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「本のことども」by聖月

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2005年 12月 30日

◎「アンボス・ムンドス」 桐野夏生 文藝春秋 1365円 2005/10


 7つの作品が収められた短編集である。短編集なんていうとサラリとした良作が収められていて、なんていうのが評者の想像する一般的なパターンなのだが、本書に収められている作品群は重量級である。長編作品の平均重量が100kだとしたときに、通常の短編の重量は平均して30~50kくらいだとNASA(アメリカ航空宇宙局)では発表しているが、評者の推測するところ本書に収められた短編群の平均重量は60~70kくらいと、通常地球に飛来してくる隕石の2倍近い重量感がある。

 別の見方をしたとき、勿体無いくらいである。そのまま、その想像力の翼を広げていけば長編が丸々一冊かけてしまうような重量級の作品が並んでいるのである。それを長編にしちゃいけないという法律もなく、かつて村上春樹なんかも『螢』を『ノルウェイの森』に化けさせたりしたことを考えると、案外、将来この作品群の中から、もっと重量を増した長編が誕生するのかもしれない。

 それにしても、ドロドロした小説たちである。評者は、基本的に女性の群像というか、女性の内面に共感を憶えるような作品群が並ぶと、そういう憶えがないのでイマイチに感じる場合が多いのだが、本書のように、ここまでドロドロしていると、わかりやすく、想像しやすくて、そういう理由で、紡がれる物語として入り込めた気がするのである。

 基本的に、どの登場人物たちも、内面、もしくは外面が不細工な女性たち。その不細工さが、不器用さが際立っており、ただただその行き先を確かめずにはおれなくなる、そんなリーダビリィティに圧倒されるのである。

 一番好きな作品は・・・冒頭の「植林」かなあ。コスメドラッグで働く不細工。職場では相手にされず、家に帰れば兄夫婦のせいで居場所がない。そんな彼女が見たテレビの画面には昔の有名事件が流れ・・・記憶が甦り・・・自分の凄さに気付き・・・ドロドロ。

 桐野夏生、たったこれだけの小品集に、これだけの物語とその背景を入れ込むとは、恐るべし、読むべし、べし、べし、べし(20051230)

※意味不明の題名の意味はわかったが、何もこれを題名にしなくてもという気もしないではない。(書評No612)

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by kotodomo | 2005-12-30 09:12 | 書評 | Trackback(3) | Comments(0)


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