2004年 10月 04日
本のことども」が3年を突破し、400冊をクリアしたのは、これはマイニュース。じゃあ、一冊目は何だったの?という疑問は、「ことどもフリーク」にとって、これは必須知識。さあ、あなたはこの場で答えられるかな。答えは『風流冷飯伝』米村圭伍である。 このサイトを始めた当初は、読了した本を書評するという今のスタイルではなく、とにかくお薦めしたい本を紹介していこうという気持ちでいっぱいだった評者。あまり読まれていないかもしれないけど、これはお薦め、読んでみて、の本を紹介して、日本全国の人気サイトにのし上がろうと、勘違い甚だしく意気込んでいた評者なのである。その第一発目が『風流冷飯伝』。とにかく、風流で、長閑で、少し滑稽で愛らしい人物たちが登場するこの本を紹介したい、みんなに読んでもらいたいと選んだ作品なのである。評価は○にしている当時の自分だが、今の自分が再評価するなら◎である。当時は、自分の評価に自信がなかったようである、評者(笑)。 その後、シリーズ第二作『退屈姫君伝』を読んだのだが、◎◎の評価にもかかわらず、当時の週2冊更新というスタイルと、あまりに面白すぎて言葉に落として書評にすることを躊躇い、結局、紹介しなかった評者。当時(バージョン2)の頃は、初心を忘れ、バイタリティーもなかったようである、評者(笑)。 そして、シリーズ第三作目『錦絵双花伝』(2003/9文庫化に際し題名を『面影小町伝』に改め)を読み始めた評者だったのだが、シリーズ二作目までの長閑な雰囲気より少しおどろおどろした謀略的な展開に、3/4まで読み進めて、加えて図書館の期限のため最後まで読まずにそのままにしてしまった過去を持つ。当時(バージョン3)の頃から、意外に本に対する執着心がなかったようである、評者(笑)。 そういう流れの中で、三部作に接してきた評者なのだが、本書『おんみつ蜜姫』でシリーズ四作目を手に取る。う~む、ふ~む。こりゃあ、あれだね。少し、音色の違う三作目『錦絵双花伝』を省いて、『風流冷飯伝』『退屈姫君伝』そして本書『おんみつ蜜姫』を小藩三部作と位置づけたほうがいいな。間抜けた雰囲気が共通してるし。あっ!今書いていて気付いたけれど、三部作とか四部作とか書いていたが、どういう〇部作か説明していなかったことに気付いたべ。色々言い方はあろうと思うが、評者としては直前に書いたように、江戸を舞台にした「小藩三部作」と呼びたいと思っている。 『退屈姫君伝』のめだか姫に続き、今回も愛らしい姫が主人公である。ただし、めだか姫と違い、武芸に秀でちょっと無鉄砲、でいながら、潔さは二人の姫とも共通したところがあるので、『退屈姫君伝』が面白かったという読者には、超お薦め。 九州の小藩におわす蜜姫。馬で散歩の途中に、連れ立っていた父上の危機を救う。なんで父上のような弱小藩の殿様が狙われるのか問いただすと・・・近鉄、オリックス合併じゃないけれど、小藩同士の合併劇が画策されておったとな!それにしても、父上を狙った者は何者ぞ?と思った無鉄砲な姫は、おんみつの旅路へ。ここで、風流にも滑稽にも暢気にも「おんみつ蜜姫」と自分を名づけたのは姫自身だし、母親も路銀をたっぷり持たせて姫を送り出すから、その後の愉快そうな展開に、後は身を任せるだけの読み手の評者だったのである。また、オジサン読者としても、愛くるしい姫という設定は、やっぱり読んでいて楽しくて仕方ないのである。 この三部作、どれから読んでも問題はない。問題はないが、本書『おんみつ蜜姫』でもシリーズ一作目で活躍した冷飯浪人たちが登場するので、その人物たちの位置づけをわかった上で読んだほうが楽しさ倍増すると思うことから考えると、出来ればシリーズ順に読んだほうが楽しいのかな。『風流冷飯伝』『退屈姫君伝』は既に文庫化。外伝たる(って、本当はそうじゃないんだけど、評者が勝手に三部作からはずしてしまったので)『錦絵双花伝』も、『面影小町伝』として、既に文庫化。『退屈姫君伝』まで読んで、一気に『おんみつ蜜姫』にいってもいいし、外伝文庫『面影小町伝』でたたらを踏んでから、『おんみつ蜜姫』の文庫化を待つのも一興かと。とにかく評者が言いたいのは、『風流冷飯伝』『退屈姫君伝』『おんみつ蜜姫』の小藩三部作は、読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!なのである。(20040920) ※シリーズとは別の既評『紀文大尽舞』も同様の面白さがあるが、これは途中までしか続かない。途中から謀略小説的な雰囲気に変わってしまったのが惜しかった。『影法師夢幻』は、これもやはり図書館の期限のために、冒頭50頁くらいしか読んでいない評者。今度読もうかな。(書評No406) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2004-10-04 14:05
