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「本のことども」by聖月

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2005年 10月 23日

△「血液魚雷」 町井登志夫 早川書房 1575円 2005/9


 第3回のこのミス大賞の選評内容を見たときから、いつ出版されるのか気になっていた本書『血液魚雷』である。このミス大賞の最終候補作かつ落選作なのだが、中身がアシモフの『ミクロの決死圏』だというし、町井登志夫自身が既に作家というポジションにあるため、面白そう!いつ出版?なんて思っていたのである。

 ついでに言えば、評者はアイザック・アシモフファンである。これまでも何度か言及してきたことではあるけど、SF作家のアシモフには興味ない。科学者としてのアシモフの著書が好きなのである。とにかく、一時期アシモフの科学書というだけで、見つけるたびに購入していた時期がある。今から15年くらい前かな。当時はネットなんて発達していなくて、だからアシモフの科学書がどれだけ出ているのか、新刊がいつ出されるのか、そんな情報がまったくなく、大書店に出向くたんびにアシモフ本を探し、買ったものよ。アシモフ自伝全4冊なんてのも持っているアシモフファンなのだよ評者は。

 でも、SFアシモフには興味ないといっても、映画「ミクロの決死圏」はテレビで観て、面白くかつ印象に残っている作品である。なんだか、潜水艦みたいのにチビッコ光線当ててミクロ化、それを要人の血液の中に送り込み、普通じゃ治療できないような箇所を手術するという話だったと思うんだけど。何が面白いって、血管を通じて体内を移動するという中に、様々な冒険があるところかなあ。白血球に襲われたり、血管の分岐でどちらに進むべきか迷ったりさ(って、そんな映画だったと思うんですが。違ったらごめんなさい)。

 そして、本書の設定なのだが、バーチャルミクロ決死圏である。血管にカテーテルを通して、その先端からの映像をゴーグルで覗くと、あ~ら不思議、まるで血管の中を泳いでいるよう。それだけの話である。このミス落選は当然の帰結といえよう。元々プロであるから、その文章力に不安はなく、かつ設定が面白いということで最終候補に残ったのだとは思うが、それだけの作品である。

 女性主人公の気持ちのあり方なんかも全然ピンと来ないし。自律した自制的なキャリアウーマンかと思いきや、“きゃぁぁぁぁあ!”とか“やめてぇぇぇえ!”とか“絶対殺す”とか職場でそんな感じなのは困ったものである。

 あと、謎がいかん。本書はミステリーなので謎がある。その謎は、普通に読めば最初で解けてしまう。解けてしまうのだけど、謎の原因はわかるのだけど、しかしそれがどういう風にすればこういう謎を生じせしめるのか、そこが評者の読書中の一番の興味なのだったが・・・最後に謎の原因の説明のみで、科学的な経緯に一切触れずに終るとは・・・。

 まあ、マグナムドライと血液魚雷ってなんか語感似てるじゃん♪面白そう♪そんな人は、読んでも構わんと思うが。(20051023)

※3月くらいから出版を待ちわびていた本だったんだけどなあ。(書評No583)

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by kotodomo | 2005-10-23 09:17 | 書評 | Trackback(3) | Comments(4)
Tracked from のほ本♪ at 2005-10-23 14:58
タイトル : 血液魚雷(町井登志夫)
心筋梗塞で運ばれてきた患者は、放射線科医石原祥子の元恋人の羽根田耕治の妻だった...... more
Tracked from 粗製♪濫読 at 2005-11-03 11:11
タイトル : 『血液魚雷』 日本のSFのレベルがわかる作品
著者:町井登志夫  書名:血液魚雷 発行:早川書房 斬新度:★☆☆☆☆ 小松左京賞受賞歴のある町井氏の作品で第三回「このミス」大賞の最終候補作。 20代の女性が心筋梗塞で洞西病院へ運び込まれた。放射線科医の石原祥子は、最新鋭の血管内観察用カテーテル「アシモフ」を使ってその原因を探ろうとする。そこに映し出されたのは今までに見たことのないようなものだった。 まずコンセプトが古い。次に展開が小さくて遅い。ところどころ医学的にミスがある(と思われる)。人物が平板である。謎解きが全くない...... more
Tracked from ポビーの日記 at 2006-08-14 21:51
タイトル : アマゾンより本届く
リンクさせてもらっている”百子の部屋”さんの投稿記事を拝見していて、興味ある本を見つけました。で、アマゾンのユーズドストアで割安に発注。今日届きました。 「血液魚雷」単行本(ソフトカバー): 263ページ 出版社: 早川書房 町井登志夫著。ジャンルはサイエンスフィクション。 夕食後、半分ほど読みました。引き込まれる面白さがあります。完読語にまた記事を追加します。 ・・・・・・・ING・・・・・・ ■追記 読み終えました。著者もあとがきで述べているように、映画「ミクロの決死隊」がモチーフとなっ...... more
Commented by ゆこりん at 2005-10-23 15:04 x
こんにちは。
聖月さんの書評、うなずけます。
医師のくせして泣き喚くな!と思ったし、謎についても想像が
すぐつくのは・・・。ラストも納得できないというか、がっかりというか。
「ミクロの決死圏」のイメージで期待して読むとちょっと当てが外れる
かもしれないですね(^^;
Commented by 聖月 at 2005-10-23 16:39 x
ゆこりんさん こんにちは
なんか、色々と中途半端なんですよねえ。男女の関係とかに絡む因縁もよくわからないし、女医としての主人公女性の心の在り方も・・・。
で、なんで謎の正体があんなふうに影響を与えるのかも・・・

普通、キャリアのある女性主人公だと私好きになっちゃうのですが・・・今回は全然でした(笑)。
Commented by bibliophage at 2005-11-03 11:17
聖月さん、こんにちは。
もう少し何とかならんもんかと思ってしまいました。
>科学的な経緯に一切触れずに終るとは…
まさにそうですね。京極堂にでも解説してもらってはどうかとw。
Commented by 聖月 at 2005-11-03 11:59 x
発想だけはいいのですが・・・
なんか、映像化して丁寧な作りにすれば受けそうな気もしますが。

京極堂が解説すると、もっとダラダラと饒舌な小説になってしまいますので、榎木津に2ページ目で登場してもらい、スパッと終ってしまってもいいかと(笑)


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