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「本のことども」by聖月

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2006年 06月 25日

◎◎「町長選挙」 奥田英朗 文藝春秋 1300円 2006/4


 人はうろ覚えの言葉を座右の銘とか好きな文句とかにする場合があるわけで、評者の場合、多分、太宰治の文庫『パンドラの函』にその昔併録されていた「正義と微笑」の中の最後のほうに書かれていた文章“(素直に歩いていこう・・・みたいな文章の後に続く)思わせぶりを捨てたなら、そこは意外に平坦な道らしい”というのがそれである。

 例えば、若い時分の男性なら、女性にモテタイとか、女性とヤリタイとか、なるべくなら多くの女性に好かれたい(ヤル気もないのに)という輩が多く見受けられる。評者もそうだったのであろうが、結婚もして子供もいて、今の生活が一番いいやなんて安穏としてくると、女性と接しても肩に力が入ることもなく、たまにセクシーダイナマイトな女性だと股間に力が入ることはあったとしても、少なくとも、まあ自然体で臨むことができるわけで、そういう意味ではもう老成している評者から見ると、イマドキの若い未婚の男性の女性への接し方は、もっと肩の力を抜いて接せんとアカンよベービー坊やと思うわけである。

 異性とのことに留まらず、出世だとか、金儲けだとか、運動選手だとトップになりたいだとか、そんな欲というかこだわりというか、そんなものがふと無意味に感じて世の中を見回したとき、要するに人生というものを肩の力を抜いて眺めると、意外と平坦な道が広がっているものである。

 書評サイト運営なんてものもそうで、評者も5年前に始めたときは人気サイトになりたいとか、アクセス数を増やしたいとか、喫茶店で茶を啜っていたら隣のOL二人組みが“本のことどもの聖月っちってさあ・・・”なんて話を小耳に挟みたいなんて思っていたものだけど、最近は肩に力を入れようにも、本を読めずに書評の更新が滞っているだけに留まらず、ほぼ毎日更新の日常のことどもも書かなくなってきた今日この頃で、そうすっと当然のごとくアクセス数なんかも目に見えて減ってきているわけなんだけど、まあいいか、なんて思ってしまい、ついでにブログをやめてみるのも悪くはないか・・・と、心の2%くらいで思ってしまうのは、実際にはやめることはないのだけど、ひとつ肩の力が抜けてしまっていることの証左で、まあサイト開始以来大体のことはやってきたので(リアル本屋にリアル「本のことども」コーナーが出来たり、地方新聞にとりあげられたり、オフ会で知り合いが増えたり、記事が縁で作家さんと飲んだり・・・)、あとはサイトを訪れた人が見やすいようにマイナーチェンジな改造をと思っているくらいなのである。

 で、なんでサイトをやめる気がないのかというと、少なくとも顔を知った友人知人が10人くらいは読んでくれているのがわかっているからであり、“元気にこんな風に過ごしているよ(^.^)”という発信なのであり、例えば、たまたま先日このミス作家さんたちと飲む機会があったことも、記事的には“どうや!凄いやろう!”的に書いてはいるけど、自分としては縁についてのことを書いているだけで、今度その友人知人たちに会ったときの話題にでもなれば・・・そんな感じで書いているようには見えない?のも聖月節の特徴だから仕方がないのことども。

 本書『町長選挙』は、『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』に続くトンデモ精神科医伊良部シリーズの第3弾で、「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」「町長選挙」の4つの短編が収められている。どの作品にも共通していることは、トンデモ精神科医伊良部の活躍?と、アホな病を持つ人物たち、そして思わせぶりを捨てたならそこは意外に平坦な道らしいという落ちである。まあ、精神的な病というのは、そんなもんなんだろうけどさ。

 そして、「町長選挙」を除く最初の3編だけで考えた場合、今回のこのシリーズは有名人パロディ編と位置づけることもできる。2作目『空中ブランコ』が職業編、そして今回が有名人パロディ編てな感じである。マスコミ編でもいいかな。&この3編については、まっこともって連作短編集の色が強めで、伊良部にお世話になった(?)各編の主人公たちが他の短編でも取り沙汰されるところが、また読んでいて楽しいところである。