| 書評
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Trackback(8)
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Comments(21)
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from 日々のちょろいも
at 2004-10-12 08:36
タイトル : 『おんみつ蜜姫』&『永遠の朝の暗闇』読了。
永遠の朝の暗闇 おんみつ蜜姫 昨夜はまたまたライブドアが重くてアップした日記が反映されなかったわ…(ー_ー;)。というわけで、以下は昨日の日記。 米村圭伍『おんみつ蜜姫』&岩井志麻子『永遠の朝の暗闇』読了。感想はこちらとこちら。これで課.... more
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from f丸の生態・デイリー
at 2004-11-21 16:03
タイトル : 長かった(涙)ようやく時代劇の連敗止まった!トンネル脱出..
やっとこさ面白かった!と満足できる時代小説と出会いました。思い返せば、去年の十月ころに読んだ、宮部みゆきの「あかんべえ」以来ですよ。たぶん。 一年以上の、宇江佐真理、乙川優三郎、山本一力といった直木賞受賞者及びノミネート常連者が束になっても止められなかった、f丸時代劇連敗トンネルのくらやみを吹き飛ばしてくれたのは、おてんばで陽気なお姫様の冒険活劇「おんみつ蜜姫」でしたよ。蜜姫さん、どうもありがとう。あなたは父上だけじゃなくて、愛知県の時代劇アレルギー君も救ってくれたよ。とりあえずは。 絵に描いたよ...... more
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from どこまで行ったらお茶の時間
at 2004-11-25 13:17
タイトル : 米村圭伍『おんみつ蜜姫』
おんみつ蜜姫 姫、ご乱心! 嫁入り直前に隠密稼業に? 小藩の合併に立ちはだかる正体不明の刺客と巨大な陰謀。忍び猫のタマを従え、九州豊後の蜜姫は江戸をめざす。敵は暴れん坊将軍こと徳川吉宗? これぞ痛快「姫君小説」の新古典。 面白かった面白かった、すんごく面白かったのよっ!! ぢつは時代物が大の苦手な私。 ものすごく面白そうだと借り出してはみたものの なかなか読む気になれなくて、ずーっとほったらかしだったのだ。 いざ決心して、手にとって読み始めたら…講談・講釈口調というのかな? 軽妙かつ...... more
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from 読書飛行
at 2004-11-28 16:29
タイトル : 米村圭吾『おんみつ蜜姫』
・米村圭吾『おんみつ蜜姫』 舞台は江戸時代の日本。吉宗の治世。九州豊後の小藩の姫が主人公。文章は丁寧語の語り口調で書かれる ただ、陰謀や斬りあいなどが出てくる物語の筋から摺るとサスペンスを感じたいが、この登場人物や騙り口調だとどきどきする感じがなくなっ...... more
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from Ciel Bleu
at 2005-10-24 17:17
タイトル : 「おんみつ蜜姫」「退屈姫君恋に燃える」米村圭伍
[amazon] [bk1] [amazon] [bk1] 退屈姫君の新作が…!ということで、早速読もうと思ったのですが、そういえば風見藩絡みの「おんみつ蜜...... more
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from 合気道!大好き
at 2005-12-26 12:57
タイトル : 米村圭伍 退屈姫君伝
畠中 恵の「しゃばけ」がとってもよかったので↓ http://blog.so-net.ne.jp/loveaikido/2005-12-07 江戸時代の楽しい物語が読みたいなぁと思って手に取った本です。 (ジャケットの絵も一緒でしたし・・・) いままでは、江戸時代といえば、司馬遼太郎といった時代小説を イメージしていました。でも、このシリーズは、ぜんぜん違います。 じゃじゃ馬で美人のお姫様、究極の暇人である武家の次男坊(冷飯食い)、 ハンサムな忍者、...... more
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from 図書館で本を借りよう!〜..
