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「本のことども」by聖月

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2006年 11月 09日

◎◎「もしも私があなただったら」 白石一文 光文社 1470円 2006/4


 世の中の本のジャンルには“願望小説”というものがあっていいのじゃないかと思う。ただし、ひとそれぞれに願望は違うので、その本自体が“願望小説”というジャンルになるのではなく、その人にとっての願望小説というジャンルになるという主観的な区分けにはなると思うが。男女が入れ替わって騒動が起こるような、そんな願望とか(要するに、自分の体が女の体になったらウホウホみたいな願望)、透明人間願望とか(要するに、見えない体で女風呂を覗くみたいなウホウホ願望)、もしも空を飛べたらみたいな願望とか(要するに、女子の露天風呂が丸見え・・・これはそうでもないか)、とにかく色んな願望がそれぞれあるわけで、それが小説の中に具象化して読み人の気に入れば、それはまさしくその読者にとっての願望小説なのである。

 評者の場合は・・・“主人公の意図しないところから、恋愛対象となる女性とともに過ごすことになる、もしくは冒険をする、したい、そんなのいいなあ願望”・・・なんて、文字にしたら長くなってしまう、そんなところに願望小説のジャンルが位置する。

 例えば、古いドラマ、映画の「翔んだカップル」ね。同級生の男女が共同生活・・・いいなあ、憧れたなあ。小説では『ららら科學の子』矢作俊彦/中年男が女子高生と小さな冒険。『テロリストのパラソル』藤原イオリン/昔の彼女の娘と探偵冒険ハードボイルド。他『彼女はたぶん魔法を使う』樋口有介、『そのときは彼によろしく』市川拓司、村上春樹の数々の作品など。そうそう、映画では「ローマの休日」を忘れちゃいかん。

 本書『もしも私があなただったら』は、“主人公の意図しないところから、恋愛対象となる女性とともに過ごすことになる、もしくは冒険をする、したい、そんなのいいなあ願望”の中でも、押しかけ女房されたい願望を満たしてくれる小説である。世話なんか焼いたり焼かれたりしてね。

 ところが、実際の世界での評者は、嫁さんに世話焼かれるのも好きじゃないので、それを理解している嫁さんは放っといてくれるし、今現在の単身赴任状態で、誰かに大いに積極的に自分の人生に関わられるのは望んでいない。しかし、しかし、しかし、これが小説の中の疑似体験となると、やっぱり好きなのである。ジャンル的にツボ。

 おまけに、今回のこの作品は白石一文作品の中で、『草にすわる』以降初めての再生の物語であるので、そういうジャンルとしても好きなのである。いっつもしつこいような男女の性の描写も、そこまでないし・・・。

 生まれ変わっても嫁さんと結婚すると断言できる評者なので、先ほども書いたように、単身赴任先に伊藤美咲とかが押しかけてきても困るだけなのだが・・・まあ、困ることも冒険のひとつと思えば、少し困ってみたいなあという気がしないわけでもないわけで、要するに、評者の深層心理には、やっぱ願望があるんだろうなあ。そういう心をくすぐる設定に、白石一文とくりゃあ、これは◎◎以外の評価は考えられないのである。(20061107)

※GWに鹿児島で購入。今回やっと消化。(書評No677)

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by kotodomo | 2006-11-09 09:51 | 書評 | Trackback(1) | Comments(0)
Tracked from "やぎっちょ"のベストブ.. at 2008-04-20 16:37
タイトル : もしも、私があなただったら 白石一文
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