 「オーナー」権威ある新聞社&プロ野球チームのオーナーの病とは?この人物ナベツネじゃないよ。ナベマン。

 「アンポンマン」一人勝ちのIT産業の寵児はその後逮捕され保釈されたけど、その人がモデル。

 「カリスマ稼業」44歳にして歌劇団出身のカリスマ女優の人気の秘密は、その見た目の若さ・・・って、これ誰がモデルなのか芸能界に疎い評者はわからん。小鳩くるみか(笑)。

 「町長選挙」評者の出身地は鹿児島。そこの徳之島ってところは、毎回選挙のたびに町が二分。負けたほうは4年間冷飯食い。土建の覇権争い選挙。そんな感じの伊豆の小さな島が舞台。

 最近、本が読めていなかったが、休みの本日日曜午前中で楽しく読み切りましたのことども。(20060625)

※毎月12冊くらいのペースで読めていた昨年までの5年間。今年は5月に4冊、6月はまだ3冊・・・だけど、まあいいか(^.^)(書評No653)

書評一覧
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by kotodomo | 2006-06-25 14:32 | 書評 | Trackback(11) | Comments(3)
Tracked from モグラのあくび at 2006-06-26 01:51
タイトル : 『町長選挙』奥田英朗 〜クリストファーロビンとの約束〜
伊良部シリーズ最新作は、前二作とは若干、趣きが違う。 なぜなら――、 患者が明らかに「某有名人」をモデルにして造形されているからである。 どこかにいそうな「一般人」ではなく、誰もが知っている「有名人」が患者になったために、本作は、これまでとは様相が違う。 中には、「おいおい、こんな描写しちゃって大丈夫?」と思ってしまうものもある。 「あの芸能人」や「あの有名人」が伊良部と絡みをみせる――会話をすると考えただけで、わくわくしてくること請け合いだろう。 それが、本作最大の魅力である。...... more
Tracked from 粗製♪濫読 at 2006-06-27 07:07
タイトル : 『町長選挙』 伊良部、離島で活躍
著者:奥田英朗  書名:町長選挙 発行:文芸春秋 傍若無人度:★★★★☆ 精神科医伊良部シリーズ短編集第3弾。 <東京都に属する離れ小島、千寿島。ここでは、4年に一度の選挙が、島を二分しておこなわれていた。両陣営の間で悩む派遣公務員の良平。そこに伊良部が赴任し、特養老人ホームがからむ接待攻勢が起きて、事態はさらに混乱していくのだった。(町長選挙)> 表題作の他に、「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の3作を収録。 この3つはモロに実在の人物のもじり。特に前二つは某元新...... more
Tracked from おいしい読書生活 at 2006-06-28 18:03
タイトル : 町長選挙/奥田英朗/文藝春秋
伊良部先生大活躍度★★★☆☆ 悩んでるのがあほらしくなるっ!ぐふふ &nbsp;「物事、死人が出なきゃ成功なんだ」とさ_(^^;) 町長選挙 文藝春秋 奥田 英朗 だいぶ知名度があがってきた伊良部一郎♪ 伊良部病院... more
Tracked from AOCHAN-Blog at 2006-08-25 21:57
タイトル : 「町長選挙」奥田英朗
タイトル:町長選挙 著者  :奥田英朗 出版社 :文藝春秋 読書期間:2006/08/04 お勧め度:★★★ [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ] 離島に赴任した精神科医の伊良部。そこは、島を二分して争われる町長選挙の真っ最中だった。伊良部もその騒動に巻き込まれてしまい…。「空中ブランコ」「イン・ザ・プール」でお馴染みの、トンデモ精神科医の暴走ぶり健在!伊良部シリーズ第三弾。掲題作のほか、3本の中編を収録。 前三話は、プロ野球チームのオーナーで且つ新聞社会長、IT業...... more
Tracked from "やぎっちょ"のベストブ.. at 2006-09-02 03:44
タイトル : 町長選挙 奥田英朗
町長選挙 ■やぎっちょ書評 伊良部&マユミちゃんのお話は実ははじめて。シリーズ三作目にして。 インザプールはDVD借りてきて見たので、本は読みませんでした。 それにしても、DVDの伊良部は(俳優誰だか忘れたけど)とても痩せていたので、まさかトドのように太ってい....... more
Tracked from たりぃの読書三昧な日々 at 2006-10-04 20:20
タイトル : 「町長選挙」(奥田英朗著)
