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2006年 07月 29日
シリーズの一作目◎『陽気なギャングが地球を回す』を読了した日を調べてみると、書評の末尾に2003/06/05と記載されている。そう、評者は、書評の末尾に読了日を記載する、自分に対してきめ細やかな配慮をする人物なのである。いつ頃読んだんだっけ?なんて、自分の疑問に答えられるようにである。まあ、そんなことは「本のことども」ファンの方には直接関係ない話なんだけど、結局3年ぶりにシリーズ二作目を読むということは、前作に対する印象は残っていても、細かい設定までは覚えていないという自分が存在するわけで、帯のコピーを読まずに小説の中身に入っていく評者としては、そこらへんが、チョイと気懸かりなのである。前作での細かい設定を忘れたまま読んで、小説の中で置いてきぼりを食わないかしらと。 杞憂であった。伊坂っちは、そこらへんの配慮が上手である。サービス精神が行き届いていると言い換えてもよい。第一章が、4つの短編で構成されているのだが、その短編が4人のギャングそれぞれを主人公として書かれたもので、ああそうか、こいつはこんな特徴を持ったやつだったなあなんて、思いださせてくれるからである。人間嘘発見器の成瀬、体内時計付きドライブ上手の雪子、掏りの名人久遠、それに無意味演説上手の響野。そうだった、そうだった、そういう登場人物たちの設定だったと思い出し、安心して物語に身を委ねさせてくれる伊坂っちは親切な物語作家なのである。 そして、2章、3章、4章と、陽気なギャングの日常と襲撃が書かれるわけなのである。以上・・・シリーズ前作のときも粗筋を書かなかったが、今回も放棄。粗筋は書かない。面倒だ。面白いから読みなさいとだけ言っておこう。書いておこう。 でも、それだけじゃあ、「本のことども」ファンに申し訳ないので、伊坂っちのサービス程度には聖月っちもサービス精神を発揮しなきゃあなあ。 まあ、ひと言アドバイスくらい言っておこう。書いておこう。色んなネタが小噺が、本書の中には切れ切れにテンコ盛りに詰まっているので、舐めるように読むべし。気を抜かず、読み流すべからず!例えば後半219ページ前段から後段にかけて、便利屋の田中という人物について会話されている。この田中という人物、本当に便利なやつで、彼に頼むと、色んなことを解決してくれる。その田中に頼んでもいいが、田中に頼むと、またか、と思われるかもしれないと、成瀬が危惧する。響野が“誰に、思われるんだ!”と問う。そうすると、また成瀬が、何でも田中に任せれば済むんじゃないのなどと見透かされてしまう、と答える。すると響野が“だから、誰にだ!”と再び問うシーン。こういうお遊びを読み流しちゃ伊坂ファンはダメですよ。このお遊びの裏にあるものを、ニンマリと感じて楽しむべし、伊坂ファン! あと、第1章で、いくつかの格言が出てくるが、小説の中身と相まって、それぞれに味がある。評者が一番気に入ったのが「ガラスの家に住む者は、石を投げてはいけない」・・・意味がわからん?うんうん、評者も最初意味がわかりませんでした。まあ、簡単に言えば「虚勢を張るな」ということですな。自分の家はガラスなのに、相手に石を投げて攻撃したら、相手に石を投げ返されたとき、自分の弱い家は粉々なっちゃうよ、みたいな。例えば、職場などで、スキルも能力もないのに、いかにも知ったような振る舞いをして回りのみんなにいい顔しいで得意になっても、隙をつかれて見抜かれたなら、あんたボロボロされちゃうよ、みたいなね。そんなヤツ、身の回りに居たりするよね。そういうこと。 とにかく、今回は前作に比べても、読みどころは多い。特に、中盤までの小気味いいハードボイルドな会話が良いのだなあ。良いのだけれど、終盤には物語の筋の展開に押されてしまうところが、ちと残念なのだなあ。またしても、結局は評価記号は◎なのだなあ。でも、伊坂だから辛口の◎。(20060729) ※「卵を割らなければ、オムレツを作ることはできない」という格言・・・あと、かきまぜたり、火を使わないとオムレツは作れないわけで・・・「卵を割ったからといって、オムレツが作れるわけでもない」という言葉を、伊坂っちに返しておこう(^.^)(書評No657) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2006-07-29 22:45
| 書評
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