2004年 10月 04日
最近の直木賞受賞作品の中で、ダントツに読むべし、読むべし、べし、べし、べし、の小説じゃないかな?本書『空中ブランコ』。 前作『イン・ザ・プール』の続編にあたるのだが、単独で充分に面白い。いや前作よりはるかに面白い。前作で登場した、奇妙な精神科医伊良部。色んな精神的な病に対して、これまた奇妙な看護婦とのコンビで、奇妙奇天烈な治療だかなんだかわからない施しをしていた前作。いくら面白くても、二作目が前作を凌ぐことはなかろうと、高をくくっていた評者はビックリ。いやあ、面白いぞ『空中ブランコ』。 何ゆえに前作より面白くなったかというと、前作では奇妙な味を見せるくらいに止まった感のあった主人公伊良部が大活躍することや、前作では触れられなかった彼の過去がチラホラ紹介されるところだろうか。 「僕にも空中ブランコさせてよ。させてよ。」と子供みたいに駄々こねて、じゃあ仕方ないやってもいいけど、怪我しないで・・・ヒャッホーと躊躇なくブランコに飛び乗っていく主人公。前作では本当に総合病院の御子息だかどうだかわからなかったけど、そこらへんも明らかに。また、医学生時代の彼の奇行も披露される本書は、とにかくすこぶる面白く、読み人問わずの大衆娯楽本なのである。 精神の病のパターンもパワーアップ。そういえば、評者の同級生にも先端恐怖症ってやつがいたなあ。何か向けると、顔を背けて、ちょっと、俺それ苦手なの、引っ込めてってさ。そうそう、評者にもブッチャケテしまいたい症候群の経験があるぞ。高校時代の授業中、今自分が教科書投げてみたら教室の反応どうなるのかな、やりたいな、ああ、ブッチャケタイなあみたいの。そうそう、いるよ、いるいる。明らかに、私の頭はカツラです、みたいなオヤジ。自分でわかってんのかなあ?カツラに見えるってこと。頭がカツラですよ~!!!って、主張している自分の存在、わかってんのかなあ? しかし、奥田英朗って、う・ま・い・ね。こういうバカ話みたいな小説は、これまでもこれからもたくさんあるけど、そこに上手さを感じさせる小説っていうのは、なかなかない。これで三作目が本書『空中ブランコ』より面白かったら、そのときは◎◎◎の評価をつけよう。(20040927) ※『イン・ザ・プール』以外の作品は『ウランバーナの森』のみ既読。やっぱ『邪魔』や『最悪』も読まねば。(書評No409) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2004-10-04 14:33
| 書評
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Comments(3)
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from 壁唐ニコルソンの非暗号化日記
at 2004-10-09 22:35
タイトル : ■空中ブランコ/奥田英朗
空中ブランコ 面白いっていう意味には二つ、かそれ以上あると思うわけです。 腹筋を痙攣させ、歯ぐきを丸出しにする面白さ。それと、次に何が出てくるかという予想を裏切られるような面白さ。 要は、歯ぐきを出させようとするかしないかです。そして、読みたい小... more
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from 日々のちょろいも
at 2004-10-13 09:26
タイトル : 『空中ブランコ』読了。
奥田英朗『空中ブランコ』読了。感想はこちら。 いやー楽しかった。これが直木賞受賞作かと思うと、直木賞もまだまだ捨てたもんじゃないなあ、と思う。こうやって今回の受賞作『邂逅の森』と『空中ブランコ』を両方読んでみると、今回の審査員の選択は結果的には正解だ.... more
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from 活字中毒日記!
at 2004-11-04 07:41
タイトル : 『空中ブランコ』 奥田英朗 (文藝春秋)読了!
空中ブランコ 奥田 英朗 《bk1へ》 著者“自著を語る”はこちら “満を持して刊行”ってこの作品のことなんだろう。 読者がワクワクして本を手にとる。 きっと出版界の理想であるにちがいない。 それもこれも“スーパーキャラ”伊良部大先生のおかげだ。 前作『イン・ザ・プール』で初登場してファンの度肝を抜かせた伊良部先生。ますますパワーアップして再登場です。 もちろん男性ファンお待ちかねの“Fカップ看護婦”のマユミちゃんも健在。 一気に読めること間違いなし。 ただし電車の中...... more
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from りょーちの駄文と書評とア..
at 2005-03-03 13:50
タイトル : 奥田英朗:「空中ブランコ」
空中ブランコ奥田英朗著出版社 文芸春秋発売日 2004.04価格 ¥ 1,300(¥ 1,238)ISBN 4163228705bk1で詳しく見る りょーち的おすすめ度: 爆笑。そして爆笑。 どーよ、奥田英朗。 本書「空中ブランコ」は「イン・ザ・プール」の続編。そう、あの男、伊良部が..... more
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from りょーちの駄文と書評とア..
at 2005-05-27 10:58
タイトル : 奥田英朗:「空中ブランコ」本日フジテレビで放映(録画の方..
