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「本のことども」by聖月

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2004年 10月 17日

◎◎「百器徒然袋-雨」 京極夏彦 講談社ノベルス 1208円 1999/11

◎◎「百器徒然袋-雨」 京極夏彦 講談社ノベルス 1208円 1999/11_b0037682_10503455.jpg 特段京極ファンでもない評者なのだが、最近図書館に新作を予約するというワザを深く考えもせず多用しているので、何気なく予約した京極最新作『百器徒然袋-風』が到着する前にと読み始めた本書『百器徒然袋-雨』であったのだが・・・百万回“へぇー”であったことをまず報告しておこう。多分、普通の京極新作待望ファンみたいな読者で、順序良く京極堂妖怪シリーズを読破されている方は、なかなか気付かないことではないだろうか。まあ、とにかく、そうでない評者は発見!したのである。その発見!とは・・・。

 本書『百器徒然袋-雨』の最後に、次作予定として評者も既読の『陰摩羅鬼の瑕』が載っている。結局、この本は2003/8に出版された。本書『百器徒然袋-雨』の約4年後である。ところが、本書を読んでいくと面白いことに気付くのである。発見!である。

 本書には3つの中編が収録されている。あの超破壊的破滅的滅茶苦茶特異キャラ榎木津礼二郎が活躍する中編である。中編といっても、上下2段組で大体150頁ほどの長さはあるので、長編3つといったほうがボリューム的には正しいのかもしれない。でも、従来の京極作品から考えるとやはり中編かな(笑)。

 冒頭の「鳴釜-薔薇十字探偵の憂鬱」で、いきなり榎木津パワー爆発にて、依頼人の“僕”の姪が女性特有の被害にあった事件は収束する。お礼をかねて榎木津の元を尋ねると、彼は不在。なんでも、小説家の先生と白樺湖のほうへ旅立ったという。そう、冒頭の話の終盤、4年後に出版されることになる『陰摩羅鬼の瑕』の舞台信州白樺湖に榎木津は向かっているのである。発見!

 2編目の「瓶長-薔薇十字探偵の鬱憤」では、瓶(カメ)を探し亀(カメ)も探す名探偵榎木津。冒頭“僕”が訪ねていくと、旅から戻った榎木津は、もう体も回復したという話。どこが悪かったのか“僕”が訊ねると、目が見えなくなっちゃったけどもう大丈夫との返事。つまり『陰摩羅鬼の瑕』で目が見えない奇妙な病気に罹った榎木津の話は、この時点で設定されており、事件自体ももう既に過去の事件になっているのである。要するに、1編目は『陰摩羅鬼の瑕』の前に発生し、2編目はその後の事件ということになるのである。発見!

 最後の「山颪-薔薇十字探偵の憤慨」では、名探偵榎木津礼二郎は動物ヤマアラシを探して外出中。冒頭、“僕”はその探偵助手と話をする。するとその助手の口から、この前の事件として、新婦連続殺人事件、由良伯爵家の事件の単語が!勿論これ『陰摩羅鬼の瑕』のお話のことである。発見!

 なんと!本書『百器徒然袋-雨』は、次作『陰摩羅鬼の瑕』の由良伯爵家の事件を間に挟み、その前に起こった事件、その後に起こった事件が書かれた小説なのである。そして、ここで既にその大まかな設定については確定しているのである。発見!発見!大発見!である。って、実は評者、あまり京極フリークではないので、これが発見!というほどのものなのか知らんのだけど(^^ゞ。

 さて、本書そのものの面白みである。京極堂が、講釈、薀蓄をダラダラ垂れ流さないところがまず◎。通常の京極堂シリーズだと600頁の厚みの場合、その薀蓄が嫌で150頁ほど読み流す評者なのだが、本書では数頁読み流しただけ。グッド。◎。それに加え題名のジャンル副題として「探偵小説」とあるように、探偵榎木津がハチャメチャ暴れまくるのが◎。なんだかんだ言っても、このシリーズ内で探偵という肩書きを持っているのは榎木津だけなのだから、本書内では当然のようにメインキャラ。できれば、京極堂や関口は出てこずに、榎木津だけで話を進めてもよかったのに、というのは評者の贅沢過ぎる望みかな。木場の旦那のキャラは、本作でも中々よかったけど。

 なんだかんだ言っても、このシリーズを拾い読みしてしまう評者の目的は、ただただ名探偵榎木津礼二郎の活躍にのみある。いいなあ、榎木津。ああ、自分も榎木津になりたい。伯爵の子息でなくってもいいから、傍若無人にパワー全開したいなあ。(20041016)

※最新作『百器徒然袋-風』の図書館予約の待ち順の動きが異常である。評者の利用する図書館には3冊所蔵してあり、貸し出し期間は2週間なのだが動きが鈍い。単純に言えば、待ち順9であればまあ1ヵ月半後には順番回ってくるはずなのだが、全然カウントが減らないのである。皆さん、京極作品の読了に時間がかかっているのだと思うのだが・・・期限は守りなさい!期限は!だって、待ち順1になって20日経ったのに、まだ順番が回って来ないなんて変だぞ!今借りている、3人が3人とも掟破りな読書人とは!トホホ。(書評No418)

