2005年 08月 20日
時は2035年、日本人が初めて月面に降り立つためのロケットの発射間際の描写から始まったものだから、あれれ、近未来SF?と勘違いした評者だった・・・のだが、そこの時点から振り返った、2005年に夢をかけた若者たちの物語であったことを報告しておこう。○『1985年の奇跡』に次ぐ著者の青春小説、同じ高校生の夢と青春を題材に取りながらも、20年後の高校生たちの夢は、1985年時代の高校生とは別なもの、未来を見ていたのである。 ところで評者の従兄に、今はほとんど行き来はないのだが、手造りロボットの先端を走るその世界では有名な人物がいる。若い頃から、迷路脱出ロボットマウスで週刊誌面に載ったりと有名で、昔、評者が遊びに行ったときも、なんだかPCを4台連結させ何かの計算をさせたまま、秋葉原に部品の買い物に出ていた記憶があるぞ。今は歩行ロボットの先駆者で、『マイクロマウス工房-森永-』なる自サイトでその活躍が覗けるのだが、そこではロボットは闘うし、逆立ちするし、倒れても起き上がるし、何しろbbsやその他で情報交換が頻繁なのが印象的だ(アクセス数が凄すぎ!この世界に住む人は多いのだ!)。内容は全然わからん評者なのだが(^^ゞ この従兄に対しては、面白くも驚いた記憶がある。久々にお会いして、最近の近況を報告したのは、もう15年くらい前の出来事だったか。なんかの拍子にファミコンの話になって、評者が買って遊んでいたソフト「たけしの挑戦状」の話をしたら、“ああ、それ僕が作ったんだよ。たけしが色々注文つけるんで、それを実現したら凸凹作品になったけど(笑)”というのである。なんだか、仕事とは関係なく頼まれて作ったらしい。ゲームの世界のことはよくわからないので、何を作って“僕が作った”ことになるのかはよくわからないのだけど・・・とにかく、自分が遊んでいるゲームを従兄が作ってビックリ\(◎o◎)/!の評者だったのである。そういうこともあるんだなあと。 で、何の話をしたいのかというと、ロボットバトルの話。従兄の世界ほどのロボットではなくとも、よくNHKなどで工業系の学校が、色んな課題をクリアすべくロボットを作り、コンテストをやっているのは見たことないかな?ボールを早く多く課題の箇所に集めればいいけど、相手の邪魔もできる、そんな条件でバトルしているのを評者は何回か見たなあ。悲喜交々の夢と青春のぶつかり合い。チームの夢の結集。トラブルを起こしたロボットに手を出せず、なんとかコントローラーで回復できないかあがくキャプテン・・・う~ん、青春やなあ。青春は高校野球だけにあらず。アウトドアだけにあらず。チームにスポットを当てた構成なんかの場合だと、視聴者も一緒に喜び、力が入り、残念無念の涙にもらい泣きしちゃうぞ。青春の感動には、野球とかロボットとかの違いはないのだ。夢のために力を合わせる若者の姿は素晴らしいのである。 さて、本書。何の因果か、ロボットならぬキューブサットという人工衛星コンテストに応募することになった工業系の高校生とそこに集った仲間の物語である。人工衛星とはいっても、実際に放出することはできず、そこで駆使する技術のロボットコンテストなのである。いかにものベタな設定である。主人公も落ちこぼれ、仲間も変なやつのオンパレ。敵対的な人物の登場、次々と立ちふさがる壁、壁、壁。 ついでに文体もベタ。描写+毒づきセリフみたいなのが散見される。例えば“~みんなが祈る。ここは、バチカン市国か?”とか“~だった。うそ、マジで?何で?”そういうところが読みづらいといえば読みづらいし、逆にこういうのが好きな人には楽しいのかもしれない。評者のように40歳過ぎて何冊も色んな小説を読む輩にはわざとらしく映るのだが、日頃本を読まない若人には意外に親しみの持てる文体かもしれない。 読み始めの評価は△。中盤で▲。でもなんだかんだで最後まで読んでみると、こういう青春も悪かないなあで◎の評価に。でも、この作家には、そろそろ&再び、“肩の凝らない作品とは対極に位置するような作品”を書いてほしいなあ。(20050819) ※P349の13行目(第1刷)に、それまでもその後も一度も出てこない謎の人物綾子が登場する(笑)(書評No554) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-08-20 22:17
| 書評
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from のほ本♪
at 2005-08-21 15:20
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from 仙台インターネットマガジ..
at 2005-09-13 02:00
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from 図書館で本を借りよう!〜..
at 2005-10-03 08:15
タイトル : 「2005年のロケットボーイズ」五十嵐貴久
「2005年のロケットボーイズ」五十嵐貴久(2005)☆☆☆☆★ ※[913]国内、現代、小説、青春、キューブサット 久々にやったね!五十嵐貴久。おもしろかった。これは、確かにおもしろかった。 読書の楽しみのひとつに、自分の知らなかった世界を知識として、蘊蓄として知るということがある。それが物語とうまく絡み合った場合、その作品を読んでとても得した気分になる。一挙両得、一石二鳥。また、丁寧な取材で書かれたという姿勢が見える作品はそれだけで好感を持てる。逆に、安易に作家が嘘を書き...... more
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from たりぃの読書三昧な日々
at 2006-02-16 19:30
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from 本のある生活
at 2006-07-23 21:28
タイトル : 「2005年のロケットボーイズ」五十嵐貴久
2005年のロケットボーイズ 川端裕人さんの「夏のロケット」つながりで紹介していただきました。突っ込みどころは色々ありますが、それでもおもしろかったです!こちらはロケットではなくて、キューブサットという小型人口衛星を飛ばすべく仲間が集まるのですが、とにかく....... more
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from デコ親父はいつも減量中
at 2006-07-27 22:38
タイトル : 2005年のロケットボーイズ<五十嵐貴久>−(本:200..
双葉社 (2005/07) ASIN: 4575235318 評価:82点 (ネタバレあります) 爽快。 キューブサットを作って宇宙を目指した高校生たちのオバカで熱い青春物語。 あまりにベタで読みやすい文章に、次々とページをめくらされてしまった。 無目的な高校生のだるい日常を....... more |
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