2006年 11月 13日
いやあ、国内物ばっかり読んで、面白くないとか読書に気が乗らないとか、そんな感じの最近の評者。まあ、年齢的に読書体力や意欲が減衰し、おまけに余生なんて考え方まで浮上して、まあ余生は楽しくなんて結局飲酒で記憶をなくし、翌朝を迎えるなんて生活を選択しがちなんて理由もあるんだけどね。そういう読書不調時には、そのために積んでおいたマイロン・ボライターシリーズの出番である。本書はシリーズ二作目の作品である。とにかくこのシリーズは安心印の娯楽傑作シリーズなのである(と一作目を読んだときに確信した)。 主人公マイロンの職業はスポーツエージェント。有望選手とエージェント契約を結び、選手にはスポーツに専念させ、選手に代わって色んな交渉ごと、売り込み、そんなことをする代理人っていえばわかりやすいかな。前作『沈黙のメッセージ』ではアメフトの世界を題材に、本書『偽りの目撃者』ではテニス界を題材にとっている。原題は『Dropshot』。 内容を紹介するよりは、未読の方のために、本シリーズの魅力を語ったほうがよいだろう。コミカルなハードボイルドっていうとピンとこないかもしれないが、とにかく“口答え”や“強がり”や“大げさ”や“小粋”や“無意味”が会話の中に多く登場してくるのが特徴である。日本人的にはわかりにくいギャグもあったりするのだが、結局は流れの中で読ませてくれるので、多少の澱みは気にならない。会話でないところでも、筆の遊びが多く、とにかく肩の凝らないノリノリの物語なのである。 美人の恋人がいるなんていうのはありふれた設定だが、影武者相棒的なウィンの人物設定がファンタスティックである。どういう人物かは読んでみてくれなのだが、どういう役割かというと水戸黄門の風車の弥七、どういうマインドの持ち主かというとゴルゴ13だということだけは伝えておこう。裏を返せば、著者が物語の進行に壁やハードルを感じたときにこの人物を登場させれば、物語は順調に進むわけで、そういう便利な人物なのだが、とにかくそのゴシックな胸中に読者も痺れてしまうので、ウィンが登場する場面では評者も“よう!待ってました!”と叫びまわってパンツに漏らすくらいである。 あと、スポーツに興味ない、だから読んでも面白くないかも、なんて下手に思うなかれ。本シリーズは万人向け。アイスホッケーなんか知らないし興味ない女性も、キムタクの役回りがそれだからと言ってドラマを観ないわけじゃないのと一緒で、とにかく面白い小説は、舞台設定に頼らず面白いのである。脚本が良くて、役者が良ければ面白いのである。 読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!の本シリーズ。知らなかった方は、今すぐ古書店に走って、本シリーズを100円でゲットすべし!(20061112) ※シリーズ三作目は、少しまた読書に行き詰ったときに読もうっと(^.^)(書評No678) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2006-11-13 09:43
| 書評
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