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by kotodomo | 2004-10-17 10:51 | 書評 | Trackback(5) | Comments(8)
Tracked from 日々のちょろいも at 2004-10-18 09:02
タイトル : 『百器徒然袋−雨』読了。
 京極夏彦『百器徒然袋―雨』読了。榎木津礼二郎探偵大活躍〜! 感想はこちら。非常に苦労した『雲』と違い、こちらはとにかくサクサク読めて単純に楽しかった。しかし、キャラが変わってないか?益田よ…。  週末から耳の付け根(首とのちょうど境目あたり)にポツン... more
Tracked from spoon::blog at 2004-10-22 09:57
タイトル : 百器徒然袋―雨 ブックレビュー
 京極堂シリーズのオールスターキャストが登場する痛快探偵(?)小説。登場人物は京...... more
Tracked from AV( Akira's .. at 2004-11-10 10:47
タイトル : 百器徒然袋-風
京極 夏彦 著 探偵 榎木津礼二郎が活躍(破壊?)する京極堂シリーズ外伝「百器徒然袋」第二弾 相変わらず破天荒な榎さんが楽しすぎ! そしてラストには,心の底からウォーと唸るものがあります。 ちょっと泣きそうになりました。 ますます魅力的になった榎木津さん! 京極堂と同じくらい,このシリーズも続いてほしい! 百器徒然袋-風 講談社ノベルス 百器徒然袋―雨 講談社ノベルス ... more
Tracked from のぽねこミステリ館 at 2005-09-17 17:41
タイトル : 京極夏彦『百器徒然袋―雨』
京極夏彦『百器徒然袋―雨』(『文庫版 百器徒然袋―雨』)〜講談社ノベルス、講談社文庫〜「鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱」「僕」の姪が、奉公先の御曹司とその悪友どもによって輪姦された。半年後、姪は自殺をはかるが一命をとりとめ、出産した。「僕」が、その憤りを、婦...... more
Tracked from まあぼの交差点 at 2006-02-10 11:11
タイトル : 「百器徒然袋−雨」(京極夏彦)−その1−
順序は逆になるが,昨年の「百器徒然袋−風」(日記は→こちらから)に続いて,京極夏彦の「百器徒然袋−雨」を読んだ。榎木津のありさま(神様であるということ(笑))や,この本が探偵小説であるということは,「風」で書いたので改めて書かない。時についても,「風」で...... more
Commented by ちょろいも at 2004-10-18 09:33 x
わわっ、なぜか2つもTB送ってしまいました~~~。
一個削除してくださいませ、ペコ。
Commented by 聖月 at 2004-10-18 18:32 x
ちょろいもさん こんにちは
世紀の新発見と思っていたのに、ちょろいもさんの感想見たら、
先に大陸発見されていたのですね。
コロンブスになれなかった(^^ゞ
Commented by 四季 at 2004-10-20 06:42 x
「風」も面白いですよー。これも実は発見!があるんです。自分の感想に書いたかどうかは忘れましたが。
そちらの図書館の取り置き期間は1週間ですか? それも勘定に入れなくちゃダメでしてよ。聖月先生。
Commented by 聖月 at 2004-10-20 18:17 x
とりおき期間聞いたことあるんですが、「できれば一週間以内には取りにきていただければ・・・」の返事。
多分、無限だと思いますよ。いい加減にしなさい!という時期に電話確認して、他所に回すくらいの。

でも、でも、でもですね。さっきやっとメールが来たのです。
やっと到着です。「風」
予約したの7/14でした。
Commented by 四季 at 2004-10-24 18:41 x
「できれば」というのは曖昧ですね。
うちのとこは、1週間以内に取りに来なかったら次に流れちゃいますよ。
次に待ってる人がいなければ、2〜3日ぐらいは猶予してくれると思うんですけどね。
機械的に流れるようにしておいた方が、図書館も楽でしょうにねえ。
でも回ってきたんですね。感想、楽しみにしてますね!
Commented by 聖月 at 2004-10-24 22:31 x
四季さん こんばんは
かくいう私も、とりおき6日目くらいでした。
今日行ってきたのです。

でもですね。
一緒にとってきた『菊と刀』これが難しいけど面白い。
とりあえずは、そちらを毎日少しずつ読みながら、
今のメインは『プレイ』山口雅也にしようかと。
その後、『臨場』横山秀夫に入って、来週の土日かな?京極。

あと再度『ニューヨーク』借りてきました(^.^)
Commented by のぽねこ at 2005-09-17 18:12 x
ごぶさたしております。
榎木津さんいいですよね。私も、あのくらいのパワフルさがほしいものです。思いやりがなさそうで、思いやりのある雰囲気もありますしね。素敵です。
京極さんの作品は、シリーズ内でリンクがあるのはもちろん、別のシリーズにも内容がリンクしているようですよ。
『邪魅の雫』が楽しみです。
Commented by 聖月 at 2005-09-17 18:54 x
のぽねこさん おひさ(^.^)
実は私の榎木津読みには、どうもうまくいかないところがありまして、眉目秀麗ということなのに、どうも三枚目の顔しか浮かばないのです。
三枚目だけど魅力ありそうなそんなタイプ。
別のシリーズ・・・今のとこ『ルー・ガルー』と『巷説百物語』既読か。
あまり京極作品のいい読者じゃないような気がしますが、ことども作ってもいいくらいには読んでいることに・・・今気がつきました(^^ゞ


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