2005年 09月 12日
長すぎるショートショートというのが第一印象。そして伊坂流伊坂節にもこれといって見所がなく、結論的には物足りない一冊だったのである。 まあ、伊坂幸太郎は、それほど期待の作家だし、普通の作家だったら高評価をもらえる作品でも“物足らない”の一言で評価ランクを落とされてしまう可哀想な作家でもある。 6つの連作短編集が収められたというより、6つの長すぎるショートショートが収められたといったほうがいいだろう。基本的に、どの作品もワンアイディアを基本にして書かれている。ショートショートといえば(って、何でこれがショートショートなの!素敵な作品群じゃない。勝手な理屈!とここまで読んで思った方もいるかも知れないが、とにかく評者には〇『アヒルと鴨のコインロッカー』や〇『チルドレン』や本書のような作品は、読んでいて退屈なのであるから仕方ない)、で、もう一回、ショートショートといえば星新一。ワンアイディアで書かれたその小品群は6頁とか、8頁とか。それを長くされてしまったら、やはり読んでいて“暇”を感じるのである。退屈なのである。いっそのこと飛ばし読みして最後を先に読んでしまおうかと思っちゃうのである。 例えば「吹雪に死神」。これなんかは本当に冗長。吹雪に閉ざされた館で次々と人が殺されていくという、よくあるミステリーを皮肉りながら最後に残った謎がポンと明かすという手法なのだが、この最後のポンのために、読んでいて面白くもない話はやはり面白くないのである。退屈なのである。こんなのは東野圭吾にまかせておけばいいのである・・・というより、まんま東野作品なのである。いや真似しているという意味ではなく、伊坂流伊坂節の不在の最たる作品といっていいだろう。 まあ、他の作品たちも似たようなもの。とにかく、ワンアイディアを長くするということは、展開が進まないということなのである。退屈なのである。死神やその環境の設定とか面白いものを秘めながら、辻褄的にイマイチしっくりしないところもあったし。「旅路を死神」で仙台のスプレー落書き男をゲスト出演させるのであれば、島の案山子に死神がとりついたような設定も面白い・・・いや、それじゃ以前の作品が台無しか。 まあいい。アヒルにしろ、チルドにしろ、死神にしろ、人がいいというのがわからない。どこかの感性が根本的に違う評者なのである。じっくり書いた書下ろしが読みたい。(20050909) ※なんか印象薄くって、書評も書く気が起こらない作品群でした。いやちょっとした機微とかを気付かなかったわけじゃないよ。(書評No562) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2005-09-12 07:32
| 書評
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Trackback(12)
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Comments(8)
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from 粗製♪濫読
at 2005-09-12 21:31
タイトル : 『死神の精度』 新しい死神像
著者:伊坂幸太郎 書名:死神の精度 発行:文芸春秋 ユニーク設定度:★★★★☆ 『重力ピエロ』が直木賞候補になった人気作家伊坂氏の短編集。 売れています。ヤフーの文芸書ランキングでも初登場3位(7/5付)。最新号の週間文春にも書評あり。 雨男である・音楽が好き・日本語の言い回しが時々わからない、という特徴を持った(人間の格好をした)クールな死神を主人公とする以下の6編の構成です。彼が担当する人間は8日目に死ぬ運命にあり、それで「可」なのか、それとも死を「見送る」べきか、を判断する...... more
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from アン・バランス・ダイアリー
at 2005-09-13 00:37
タイトル : 『死神の精度』 伊坂幸太郎 文芸春秋
死神の精度 『人間が作ったもので一番素晴らしいのはミュージックで、もっとも醜いのは、渋滞だ。それにくらべればカタオモイなんていうものは大したものではない。そうだろ?』 「千葉」と名乗る死神の仕事ぶりが連作短編で描かれています。死神の仕事は、もうすぐ死ぬ予...... more
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from Ciel Bleu
at 2005-09-13 11:44
タイトル : 「死神の精度」伊坂幸太郎
[amazon] [bk1] 「死神」は情報部に指示された人間に近づき、7日間のうちにその人間が死んでもいいかどうかを判断、「可」なら8日目にその死を見届ける...... more
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from 図書館で本を借りよう!〜..