 今回は 「町長選挙」 奥田 英朗著 です。この本は精神科医・伊良部先生のシリーズ第3作ですね。... more
Tracked from 男を磨く旅 at 2006-10-29 00:10
タイトル : 「町長選挙」奥田英朗著、読んでみました。
「町長選挙」奥田英朗著、読んでみました。&nbsp;&nbsp;「イン・ザ・プール」、「空中ブランコ」 に続く、伊良部先生シリーズ第3弾。シリーズが進むごとに「キャラ」が立って来ました。今回の登場人物は「町長選挙」以外は「旬な人」をPICK UPしています。渡辺恒雄≠ナベマン、堀江貴文≠アンポンマン、黒木瞳≠白木カオル。それぞれ、結構辛辣に皮肉っているが、実際にありそうなエピソードなんで楽しく読める。なんだかんだ言って彼らを「絶対の悪」にしないような配慮は、作者のバランス感覚を窺わせる。伊良部先生の「...... more
Tracked from デコ親父はいつも減量中 at 2006-11-25 16:28
タイトル : 町長選挙<奥田英朗>−(本:2006年115冊目)−
文藝春秋 (2006/04) ASIN: 4163247807 評価:90点 しまったやられた。 奥田英朗、こんなにおもろいとは知らなかった。 しかもこの小説にでてく変態精神科医の伊良部先生はシリーズ第3弾だっていうじゃないか。 そんなことはみんな知っていたのか。 しまったなあ....... more
Tracked from 読書とジャンプ at 2006-11-26 10:58
タイトル : 「町長選挙」奥田英朗
トンデモ精神医伊良部先生シリーズ第3段「町長選挙」。う〜ん、期待が大きすぎたのか、前2作に比べるとパワーダウンってのが正直なところ。まず思ったのが、前2作に比べて、伊良部先生がホントに何の役にも立ってない。いや、役に立たないのはいつものことなんだけど、...... more
Tracked from COCO2のバスタイム読書 at 2006-12-30 13:08
タイトル : 「町長選挙」
「それで人間関係に悩むわけ? めでたい人だなあ」屈託なく笑って言った。「何をした... more
Tracked from ぱんどらの本箱 at 2007-10-22 12:44
タイトル : 奥田英朗【町長選挙】
治療をせずに治療する神経科医の伊良部一郎は名医か、はたまたヤブ医者か。 日本一の発行部数を誇る新聞社の会長からIT界の風雲児まで、有名人がこぞって伊良部総合病院神経科を訪れる。 【イン・ザ・プール】、【空中ブランコ】に続く伊良部医師シリーズ第3弾。...... more
Commented by みつ at 2006-06-29 11:45 x
はじめまして。こうじょうコム管理人のみつと申します。
書評について書かれているのを読んで書き込みさせていただきました(^^)。コメント欄にすみません(^^;)。
今、多くのブロガーの皆さんと協力してブログのリンクサイト「こうじょうコム」(http://kojo-com.main.jp)を運営しているのですが、もしよろしければリンクさせていただけないでしょうか?
会社ではなく皆さんとの協力で運営しているサイトなので、比較的アットホームな雰囲気になっています。
ブログ紹介にも力を入れています。ブログ生活のプラスαとして是非ご活用ください。
お友達をお誘い頂いても構いませんので、是非ご一緒にご参加ください(^^)。
もしよろしければ下記項目をリンク登録フォームにお願い致します(^^)。

お名前:
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紹介文(50字程度):

ジャンル分けや紹介文の作成が面倒な場合は「リンクフリー」とだけ書いていただければこちらで振り分け等させて頂きます(^^)。
唐突なお願い失礼致しましたm( _ _ ;)m。
Commented by 聖月 at 2006-06-29 12:01 x
みつさん こんにちは(^.^)
あとで覗いて考えてみますね。
Commented by みつ at 2006-06-30 10:31 x
コメント欄に失礼致します。こうじょうコム管理人のみつです(^^)。

リンク登録が完了しましたので報告致します。
間違い・訂正等がありましたらご連絡ください。
ブログ紹介に力を入れて運営していきますので、今後のブログ生活のプラスαとして是非ご活用ください。
また、新しい分野・世界に興味を持つきっかけにして頂けると嬉しいです。
何かありましたら気軽に連絡してくださいね(^^)。
リンクして頂きどうもありがとうございます。
今後ともよろしくお願い致します(^^)。

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