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2006年 03月 04日
◎『死亡推定時刻』のあと、ノンシリーズ◎『命の終わりを決めるとき』を出した著者だが、本書『暗い日曜日』は再び『死亡推定時刻』の主人公を起用し、リンメイ先生シリーズ(評者が勝手に命名)第2弾として書かれた物語である。え?『死亡推定時刻』に主人公なんていたっけって?本書内でも少しだけ触れられている“山梨少女殺人事件”で、冤罪に立ち向かった弁護士リンメイ先生こと川井倫明。それが『死亡推定時刻』という作品であり、今回もその主人公弁護士が、冤罪事件に苦悩する。 前作では、あらぬ疑いをかけられた被疑者であったが、今回の被疑者は自ら罪をかぶろうとする著名な画家である。関係清算のため、愛人をメッタ刺しし、自らも逮捕現場で自白という男の背景、心中を推し量っていく物語である。 実は、正直言って、解き明かされる真相、人物たちの心の動きの蓋然性など、いまひとつパッとしないのではあるが、法曹界に身を置く作者ならではという部分もなきにしもあらずで、簡単に言うと、自ら罪を100%認める者の裁判は斯様に進行するのである的シナリオは、ひとつの教本としても興味深いので、色々と見聞を広めたい方は試しに読んでみても悪くない。 犯罪を疑われ、それを被疑者が完全に認めていても、やはり裁判という儀式を踏まねばならず、裁判という儀式の中に、また色んな踏まねばならぬ儀式があり、あんたやったね、はいやりました、じゃあ懲役15年というように、ファーストフードのオーダーのように簡単に済ませられない一種独特の世界が、ここに描かれているのである。まあ、読んでみてちょ。 しかし、自ら罪をかぶろうとする場合・・・あなたなら、誰かのために身代わり殺人犯として、自分の身を司法に委ねるような場合がありうるだろうか?多分、ないとは言えないだろう。子供の罪の身代わりとか。評者の場合、嫁さんの身代わりもあり得るかな?残される子供たちのこと考えたら、役に立たない父親より、母親がなんて判断で。でも、上手くいかないだろうけどさ。 本書でひとつ大きな疑問が残ったのが・・・殺害された愛人が深く画家を愛していたことは読めばわかるのだが、実の子をいかほど愛していたのか?その辺のバランスが、ちょっと不自然なような。(20060304) ※悪い本じゃないよという形容が相応しい一冊。(書評No635) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2006-03-04 14:14
| 書評
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