at 2006-01-17 13:13
タイトル : 「おんみつ蜜姫」米村圭伍
「おんみつ蜜姫」米村圭伍(2004)☆☆☆★★ ※[913]、国内、小説、時代小説、小藩、江戸時代、やんちゃ姫 ネットの本読み仲間の間では、そこそこ評判のよい本書であったが、残念ながらぼくには合わなかった。 きちんとした時代考証のもとに書かれた、丁寧な佳作、小品であることは認める。しかし、こじんまりまとまりすぎている。ペーソスあふれたほのぼのユーモア小説と思いきや、存外簡単に人が、それも血を流して(!)死ぬ。旅を通じた成長がない。講談の語り手よろしく作者が顔を出す語り口がちょっと...... more
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from たりぃの読書三昧な日々
at 2006-02-08 21:17
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みっちー
at 2004-10-04 14:07
x
お,ブログデビューおめでとー!
0
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kotodomo at 2004-10-04 14:16
ありがとう。
今少しずつ進化中。
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KOICHI
at 2004-10-04 14:22
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うおーい(-_-)」
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kotodomo at 2004-10-04 14:27
はい(^^)/なんでせう 小市さん?
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ぶひ
at 2004-10-04 15:32
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あれ、さっき覗いた時は未だ何にもなかったのに?^^
でびゅーおめでとうございます☆彡
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HERMAIONE
at 2004-10-04 16:04
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おお、早い(笑)もう引越したの?
ブログデビュー、おめでとうございます。
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kotodomo at 2004-10-04 16:13
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みっちー
at 2004-10-04 16:36
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kotodomo at 2004-10-04 16:45
ちょっと待ってて。
今、使い勝手がようわからんとこですたい(笑)
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四季
at 2004-10-04 17:43
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見に来ましたよー。早速じゃないですか!!
書評もアップされてるし… 「空中ブランコ」、面白かったですよね! 私は「邪魔」がいまいち合わなくて、もう読まないかもと 思ったんですが、やっぱり読んで良かったですー。 あとね、米村圭伍さん「退屈姫君海を渡る」っていうのが 先月だか今月だか新潮文庫で出たとこなんですけど これはやっぱりこの関連なんですかね? 読まれてます?? あっちの掲示板も、このまま生かしておくんですね。 どこにコメントをつけたらいいか迷う時とか、 やっぱり掲示板があると便利ですよねー。 あ、カテゴリ分けだけ最初にしっかりしておいた方が 後で楽だと思います。って、既にしっかりされてるか。(笑)
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しゃんテン
at 2004-10-04 20:47
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見に来ましたー。
お引越しおめでとうございます。 『おんみつ蜜姫』と『好き好き大好き超愛してる』が気になりますね。 前者はあんみつ姫と関係があるのかないのかとか(いや、ジョークですが) これからも貴サイトの発展となにより聖月様のご健康をお祈りしております。ではー
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フリップ村上
at 2004-10-04 21:44
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あー。驚かせますなぁ! いきなりこういう展開でくるとは!