at 2005-09-19 09:51
タイトル : 「死神の精度」伊坂幸太郎
「死神の精度」伊坂幸太郎(2005)☆☆☆☆★ ※[913]、国内、現代、小説、短編、ミステリー ネタバレあり、未読者は注意願う。 今年(2005年)の新刊のはずなのに、もはやすっかり出遅れた感。頑なに図書館で借りるにこだわっています(苦笑)。もともと伊坂幸太郎との出会いは、図書館の書架にぽつんと寂しげに佇んでいたデビュー作「オーデュポンの祈り」だった。いまやすっかり売れっ子。当時から一部では評価の高い作家であったが、こんなに売れっ子になってしまうと、昔からのファンは寂しい限り。 ...... more
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from AOCHAN-Blog
at 2005-09-19 13:43
タイトル : 「死神の精度」伊坂幸太郎
タイトル:死神の精度 著者 :伊坂幸太郎 出版社 :文藝春秋 読書期間:2005/07/11 - 2005/07/12 お勧め度:★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 「俺が仕事をするといつも降るんだ」クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語。音楽を愛する死神の前で繰り広げられる人間模様。『オール読物』等掲載を単行本化。約1年振りの新作は、死神が主人公の連作短編集。表題作は第57回日本推理作家協会賞短編部門賞受賞作。 僕の貧困なイメージでは、死神...... more
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from 時計仕掛けのオレ BY ..
at 2005-12-04 22:58
タイトル : 死神の精度~伊坂幸太郎~
ブログ始めた~ずっとやろうやろうと思ってたんだよ(それでなかなか始められないのがオレの悪い癖)最初なに書こうかな~って悩んだけど丁度今日読み終わったから伊坂幸太郎氏の死神の精度にしよう!好きだな~伊坂幸太郎氏オレってば全然本とか読まない人だったのに最近は彼のせいで読書少年へと変貌してしまった「死神の精度」よかった~なんといっても死神がいいんだよ~あんな愛着をもてる死神なんて初めてだ音楽好きで、人とどっかズレてて(人じゃなくて死神なんだからあたりまえか)かわいいんだよな~そんな死神にまつわる6つのお話ど...... more
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from 本を読む女。改訂版
at 2005-12-31 03:56
タイトル : 「死神の精度」伊坂幸太郎
死神の精度発売元: 文藝春秋価格: ¥ 1,500発売日: 2005/06/28売上ランキング: 981おすすめ度 posted with Socialtunes at 2005/12/30 最近本の感想といいつつネタくってばかりやけど、 この本を読んでいて、なんとなく浮かんできた妄想を披露。 ある日いつもの図書館で。本を取ろうと本棚に手を伸ばしたら、 同じ本を同時に取ろうとする人が。同年代の、やけに感じのいい青年だ。 「あ、ごめんなさい、どうぞお先に」と私が譲ると、 「いや、お先...... more
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from たりぃの読書三昧な日々
at 2006-01-15 19:59
タイトル : 「死神の精度」(伊坂幸太郎著)
今回は 「死神の精度」 伊坂 幸太郎著 です。この本は主人公の死神の活躍を6編の短編にして、オムニバス形式で描いていますね。ちなみに平成16年度の第57回日本推理作家協... more
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from 粋な提案
at 2006-05-30 12:29
タイトル : 死神の精度、伊坂幸太郎
写真は藤里一郎。表題作で、第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞。「2006年度版このミステリーがすごい!」の国内編第12位を獲得。 情報部からのわずかな情報をもとに、... more
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from ミステリー倶楽部
at 2007-02-26 09:03
タイトル : 死神の精度 |伊坂 幸太郎
主人公は死神の連作短編集。 事故死や不慮の死というのは、死神が7日間の調査の元に「可」or「不可」と決定するもの、ということにこの物語ではなっている。 死神が死神であるという物語の本筋にはそれほど目新しいものは無いのだけど、死神の浮世離れた(当たり前だけど)セリフが面白い。 ... more
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from 本を読もう
