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「本のことども」by聖月

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2005年 07月 28日

◎◎「シリウスの道」 藤原伊織 文藝春秋 1800円 2005/6


 感想としてまず言えるのは、連載された作品の単行本化という意味では出色の出来であるということである。よくあることなのだが、本を読みながら巻末を確認して“やっぱり連載だったか”と思うことがある。どこか話の展開にひっかかり(もしくは脈絡の不整合)を感じ、巻末を見て“やっぱ連載か。だからどこかブレがあるんだな。まあ仕方ないのかな。書いて載せちゃったら、その後の連載で前の部分書き直したくてもできないしなあ”なんてどこか納得はしちゃうのだが。ところが本書はさにあらず。完成された物語である。まあ、一部のプロットに蓋然性を感じない部分もなくはないけど、そんなのも気にならないハードな社会に生きる気持ちのいい人物たちを中心に据えた物語である。最後に残る爽快感、希望もいい。

 ところで以前にも書いたことがあるが、評者は藤原イオリンが『てのひらの闇』を上梓した直後、氏の講演会に行ったことがある。色々と楽しい話が聴けた実のあるひと時だったが、印象に残ったことが二つ。

 まず一つは、氏があの名作『テロリストのパラソル』を書いた動機。海外物のミステリー&ハードボイルドの読み手だった氏は、日本の同様のジャンルの作品を読むたびに“自分だったら、もっと面白い作品が書ける!”その具現化のために書いたというのだ。そして、乱歩賞&直木賞受賞への道を歩むのである。このテロパラの話が本書『シリウスの道』の中にも出てくるところがファンには嬉しい・・・と言いたいところなのだが、実は細部をもう忘れている評者には、どういう素敵な機微が描写されているのか思い出せず、そこんとこがもどかしかったんだけどさ(^.^)

 もう一つは、氏の生活。ウィスキーのボトルを平気で一本空ける、小説の主人公を投影したようなタフな話に、直木賞受賞からしばらくたっていたのだが、相変わらず電通マンなサラリーマン野郎であったということ。本書の中に描かれているのは、やはりそういう著者自身の投影された大手広告代理店に勤める主人公。カッコイイ。シビレル。当時、評者が思ったことに、まあいずれサラリーマンを辞めて作家に専念するんだろうということがあったのだが、しかしながら辞めたのはつい最近。そして作家に専念という態勢が整ったのも束の間、癌の告知である。サラリーマンを続けていたなら、社内の検診で早期に病巣が見つかっていたかも知れないという憶測は皮肉なものである。

 しかし・・・この主人公たちが生きる世界はハード&タフそのもの。休息のない行動理念、かけひきのある人間関係、それぞれのステップにおける試練。そして思いを寄せられてしまう主人公の生き方に憧れる。カッコイイ。シビレル。粗筋は相変わらず書かないので、読んでみるべし。そして感じるべし。

 ところで、文中でサラリと触れた件。評者は熱狂的に有名人のファンになったことがないので、これまでその悲しい知らせや予兆に過敏になったことはない。評者の姉貴はクィーンのフレディ・マーキュリーがエイズで死んだとき、病のことは知っていたけど、やはり実際死んでみるとショックだったという。青春の思い出の一時期が欠けたように。評者の嫁さんは、結婚後のある朝テレビの前で絶句して、涙をヒョロリと流したし・・・アイルトン・セナの事故死のニュースを知って。評者には今までそんな経験がなかったのだが・・・あの目の前で講演していた、あのイオリンが、病魔と闘っているのなら、復活を大いに期待している。応援している。手記ではなく小説が読みたい。(20050727)

※『ダックスフントのワープ』もそろそろ読まなきゃ。(書評No542)

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by kotodomo | 2005-07-28 14:37 | 書評 | Trackback(9) | Comments(12)
Commented by B.Rose(ぶろ) at 2005-07-28 19:03
かっちょいいよねぇ、祐介さん<主人公^^。まさに広告会社のバリバリ営業、時間やプライベート、全く関係ありません(笑)。イオリンもきっと等身大なんだろうな。ホントにもっともっと小説を書いて欲しい。頑張って欲しいです。

