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2006年 04月 07日
多分、帰っちゃうんだろうなあ・・・。今、もし、8年後に惑星が地球に衝突し、人類は滅亡しますという話になれば、高校生男子の“まだ”の人たちは大変である。健全な高校生男子の“まだ”の人たちは、全校男子生徒数500人であれば472人は、自分はいずれ童貞を捨てんとしており、できればそれは20歳前が願望であって、そこに自分の命の限りを知らされれば、童貞のまま死ぬるわけにはいかん!と、早よ捨てよと居ても立ってもいられなくなるわけであり、ハハ、8年後と言えば俺って24歳じゃん、そのくらいまでには普通捨ててるっしょ、なんて達観できる者はそうそうおらんからである。中学生男子なんかは、そういうことに3年後くらいになって気づいちゃったりするわけで、あと5年しかないと思い、尚更大変に落ち着かないかもしれない。 資格試験を受けんとする者は、見えない未来のために努力することを放棄し、図書館の予約待ち順が100番とかいう人は、慌ててamazonでカード支払で購入して、金なんか払わんと決め込むかもしれんし、ションベンしても後の人のために流さなくなるわ、細木数子は、人の未来なんか予言しなくなるし、とにかく世の中は段々と狂ってくるわけである。略奪、復讐殺人、世をはかなんだ自殺や無理心中、そんな世の中で生きている人々の8つの物語を収めた連作短編集が本書『終末のフール』である。 伊坂幸太郎の作品を簡単にいうと、何気ない器の中に物語を入れ込み、はてさてその粗筋は?というと、さほどの筋というものはありませんというパターンが多い。例えばこれまでの、『重力ピエロ』は家族愛という器に、『砂漠』は学生生活という器に入った傑作小説なんだけど、どういう粗筋?どういう内容?と問われれば、家族愛の話とか学生生活の話とか、その器について形容せざるを得ないのである。本書も一緒。惑星衝突3年前の人々の暮らしを描いた物語と言えるのだが、大きな粗筋なんてものはそこには存在しないのである。そこにあるのは伊坂流伊坂節。そういえば、本人も、このミスなんかの作者アンケートに答えて、次の作品は超能力の話です、なんて器の話をよくしているし。 佳作が収まった珠玉集ではあるのだが、一作だけ伊坂君らしくないなあと思ったのが「籠城のビール」。ある兄弟が復讐殺人のため、ある男の家に押し入る。今まさに豪華な晩餐を食さんとしていた男と妻と娘。怯えながらもスープを注ごうとする妻。ステーキを食べようとする娘。ここで読者はハハーンと思うわけで、後で理由が書かれるとヤッパリと頷くのだけど、その理由はわかったにしても、その理由に至る過程の理由がよくわからないのである。理由の理由に蓋然性がなく、普通、そういう経緯でそこまで思わんよと思うわけで、思ったからという理由が、そうは思わんと思うのは評者だけなのか?と、いくら書いても読んでない人には意味がわからんよなあ(笑)。いや、評者が言いたいのは、この作品の中で、伊坂君にしては筋の展開のために、少し不自然で無理な話を持ってきたかなということなのである。まあ、評者は天邪鬼だから、そう思わんかった人も多いだろうし・・・未読の方は、そこんとこよろしく読んでね。 多分、帰っちゃうんだろうなあ・・・というのは、評者の場合はそういう行動を取るのだろうなという夢想である。もうこの世は8年でオシマイですと言われれば、単身赴任で娘たちの将来のために頑張っているその将来が8年しかないわけで、なら家族の元へ帰っちゃって別の生活にチェンジするだろう。世の中が混乱することなく意外に平穏に暮らせるなら、不自由のない分稼いで、ご飯と味噌汁を喰らって家族と団欒し、死ぬまでに本当に読む気があって買ったの?なんて自問していた積読本の消化を死ぬまでの娯楽に生きていくのであろうなあ。(20060407) ※表題作「終末のフール」の奥さんの“嘘ですよ”の言葉が平和で好きだったのことども。(書評No641) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2006-04-07 18:38
| 書評
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Trackback(19)
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Comments(2)
はじめまして&TBさせてもらいました。やっぱり、旬の作家ですよね。この特殊環境におけるなにげなさ・・・読了後私は幸せな気分になれました。あと、私のHPの方にリンクを貼らせてもらいました。問題だったら連絡下さい。また書評を読ませてもらいます。
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KOROさん こんにちは(^.^)
伊坂流伊坂節いいですね。出来不出来は多少ありますが、粗の見えない作家の一人かと。 リンクは全然構いません。というか、このサイトにはポリシーみたいのは何もないのです(^^ゞ いっつも出たとこ勝負です。 |
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