読むのが一番よろしいかと。勿論、その向こう側にある事実は存在する。でも、そこのところは別の場所、別の切り口で捉えるべきじゃないかな。

 本書『残虐記』の下地は、あの新潟少女監禁事件である。評者は前回『グロテスク』を読んだときに、やはり下地になった東電OL殺人事件の概要を知りたくなって、「無限回廊 endless loop」というサイトを発見。今回も読了した後で、事件のあらましをおさらいして、事実と虚構のわかりにくい境界を自分なりに咀嚼するのに役立った。まあ、皆さんにも参考まで。ただし、特に東電OL殺人事件などは、『グロテスク』を読むつもりの方は、読了してから参考にすべし。

 実は、評価は〇かなあとも思ったのであるが、小説中の監禁事件が1年半で終わり、次の展開へ持ってきている読ませ方に◎の評価と相成ったのである。実際の事件のほうは、9年半。異様な事件の中身を、9年半も描かれると辟易しそうだが、こういう描き方をされると、もう少し社会的な見方も色々できるわけである。色んな関係者の、色んなあり方が。

 実際の関係者は、これも「無限回廊 endless loop」を読んで思い出したのだが、このとき警察のお偉い関係者は、うんうん、確かに接待麻雀していて問題になったね(笑)。ああ、裁判での併合罪の考え方も問題になっていたねえ。それだけ見ていっても、社会的に、単純に終わらなかった事件なのである。

 しかし、この作者と出版社、前作でも本書でも題名に対して、もっと別なつけ方はできなかったのかな?『グロテスク』なんて題名の本、読む気もしなかったのだが、周りの意外な反応に、好意ある方から借りてまで読んだし、『残虐記』なんて題名の本も、そういった前作での経緯が無ければ、読もうとはしなかったであろう。まあ、いいけどさ。(20040916)

※本屋で眺めることもなく、図書館に予約した本書。到着して、その中身の薄さ(厚み)を初めて知った。『グロテスク』に引き続き、分厚い本を想像していたのである。

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by kotodomo | 2005-07-01 14:30 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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