そうそう、聖月先生イオリンの講演聞いたんだよね、とか F.マーキュリーは悲しかった…とか、『ダックスフント〜』私も読んでない〜、と色々思い起こしました^^。
Commented by 聖月@祐介/森 at 2005-07-28 19:34
やっぱ、名前が祐介だとやることもカッコイイねえ。
あなたと俺も昔の思い出持っているし。共有?25年くらい前?
作品と一緒じゃん(^.^)
大人の触れ合いでもするかい?ふふふ。
って、全然ハードボイルドじゃねえなあ(笑)
Commented by ヾ(=ΘΘ=)ノ at 2005-07-28 20:24
その共有の思い出って、あのことですね、ぐふふ。
全然ハードボイルドぢゃなく、コントですな。
Commented by 聖月@祐介/森 at 2005-07-28 20:32
あんた誰?同級生でもないのに何?あのこと?
違うのだよ。同じクラスだと他のシーンもあるの。
昼休みだか、放課後だか忘れたが、自分の席で泣いている女の子がいたのさ。
まあ、自分はその日帰って糞垂れただけだったけどさ。
Commented by ぶひっっ at 2005-07-28 21:14
え〜〜〜 なんだそれっっっ(笑)。いけませんね、学校で泣いちゃ<全く記憶が無い…。同級生だったということは、1年だよねぇ…。勉強のことで泣くことはまず無かったから、男関係かねぇ(笑)。
ヾ(=ΘΘ=)ノちゃんが思い浮かべてくれた あのこと、って何だろう?・・・うーー、気になる。。(コントというのがまた(笑))
Commented by 聖月 at 2005-07-28 21:40
何関係か覚えてないが(覚えているが)泣いていた。学校で泣くなよなあ(笑)。
あのことって、多分俺があんたに廊下で渡したコンドームだべ。その事件だべ。ここまできたら少しハードボイルドかもしれん!!!

教室で泣いている少女。廊下で待つ男。いや好青年。泣き止んで出てきた少女・・・少女に笑みを浮かべ何か手渡す好青年・・・多分そんなハードボイルドな高校生活(^.^)♪♪♪
Commented by すみたこ at 2005-07-28 23:21
 こんなに脱線のない書評なんて聖月さんの書評じゃないや。

 というかこの直前に家族のこといっぱい書いてたからもう脱線ネタがなかったのね。
Commented by B.Rose(ぶろ) at 2005-07-29 00:24
すみたこさん;いつもお名前とお話は聖月さんからお伺いしております^^ コメントの方で脱線しまくって申し訳ございません; お許し下さいませね…

聖月さま;思いだした! 担任に、呼び出し食っていじめられたんだよ。高1の時に学校で泣いたのって、その時くらいしかないと思う。
コンド…ってそれ、全然違うって! ヾ(=ΘΘ=)ノちゃんは「コント」って言ってるじゃない。あれ、ひょっとしてダジャレてるのかなぁ?…あぁ、もうこの話題はもう再び封印!(笑)
Commented by 聖月 at 2005-07-29 07:21
すみたこさん おはござ(^.^)
私だって普通に書けるのですよ、エヘン!
っていうか、一応脱線してんですけど。過去のシーンが3つも。
講演会&マーキュリー&セナ。
ああそうか、そこで『蹴りたいセナかあ・・・』とかギャグ入れたほうがよかったんか(^.^)
Commented by 聖月 at 2005-07-29 07:31
B.Rose(ぶろ)さん おはござ(^.^)
たかがコンドーム!!!くらいで気にしなさんなって。もういいおばさんなんだから。『シリウスの道』の立花部長より年上なんだから、ははは。
担任・・・長谷川キツネ男か。優しい先生だったよ(^.^)
Commented by june at 2006-02-21 23:05
おもしろかったです。順番が逆になってしまいましたが、「テロリストのパラソル」も、忘れないうちに読んでみます。
ところで、カツオがお気に召したようですが、当地はイワシも美味しいですよ。季節になったら生しらすなんぞもおつまみに最高です♪
Commented by 聖月 at 2006-02-22 08:27
juneさん おはござです(^.^)
テロパラいいですよ。やはり、主人公男性と女性の位置関係なんかが素敵な作家ですね。

イワシご馳走してください(笑)夕べは、カツオのたたきではなく、カツオの刺身を食べました。サントムーン柿田川で買って(なんと、マイナーな内容)(^.^)
素敵に美味しい駿河ライフ。


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