空中ブランコposted with amazlet at 05.05.27奥田 英朗 文藝春秋 (2004/04/24)売り上げランキング: 4,508通常2〜3日以内に発送おすすめ度の平均: プロットはすごい 爆笑した。 こんなDRがいてもいいAmazon.co.jp で詳細を見る 本日はいよいよ奥田英朗の原作「空中ブランコ..... more
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from 本を読む女。改訂版
at 2005-08-20 23:30
タイトル : 「空中ブランコ」奥田英朗
空中ブランコposted with 簡単リンクくん at 2005. 5.31奥田 英朗文芸春秋 (2004.4)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る 伊良部総合病院、2冊目。1冊目は「イン・ザ・プール」 一作目が面白かったので今回も間違いはなかろうと手に取った。 そして、ちゃんと面白かった。 面白いってのは比喩ではなくて、本当に笑えて困った。 普段電車で本を読むことが多いが、たまたまこの中の短編「義父のヅラ」は 家で読んだんだけど、これが...... more
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from 読んだモノの感想をぶっき..
at 2006-04-16 07:56
タイトル : 空中ブランコ (奥田英朗)
ヒューマン系コメディ短編集です。5編収録。 型破りな精神科医伊良部が狂言回しとなって、各編ごとに心因性の悩みを抱えた人物が登場。ヒーロー特撮物や時代劇みたいに、展開は完全にパターン化されていて、 悩みの自覚 ↓ 伊良部か゜「いらっしゃーい」と甲高い声で迎える ↓ 病状に関係なくセクシー看護婦がビタミン注射 その様子に食い入る伊良部 ↓ 患者は退きつつも伊良部のペースに巻き込まれる ↓ 伊良部が相手の生活(主に職場)に飛び込んで天真爛漫に振舞う ↓ そんな伊良部に振り回され...... more
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from AOCHAN-Blog
at 2006-05-15 17:46
タイトル : 「空中ブランコ」奥田英朗
タイトル:空中ブランコ 著者 :奥田英朗 出版社 :文芸春秋 読書期間:2006/04/11 - 2006/04/12 お勧め度:★★★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコン病のプロ野球選手。困り果てた末に病院を訪ねてみれば…。ここはどこ?なんでこうなるの?怪作『イン・ザ・プール』から二年。トンデモ精神科医・伊良部が再び暴れ出す。精神科医伊良部シリーズ第二弾。第131回直木賞受賞作で、5編の短編からなる連作短編集...... more
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from 読むなび!(裏)
at 2006-05-18 09:41
タイトル : 空中ブランコ 著者:奥田 英朗
≪採点(読むなび!参照)≫ 合計:95点 http://koroxkoro.web.fc2.com/ ≪梗概≫ 人間不信のサーカス団員、尖端恐怖症のやくざ、ノーコン病のプロ野球選手。困り果てた末に病院を訪ね... more
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from 駒吉の日記
at 2006-06-02 11:55
タイトル : 読書:空中ブランコ(奥田 英朗)
空中ブランコ(奥田 英朗) 「いらっしゃーい」 図書館『イン・ザ・プール』はなかったのでまずはこっちから。 映画 でもトンデモ医師だったけど、小説は更にすごい!!! 自分のやりたいことを推し進めて治療をしてしまうなんて~いいぞ伊良部センセイ&マユミちゃん!... more
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from 三匹の迷える羊たち
at 2006-08-19 23:58
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from "やぎっちょ"のベストブ..
at 2006-10-24 18:13
タイトル : 空中ブランコ 奥田英朗
空中ブランコ この本は、 「町長選挙」のコメントで 皆さんに勧めていただきました。 ありがとうございました。 ■やぎっちょ書評 「町長選挙」「インザプール」に引き続き、第三弾!・・・って、この本はシリーズ二作目だけど・・・。 これで伊良部シリーズが全....... more
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from ぱんどら日記
at 2006-11-22 16:03
タイトル : 奥田英朗【空中ブランコ】
奥田英朗の【真夜中のマーチ】を読んだとき、【空中ブランコ】の主人公の「伊良部医師」がお見合いパーティーの場面でゲスト的に出てくると面白そうだと思った。そして【真夜中のマーチ】の妄想キャスティング案では、「伊... more
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from デコ親父はいつも減量中
at 2006-12-04 00:32
タイトル : 空中ブランコ<奥田英朗>−(本:2006年119冊目)−
文藝春秋 (2004/4/24) ASIN: 4163228705 評価:90点 (ネタバレあります) 「町長選挙」を最初に読んでしまった私は、2冊目に「空中ブランコ」を読んでしまったのでした。ということで次が「イン・ザ・プール」。 伊良部先生大活躍シリーズを逆から読むのもまあそれ...... more
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from 本を読もう
at 2007-04-23 17:36
タイトル : 空中ブランコ
すごく面白い小説です。 安心して人に勧められます。 僕がこの作品がスゴいと思うのはただ笑えるだけじゃなくて、この作品に出てくる患者たちが現代を生きる僕たち一人一人を表してるのではないかと思わせることです。 彼ら、彼女らほどではないけど、僕らも程度の差こそあれどこかおかしい所があって非合理的 な行動を取る。 それはもしかして現代社会を生きるためには仕方のないことなのか ... more
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from たこの感想文
at 2008-01-24 19:39
壁唐ニコルソンさん、こんにちは。
嬉しいなあTB。ブログ始めて一週間経たない私は、まだこのTBの使い道、わからないとこなのですが(^^ゞ でも、この作品いいですよね。多くの人が楽しめる娯楽小説で。「義父のヅラ」がお気に召されたという感想。私は表題「空中ブランコ」の中で、伊良部と一緒にサーカスに行った看護婦の描写が好きでした。細かい雰囲気の描写にニヤリ。
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どうもこんにちは。実は私は「イン・ザ・プール」を読んでいません…先に「空中ブランコ」を体験してしまいましたが、そのルーツとなる話の方もそのうち読みたいと思っています。本の紹介をかなり細かくされているようなので、参考にさせて頂きます。それでは、また。
壁唐ニコルソン どうもです。こちらもTB今日覚えたてで相互させていただきました。多分多いと思います。『空中ブランコ』先の方。なんてったって直木賞ですからね。私も、図書館の予約上、待ち時間の少ない『イン・ザ・プール』が先に。
でも、シリーズ短編の一作目は、作者の姿勢がわかるので、是非機会があれば。 本の紹介、細かかったり、あまり書いてなくて身辺雑記書いていたりです(^^ゞ |
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