at 2007-03-26 08:04
タイトル : 死神の精度
NHKのラジオドラマで出会った。 すぐに原作が欲しくなった。 ラジオで聞いた後で、この本の世界はすぐに心の中に入ってきた。 この作品に触れるのは2度目だったが、初めて読んだような(初めて読んだのだが・・・) 爽快感、幸福感・・・本によって生まれる感動、全てが新鮮に感じられる。 そんな、本です。 ... more
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from しんちゃんの買い物帳
at 2008-05-21 13:15
タイトル : 「死神の精度」伊坂幸太郎
死神の精度 (文春文庫 (い70-1))(2008/02/08)伊坂 幸太郎商品詳細を見る 私は、人間の死についてさほど興味がない。人の死には意味がなく、価値もない。どの人間がいつ死のうが関係なかった。けれど、それにもか...... more
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notaro_hinemojira at 2005-09-12 14:09
いつになくソリッドな文章だと思ったら、今回は聖月さんお得意の自分語り無しなんですね。「書評も書く気が起こらない」せいなのかもしれませんが、たまにはこういう文章もいいですね(笑)
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乃太郎さん どうもです(^.^)
聖月流聖月節、伊坂流伊坂節とともに不在になってしまいました。 まあ、聖月流聖月節の場合、別名ダラダラ節ですが。 そうかあ、ダラダラがなくなるとソリッドになるのかあ。
私は結構楽しめたのですが、聖月さんが物足らない、とおっしゃるのわかる気がします。
伊坂さんにはどうしても高望みをしてしまうのかもしれないけれど、もっとどっしり、ごつごつした長編を書いてほしいと思いますね。
私としても、いいという方がいてもわからないでもなくはない・・・だって、自分ではイマイチだったアヒルやチルドの例もあるし(^^ゞ
人それぞれですね(^.^) どうもですね、一般的にですね、連載もの、評価が低くなるようです、私の場合。チルドもそうでしたね。 あと、おっちょこちょいな死神かと思っていたんですが・・・これも期待はずれ。 でも期待しすぎなんですよねえ(^.^)
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四季
at 2005-09-13 11:48
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あまり楽しめなかったようですねー。
物足りないという気持ちは良く分かるんですけど 私自身、伊坂節があまり効きすぎてない作品の方が好みなので(笑) 「死神の精度」は好きなんです。 そもそも私の伊坂作品ベスト3は、「陽気なギャング」「死神」「アヒル」ですもん。 なんとなく分かりますよね。 …これで「ギャング」の代わりに「チルドレン」が入ってたら完璧だったんですけど…(笑) でも「チルドレン」はダメ。ああ、やっぱりそんなに分かりやすくないかしら。(^^ゞ
四季さん 結局、自分の伊坂は完成されていまして、そこからはずれたら・・・むふふ、ダメみたい(^.^)
自分の中では重力一番、重力二番、案山子三番、バッタもいいよって感じですね(^.^) ところで伊坂節はないのです。この人は節を持っていないのです。 ですから、私は町田節とか舞城節とか聖月節とか使いますが、この人については伊坂流伊坂節といういいかたをするのです。 なかなか気付きにくい節っていうか・・・伊坂節全開っていうのはありえないしい、みたいな(^.^) 安売りな言葉が、そぐわない伊坂についてまわってますねえ。誰も説明できないみたいな。あ!今日の自分は酔っています、はい。 流と節は違うんだけどなあ、みんなってよく言いたいくなるのですうう、みたいな。おやすみなさい。
聖月さん、こんにちは。
いつもトラバありがとうございます。 すいません。未着の「死神の精度」誤って2回トラバしてしまいました(汗)。 お手数ですが、余分は削除してくださいますようお願い致します。 大沢さんの「魔女の笑窪」アップしました。 大沢さんの記事を書く人って聖月さんくらいしかいないみたいなので、もしアップされましたら、お気軽にトラバください。 ブログリストにも登録させていただきました。 これからもよろしくお願いいたします。
藍色さん こんにちは(^.^)
はい、ダブリ削除しときました。 大沢作品、結構ファンが多いと思うのですが、そういえばあまり最近他所のブログで印象ないですね。 私はファンというほどもないのですが、時々読みますねえ、気になった作品。 新宿鮫は、最近になってやっと一冊目を読んで・・・それから後はまだで・・・でも、あれが一番面白かったような。 『魔女の笑窪』・・・そんな本が出ているのも気付かずに、最近忙しい毎日を過ごしているのだなあ。 |
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