でも、長らくお望みだったテキストアップのクイックレスポンスが実現できて良かったですね。 いまいち見方がよくわかってませんが、近いうちに慣れます。 古川新作はまだ未読なのですが、文章は運動神経っていう聖月さんの断言にはうんうん納得してしまいました。 そうですよね、リズム感と言い換えてもいいかもしんないけど、結局身体感覚ですよね。聖月さんがまったくまっさら状態でPCに向かってあれだけの文章を書いてしまうというのも、イチロー的なアスリートボディの賜物なんでしょうか。 ちなみに『栄光一途』私の個人的な感想を申し上げれば「クソつまらなかった!」です。
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kotodomo at 2004-10-05 09:37
四季さん こんにちは
本当にあっというまのサイト移転、発展でした。 管理人さんのブログ紹介で、何気なく作ってみて、 「ほら、こんな風にできた(^O^)/」って管理人さんに見せたら、 いつのまにか、こちらがメインになる話に。 「退屈姫君海を渡る」は私も気になっていたとこ。そうしていたら、米村圭伍読みの、リンク先すみたこさんが、感想を早速アップ。 どうやら、面白そう。めだか姫のかわいい活躍、読むつもりですよ。 カテゴリ分け。管理人さんにも同じこと言われましたけど・・・う~ん、悩むとこですね。実際、人のブログサイト行くと、細かい仕分け、見方がわからなかったりして。作る側と読む側、視点が違いますもんね。少し考えながらやってみます(^.^) おお、言い忘れていました。「空中ブランコ」娯楽的読書を堪能しました。
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kotodomo at 2004-10-05 09:42
しゃんテンさん、こんにちは。
考えてみれば、最初にブログなページ見たのは、しゃんテンさんとこだったかも。 簡単でいいですね、こういうの。でも、独自性とか希薄かなあ。 まあ、何とかしていきましょうと思っています。 「好き好き大好き超愛してる。」は多分、読む人によって評価バラバラ。 ×の人も多いでしょう。でも、私は好き。 「おんみつ蜜姫」最初私は、あんみつだと思っていました(^^ゞまあそれはそれとして、かわゆく強い姫が大活躍のお気楽時代物。楽しみましたよ。 いつも励ましのお言葉ありがとうございます。 ブログの会社が潰れない限り、永遠のサイトへの道が広がったような気がします。
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by
kotodomo at 2004-10-05 09:46
フリップ村上さん こんにちは
驚いたのは私です。だって、昨日の朝まで、こんなこと考えてもいませんでしたから。試しにいじって作ってみたら、いきなりこうなったみたいな。 確かに、こういう形になれば、あとの更新のタイミングは自分本位。 随時更新になるのか、やっぱまとめて更新になるのか・・・自分でこれから考えます。 はい、文章は反射神経、運動神経です。 はい、「栄光一途」読みません。っていうか、自分でもああ書きながら、読む順番回ってこないだろうなあなんて思ってましたから。優先順位的に。 見方馴れてください。私もなれやすいに、工夫してみますね。
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kotodomo at 2004-10-05 23:20
ども、すみたこさん、聖月です。
ええ、「退屈姫君海を渡る」を楽しみに読みたいと思っております。 でも、他の本があって、順番はまだ後位置。 ブログ、体裁だけできるようになって、本質は全然わかっていないのです。 多分、おおよそこのままいじらないかと(^^ゞ
トラックバック有難うございます。
私の感想はちょっと辛めですが。『退屈姫君伝』や『影法師夢幻』が私は大好きだったので、それに比べるとということで。 よんでいる間、米村ワールドに浸れて愉しかったです。 「退屈姫君海を渡る」も是非読まなければ。 ではでは。
しゃんテンさん こんにちは
最近思うのですが、TBって既知のHN同士でしたら、ご挨拶はいらないかも。 でも、こちらこそ今後もよろしくで。 そういえば、はるか↑のコメントで、気になる発言されてたのですね。 はい『退屈姫君海を渡る』も是非に(^.^)
すみませぇん、ダメでした。自分のレビューに書いたとおり、成長がないのは、いけません。ロマンスがないのも、もっとダメ(本当か?)
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